旅に出たい - 萩原朔太郎の『旅上』
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詩人・萩原朔太郎の作品に『旅上』という詩があります.
ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広をきて きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ うら若草のもえいづる心まかせに。
私はこの詩がとても好きで,暗記しているほどです.自身のWEBサイトのトップページにも載せています.
こうなんというか,とても色彩的に眩いんですね.
車窓から早朝の光が降り注ぐ様が実に鮮やか.木々の隙間から光が溢れて,それがキラキラしている.窓の外の空気感,さらに鬱蒼とした草木の匂いまでが伝わってきます.
そしてたった5行の詩の中に,楽曲のような軽やかなリズムが響いている.旅に出て,朝早くの列車(それも煙を吐く蒸気機関車でしょ)に乗り,ウキウキしている気持ちが非常によく分かる.
こんな情景って,私自身これまで何度も経験してます.だからその時の気分とこの詩が心地良くリンクしているんです.いやもうたいへん上手い詩ですねえ.映像的にはスチルよりも動画というか,そんな感じもします.
この萩原朔太郎という詩人も,旅上という詩も,知り得たのは学生時代.ちょうどその頃から一人旅に出るのが好きになって,カメラを持ち周遊券を片手に日本全国あちこち巡りました.
本格的に写真の道にハマったのはもう少し後になりますが,すべてはこの「旅上」から始まり,それをトレースしているといっても過言ではないでしょう.
ところで萩原朔太郎は,結局のところフランスへは行けたのでしょうかね?