#116 人間は生肉を欲している
こんばんわ。
私は常々疑問に思っている。人は肉を本当に美味しく食べられているのだろうかと。
その疑問は、肉の紹介ページやメニュー表において、ほぼ全てが赤身の状態、つまり生の状態で掲載されていることに起因する。
生が一番美味しく見えるからそうしているのだろうが、「一番美味しく見える状態=一番美味しい状態」という理論を持っている私からすると、生肉で宣伝する焼き肉屋に違和感を覚える。
ステーキ等で焼いた断面を見せるのもあるが、結局レアやミディアムレアなどの赤身断面を見せている。それはもはや、焼いて薄灰色になった肉を見せても勝負できないと言っているようなものである。
ライオンやヒョウが草食獣を襲って食べている映像を見たことがあるだろうか。
誰もが一度は「美味しそう!」と思った事があるのではないか?少なくとも私には最高の食事シーンに見える。
ほかにも、スローロリスがバッタを食べるシーンやトカゲがコオロギを食べるシーンを見ても、いかにも美味しそうに食べている。
我々の目には昆虫でさえも美味しそうに映るのである。
そこには生肉を食べる事こそ至高であるという感情が根底にはある。
我々人間は寄生虫やらなんやらの関係で焼肉を主流とした。馬刺しや肉寿司、肉刺しなるモノもあるが基本的には焼いて食べるのが基本であろう。
しかし、火を使う唯一の動物である人間にとっても本能的には生肉が一番美味しそうに感じるのである。現にスーパーのチラシの肉は全て生肉である。
社会に蔓延するこの矛盾こそが、人間が生肉へ本能的な憧れを感じている証拠である。
我々は、一番旨い食べ方を捨てざるを得なかった。焼いて安全に食べる方法をとり、ベストな食べ方を諦めたと言える。
動物という広い括りで見れば焼き肉は異端中の異端であり、本来狩ったその場で生肉を食らう事こそが至高である事実は事実として常に鎮座している。
逆に人間界の中で言えば、何でも生で食べる日本人こそ食材の旨味を一番知っていると言える。
日本が美食国家である一番大きい理由はそこにあるのだ。日本人料理人に努力家が多いとか、料理を芸術だと思っているとか、何でも極めようとするとか、そういう面ももちろんある。
もちろんあるが、一番大きいのは生の食べ方を2000年間蓄積してきたからである。
料理として見た時の他国との一番大きな差はそこにある。焼いたり煮たりと火を通す調理には他国と決定的な差はないだろう。
だが、生の時点での準備の仕方、食材の扱い方にこそ日本の粋が集まっていると考える。”生”に日本が詰まっているのだ。
とにかく地力が違う。
生で美味しく、あまり調理せずとも美味しく出来る、この辺りの技術と知識がゆえに、日本は美食国家なのである。
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