別府ラクテンチでのシュール〜五感を持ってお出で
令和3年2月。
今日は久々に朝から雨が降っている。
朝起きた時、太陽の光が差し込んでいないことに激萎えである。
気圧の影響か、全方位から身体を空気で押されるような感覚がある。若干の息苦しさ。
先週から今週前半にかけて、晴天が続いていたので、この感覚は久しぶりである。
先週末には娘+親友荻子と別府ラクテンチに出向くことが出来た。
この別府ラクテンチは、閉園の危機を乗り越えつつ、昭和から続く老舗の遊園地である。
大分県民は、子供の頃一度は行ったことがあるのではないだろうか。
私の子供の頃のアルバムもラクテンチで溢れている。楽しい思い出しかない場所である。
さて、その日は夫は仕事で、荻子と娘と3人での集合となったわけだが、私の急な思い付きでお弁当を作って行くことにした。
「作る」と表現したが、「詰める」が正しい。
お弁当は毎日夫に持たせているので、ネタは揃っている。私のお気に入りは、「自然解凍OK」な冷食である。レンジでチンさえ必要ないのである。
わずか10分で完成した冷食弁当である。
内容はどうであれ、彩りと隙間を作らないことにだけ注意している。
我々はちょうどお昼時に到着した。
とりあえず腹ごしらえを…ということになり、お弁当を食べることにした。
思いのほか、荻子は冷食弁当をとても喜んでくれた。そして、美味しい美味しい!とあっという間に完食した。
荻子は食べるのが速い。我が夫よりも速いので、おそらく一般男性並みかそれより速いかもしれない。
何がすごいって、喋りながら食べているのに速いところである。「喋り」と「食事」を両立しているのである。
夫は、喋りすぎて食事のスピードが遅い。私は、ただ単に食べるスピードが遅い。
3人で食べていると、必ず荻子が一番最初に食べ終わる。
ただ……
あの速さ、絶対、噛んでないと思う。胃への負担は計り知れない。
そして我が子は、初めてのお弁当であったが、思いのほか完食しなかった。ご飯を半分ほど食べ、好物のブロッコリーと枝豆を食べて満足したのか、いつもより食べなかったように思う。
それよりも娘がガン見していたのはこの乗り物。
水の中にボチャーンといくやつである。
ーー好きそう。
荻子が2度も一緒に乗ってくれた。我が子、坂を下ってボチャーンした瞬間大喜び。
前に乗っていた、我が子と同じ2歳の子はギャン泣きしていた。この子、「危機管理」とか「恐怖感」にとてつもなく疎い感じがする。
ジェットコースターを喜ぶタイプ、恐怖を感じるタイプ。
人間はどちらかに分かれるんじゃなかろうか。
私は完全に後者であるが、荻子も夫もそしておそく我が子も前者である。
荻子と我が子は気が合いそうなので、もう少し大きくなったらまた遊園地で一緒に遊んでほしい。
ただ、荻子は、彼女の雰囲気、言動等から、とてもタフな人間だと誤解されやすいのだが、実はそうでもないのである。元々、とても身体が強いというわけでなく、むしろやや弱めである。
しかし、彼女はいつも全力。100ある力のうち100を出し切るタイプである。
我が子と遊ぶ時もいつも全力。35歳とは思えない動きをする。我が子も楽しそうなこと。
100のうちここで10、ここで30、みたいな配分をしないタイプで、たまに急に倒れる。
東京事変の「閃光少女」という歌があるが、これは荻子のテーマソングのように思う。
今日現在(いま)を最高値で通過して行こうよ
明日まで電池を残す考えなんてないの
昨日の誤解で歪んだ焦点(ピント)は
新しく合わせて
切り取ってよ、一瞬の光を
写真機は要らないわ
五感を持ってお出で
私は今しか知らない
貴方の今に閃きたい
カッコいい。本当は、一日を燃え尽きるように全力で生きてみたい。
どうでもいいけど、「五感を持ってお出で」が「股間を持ってお出で」に聞こえて驚愕し、慌てて歌詞を調べたのは、若かりし日の思い出である。
こんな卑猥な聞き違いをする私の出力エネルギーは、常時20くらいである。不動光少女。明日に残す電池のことばかり考えている。
体力に自信がないため、50以上出すことに恐怖を感じてしまう。自信のなさから、マッサージ等のメンテナンスや通院等には余念がない。
その結果、意外に倒れることは少ない。
どちらも良し悪しで、それぞれの生き方である。
とりあえず、「股間」じゃなくて良かった。
さて、我々は大吊り橋を渡ることにした。
この橋は、私が子供の頃はなかった。結構最近出来たんじゃなかろうか。
私は、高いところが極端にダメというわけではない。むしろ好きな方かもしれない。
しかし、娘の手を引いて渡る吊り橋は恐怖である。このちょっとした隙間から落ちてしまったら…とか、いつもの地面に寝転がって駄々をこねるやつをここでやられたら…とか考えると、早く渡り終えたい気持ちが先走る。
娘よ、どうかまっすぐ歩いておくれ。
願いが通じたのか、娘は割とスタスタ歩いてくれた。
いやしかし、絶景。
正月に買ってしまった一眼レフで撮った景色。別府の街並みと青々とした別府湾が見ていて落ち着く。
大分県以外で住んだことがない私であるが、県外に行く機会は多かったように思う。
博多からソニックに乗って大分に帰る時、別大国道の向こうに見える別府湾を見ると、帰ってきた!という感覚になる。そして、言葉で言い表し難いほどの「落ち着き」を感じる。
たった数時間、日帰りの旅とかでもこの感覚は必ずある。
無事に大吊り橋を渡り終えた我々は、そろそろ帰ろうか、ということになった。
駐車場に向かっていると、なんともシュールな乗り物に遭遇する。娘、飛びつく。
…ウサギ?
後ろのパンダには目もくれなかった。
おそらくウサギであろうその乗り物。200円入れたら愉快な音楽と共に前進する。
かなりシュールな光景である。
何分か前進し、ウサギらしきは停止した。
さぁ、帰ろう。
そう思ったが、娘は満足してしていなかったらしい。今度は、少しサイズが大きいウサギらしきものに跨った。こっちは2人乗りである。
「じゃあこれ最後な。」と言い、200円を入れようとした。すると、こっちはなんと400円であった。これは私も乗らないと元が取れない。
いや、乗ったところで元が取れるとれるだろうか。
しかし、こんな乗り物そうそう見かけるものではない。良い経験をさせてもらった。
なんやかんやで、私も荻子も童心に返って楽しむことが出来た。
娘は再び跨がろうとしたが、どうにか連れ戻した。
今日は五感をたくさん刺激されたに違いない。
きっと、彼女のアルバムも、この別府ラクテンチで溢れるであろう。