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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険ⅩⅩⅩⅩⅢ

「わたくしが自室に戻ろうと席を立つと、シダー氏が呼び止め、部屋の隅に置かれた布の包みを渡してくれました。結び目を解いて中を見ますと、わたくしの軍衣がきれいに洗われ、畳まれて入っておりました」

「小剣も返してくれましたが、鞘を払ってみますとところどころに錆が浮かび、刀身の色もくすんでおりました。しかし剣の手入れをするということがない世界でしょうから、仕方ありません。わたくしは剣を鞘に納めました」

「『王への謁見には、この服を着ていくように、とのことだ。村の婦人会の方々に洗濯してもらったが、問題はないかな』とシダー氏が尋ねたので、わたくしは服を広げてみて、問題がないことを伝えました。軍衣に袖を通してみますと、少し窮屈になっておりました。浴室の壁に掛けられた鏡を見ても、顔が膨らんでいるように見えました」

「太ってしまったようだ、と話すと村長は笑って、『一年間あまり動かなかったのだから、仕方ない。これから忙しくなるだろうから、体力はあった方がいい』と言うのでありました」(続)

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