見出し画像

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険ⅩⅩⅩⅩⅦ

「『卿らの国にはデクがいないと聞いているが、不便ではないのかね。私にはデクのない生活は想像もつかないのだが』と王が尋ねましたので、わたくしが『道具を工夫し、身の回りのことは人の手で済ませます。デクがあるこの国のように快適に、とはいかないこともありますが。人の手に余ることをする時には、飼い慣らした獣をデクのように使います』と説明すると、人びとはざわざわと話しあっておりました」

「『この国には獣は少なく、子どもの背丈を越えるようなものは棲んでおらぬのだが、卿らの国では違うようだ。獣をどのように使うというのかね』と王が皆の意見を代表するように言うと、場が静まりました。わたくしは牛や馬、羊といった家畜、犬や猫といった人に役立つペットの話をしました。そして家畜は肉や乳として食糧になることを話すと、人びとは大きくざわめきました」

「王が『静粛に』と呼びかけると、人びとは再びおしゃべりをやめました。こうして私たちが使う生活の道具や武器、帝国各地の産品や風土を説明していきますと、人びとはその都度「おお」とか「へえ」などと驚きの声をあげたり、どよめいたりしておりましたので、そのたびに根の王が皆を黙らせて、わたくしに話の続きを促したのでありました。一通り、思いつく限りの帝国内の話を終えるころには、すっかり昼食の予定時間を過ぎてしまったのでした」(続)

いいなと思ったら応援しよう!