ニガ汁への道

大人になれば自然とビールを飲めるようになるものだと思っていた。

テレビのコマーシャルなんかで美味しそうに飲む人を見ては、脳内で勝手に美味しい飲料というイメージがまんまと出来ていたし。
初めてビールを口にしたのがいつだったのかは覚えていないが、ひどくだまされた感があったのは覚えている。だって苦いし全然美味しくなかったのだ。
黄金色の発泡ニガ汁としか思えなかった。

前段階として珈琲は飲めるようになっていた。
とはいえ、34歳になってダイエットを始めるまでブラックでは飲めなかったのだが。
珈琲は香りが良いし元々親しみがあった。
我が家では父が珈琲好きで、自家焙煎していたしミルも当たり前のように家にあったので、小さな頃から豆を挽くお手伝いなどをして身近に存在していた。

珈琲の場合、市販のコーヒー牛乳から始まり、父が淹れたお砂糖入りのカフェオレ→無糖のカフェオレ→ブラック珈琲、と段階を踏んで飲めるようになっていったのがわかる。

ビールの場合どんな段階を踏めば飲めるようになるのかがわからない。
私は子どもの時からピーマンもゴーヤも食べられる。
思い当たる節があるのは、サンマの内臓とサザエの肝が食べられないことか。
いかにも酒飲みが好みそうなものだ。あれらを克服しないとビールの旨さにはたどり着けないのだろうか。

そういえば、椿鬼奴さんが昔、ビールが苦手だったと言っていた。
どうやって克服したのかというと、夏の炎天下を歩いていた時に喉が渇いてふとビールを飲んでみたら「のどごし」の意味がわかった、というような話だった。
ほぼ精神論的なことじゃないか。
まったく参考にならない。

今年の夏も半端なく暑かったが私はビールを飲めるようにはなっていない。
そもそもアルコールが無くても生きていける人種だから、いつまで経っても「のどごし」がわからないのかも知れない。
それはあり得る。
私の嗜好品はカフェインと甘い物で埋まってしまっているから、もうその余地がないのかも。
でもその一方で、ビールを美味しそうに飲む人を見ては、大人だなぁと、ちょっと憧れる気持ちが無くなるわけではない。

ニガ汁への道はまだまだ遠そうだ。


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