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桃源郷②〜10月のひまわり
さて、その大学時代からの相棒、荻子を拾って我々はひとまず久住方面へ向かった。
運転は我が夫、助手席に荻子、その後ろにチャイルドシートに乗った我が子、その横に私。
ーーどんな関係なん、君たち?
夫と荻子は性質がよく似ている。両者、あっけらかんとしていてよくしゃべる。
いつも通り、2人はとりとめのない会話を始めた。
入社以来、営業畑を歩んできた荻子は、この10年で人と話す技術が格段に上達したように思う。
学生時代の荻子は完全に喋り手で、人の話にはあまり興味のない感じであった。
それが今や、相手の興味のある話題を一瞬で探り、この10年で身につけたであろう幅広い知識を交えながら、上手く相手の話を引き出し、耳を傾けるようになった。
とても感慨深いものがある。
ーー何目線?いや、何様目線?
荻子はたまに後部座席の我が子の顔を覗き込んだ。その度にキャッキャと笑う我が子。
我が子は荻子のことを親族か何かと思っているに違いない。なんせ、生まれて5日後くらいから対面している。
子供好きな荻子は、保育士になれば良かった、とたまにつぶやくほど子供好きで、我が子のことをとても可愛がってくれた。
まぁなんと、子供と接するのが上手いこと。
荻子と遊んでいる時の我が子は、自分と遊んでいる時より格段に楽しそうなのである。
3人でいる時は、何故か荻子の方が我が子を抱っこしている時間が長い。我が子も、何も疑問に思う様子もなく、荻子に抱っこされている。
この関係性を別の友人に話すと、「いや〜なかなかあり得ないよな。」と言う。
その通りである。
女は自身の環境に合わせて友達を作ることが多い。環境が変わった途端、パタンと会わなくなる「元親友、今他人」みたいなパターンも多いのではなかろうか。
女の友情というのはとても複雑で、深そうに見えて浅いものである。
だから、その友人には、独身の荻子と既婚子持ちの私という、環境が違いすぎる2人がこんなに家族同然の付き合いをしていることが、とんでもなくおかしく映るのだろう。
「10月」と「ひまわり」くらいチグハグかもしれない。
荻子と私は取り巻く環境、悩み等の性質は全く違う。お互いの悩み等、分かりあえないことの方が多いかもしれない。
ただ、一緒にいて楽しい。
そんな単純なことで、我々は15年ずっと寄りそっている。
「秋に咲くひまわり」もあるということだ。
ここで重要なのは、私の夫の存在である。この、私と荻子の関係性継続は、夫の理解なしには不可能であった。
ところがこの夫が…、実は荻子と性格がよく似ている。3人兄弟の長男長女という点も同じで、食の好みも似通っている。
サッカーやマンガ等、私が入り込めない話題で2人が盛り上がっていることもよくある。
荻子と特に会う予定のない土曜は、
「今日、荻子ちゃんは?」
と言ってくる始末である。
世間的には、ここで荻子と夫が不倫関係等になれば、盛り上がるところであろう。
ただ、それはあり得ない。何故なら荻子は無類の
ーーイケメン好き。
彼女が独身を貫いている一因である。
そんなこんなで、この「あり得ない組み合わせ」を乗せた車は、国道442号に入った。
この道は、荻子と何度も通った。この道を進めば、くじゅう花公園に行ける。久住大好き。
本当に、何度通っただろう。
何度通っても季節によって違った様子を見せたり、都度都度驚きや発見があるものである。
442号沿いに唐突にひまわり畑が現れた。
お花大好きな我々。
「降ろしてーー‼️」
娘もちょうど寝ており、私と萩子は車から降りて写真撮影に勤しんだ。
10月にひまわりに遭遇するとはね。
夢のようだな、とはしゃいでいると、一台の車が止まった。
中から出てきたのは、齢65くらいであろうか。
ガチなカメラを首元にぶら下げたおじさんであった。
「ちょっとモデルになってくれん?私、怪しい者じゃないけん。」
いやいや、絶対怪しい奴やん。
超強引なおじさんで、我々は半ば強制的にひまわり畑の中で写真を撮られてしまった。
その上、おじさんは携帯で写真を撮る際のコツを我々に指導し始めた。
いや、確かにな、
ーー上手いわ。
おじさんの、確かに素人よりは上手い技術で、私と荻子は久々にお花畑で2人で写った写真を撮ることが出来た。
いや、それより…。
この怪しいおじさんに撮られてしまった自身の写真の使われ方パターンを何通りか想像して、私は1人ざわついていた。
自分の顔と、誰かの全裸を合成されている画像… もしくはさらに卑猥な……
ーーギャァァァァア( ゚д゚)
でも、今更消せとか言えない。言っても消さないだろう。
そこで私が考えた苦肉の策。
「おいちゃんも撮っちゃるわ。」
私は、ひまわり畑から這い出てくるおじさんを携帯の画像におさめた。
「おいちゃんは撮らんでいいよ〜。」
おじさんは顔を手で隠すような仕草をしながらひまわり畑から這い上がってきた。その様が変質者のように見える。
どんどん変質者と思えてならなくなる。
おじさんの写真を撮ったことがなんらかの抑止力になったらいいと願う。
私、お前の顔
ーー知 っ て る ぞ 。
そんなこんなでおじさんも帰っていった。
去り際に再び同じことを言った。
「私、怪しい者じゃないけん。」
ーー(´-ω-`)
想定外の「10月のひまわり畑」を楽しんだ我々は、目的地の「ヒゴタイ公園」へ向かう。