【読書記録】あなたはあなたが使っている言葉でできている
この本はあなたを励ますために書いたものだ。あなたが内に秘めた本当の能力に目覚め、自分を責めるのをやめて、輝かしい人生に歩み出すのを手伝うために、私はこの本を書いた。この本はあなたが答えを手に入れることを願うが、答えは外側ではなく、あなたの中にある。答えを見つける必要なんてない。あなたが答えなのだから。
【本書の要約】
人間の感情の大部分は思考から生まれる。
思考をコントロールできれば感情もコントロールできる。その思考は自分との対話で生まれる。なので、そこで前向きな言葉をかけることが大切。それによって思考もポジティブに、感情もポジティブに。
それでも、
完璧にポジティブな思考・感情なんてありえない。
それを待っていたら何も行動できず、何も始まらない。
だから、
思考と行動は切り離して考える。
たとえマイナスな感情をもっていても、とにかく行動すること。
人生はその人がどう考えているかではなく、どう行動するかで決まる。
うじうじしてる暇があったら行動してみることが何より大切。
行動しているうちに必ず困難に直面することもある。完璧な人生なんてありえないのだから、当たり前だ。予想が100%当たる人生なんて存在しない。何かを得る為には、必ず困難が待っている。
大切なのは、起こったことを全て受け入れること。
起きたことには全て意味がある。そして、そこからどう立ち上がるかがもっと大切。起こったとこが受け入れられない、受け入れるのが辛いというのは、物事に期待をしているから。その期待と現実のキャップが大きいほど落胆してしまうもの。
しかし、期待することにあまりメリットはない。期待通りにいくことなんてほとんどない。
それより、勝手に抱いていた期待を捨てて、起こった現実を受け入れて行った方が、絶対に豊かな人生になる。
【感想】
感情の大部分は思考であり、思考は自分との対話(言葉)があってこそ可能なものとなる。この考え方は、サピア=ウォーフの仮説として有名な言語相対性の仮説に影響を受けていると思った。この仮説はごく簡単にいえば、思考は言語によって制限される、という言語学の理論。エドワード・サピアさんという言語学者でもあり心理学者でもあり文化人類学者でもある方と、ベンジャミン・リー・ウオーフさんという彼のお弟子さんの理論だから、2人の名前をとってサピア=ウォーフの仮説。2人が活躍したのは、西洋人が未開の部族より文化や言語体系もろもろ全てにおいて優っていると考えられていた時代。そんな時代にあって、人類に優越はなく使う言語によって異なる世界観を形作っているだけという理論を打ち出したことで画期的だった。
今回の本は文化人類学の本ではないので、この仮説を思い起こすのはちょっと筋違いかもしれないが、人間は言語によって思考するのか、思考できるから言語が生まれるのか、その点で本書はこの仮説と同じく言語を上位に置いて言語によって思考がうまれるという立場をとっているところで、似ている部分を感じた。
この理論によると、人間は使用する言語によって思考が枠付されるということになる。言い換えると、ある言語以上の思考があるとしても言語で表現できる範囲でしか表現できないという。これを大胆に(かなり乱暴に)この本に寄せて解釈してみると、自分がどれだけ頭の中でもやもやイライラしても、結局は自分がどんな言葉を自分に投げかけるかによって、それが自分の思考となり自分の感情となっていく。もやもやをマイナスと捉えるか、プラスと捉えて自分に言葉をかけるかによって、自分の感情が決まっていく。(そんな風に乱暴に解釈してもいいでしょうか・・)
頭の中のモヤモヤやムカムカや不安が完全になくなる事はまずあり得ない。人間そういうもの。だから、言葉によって自分の思考を制限することで自分の行動を変えようという考え方、私はとても納得できた。例えば、どうしてもやりたくない仕事があるとして、頭の中(思考)は「やりたくない」でいっぱい。なかなか行動にうつせないけれど、いつかやりたくなる気持ちが起きるはず。それが起きるのを待ってからやろう。しかし、そんな気持ちが完全に起こる事はそうそうない。そうではなく、完全に起こることなんてありえないのだから「そろそろやりなさい」と自分に強く言葉をかける。そうする事でやりたくないという思考を制限して行動にうつす。
どこかで読んだことがある脳科学者の方が書いた記事に、脳は意外と騙されやすい、みたいなものがあった。楽しいから笑うんではなく、笑うから楽しいんだと。笑うことで自分は楽しいんだということにして脳を騙してやるんだと。最初はその思考回路の変化に戸惑うけれど、やっていくうちにそれがもう習慣みたいなものになっていく。さっきの例もこの考えと同じで、そういった言葉がけを心がけているうちに、どんどん脳がそのマインドに染まっていく、良い意味で騙されていくという事なんだろう。
私は、行動するために思考が完全に整うのを待ってしまう人間だ。もう少し〜したら、と言い訳して行動を先延ばししがちでもある。だけど本書を読んで、すぐに行動にうつすための心得を学んだ。思考は完全に整う事はないと諦め、それを騙し言葉で鼓舞して行動にうつしていったらいいのだ。同時に今まで私は、すぐに行動にうつせる人は私とは違い、「やりたい」という気持ちと行動が一致している人なんだと思って疑わなかったが、一概にそうとは言えないということを初めて知った。すぐに行動できる人でも、頭の中は私と一緒で嫌だなあとか、めんどくさいなあとか、そういう思考が渦巻いているのかもしれない。けれどもそれを自分との対話によって制限して、行動にうつしているんだ。思考を完璧に整えることは私にはできないけれど、思考に振り回されることなく言葉によって自分の行動を変えることはできる。まずは小さなことから、自分に投げかける言葉の選び方をポジティブなものに変えてみようと前向きになることができた。
英訳の本らしく無理に日本語訳したような例え話も多いので、その辺をぱぱーっと読めばすぐに読み終える。おすすめの本。
著者 ゲイリー・ジョン・ビショップ Gary John Bishop
スコットランドのグラスゴー生まれ。1997年にアメリカへ移住し、特に存在論と現象学について数年間学んだ後、世界有数の人材開発企業でシニアプログラムディレクターを務め、世界中の何千人もの人にコーチを行う。マルティン・ハイデガー、ハンス・ゲオルク・ガダマー、エトムント・フッサールの哲学から影響を受け、「都市哲学」という自身のブランドを創り出した。現在は、人間の能力をシフトさせて人生に大きな変化を起こすという生涯の仕事に日々を送る。彼の飾らない率直なアプローチは賛同者を増やしている。フロリダ在住。妻と3人の子どもとの5人暮らし。