見出し画像

詩「青い森」

青い森の奥に眠る
一匹の小さな竜の子ども
丸まって寝息を立てている
起こしてはいけない
もし目が覚めてしまったら
森の葉がすべて赤くなり
地面から煙があがる
あちこちでパチパチ弾ける音がして
それから先を知る人はみんな
死んでしまったのでわからない

逃げた人達が戻った時には
草木も家も獣も人も燃え尽きていて
だだっ広い空間にただ灰が積もるばかり
ぽつぽつと降る雨に濡れていた

竜の子は眠る
眠っている間は
草はあちこち這いまわり
木は安心して背を伸ばす
鳥はできるだけ高いところで鳴き
鹿も猪も落ち葉を避けて静かに歩く

竜の子はとても長生きで
いつまでたっても子どものまま
人間が知ることのできる年月は
まだまだとても短い
あたたかな海の珊瑚の祖先が
数億年も前に見た
大人の竜を歌にして
今も月夜に歌うらしい




haruka nakamuraさんの「青い森」を聴きながら書いたので、タイトルはそのままお借りしました。いつも現代詩フォーラムに詩を投稿しているのだけれど、今回は試しにこちらにも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?