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褒められる違和感

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「先生、崖ちゃんのことよく褒めてるよ」
女優の先輩にそう言われた。私と先輩は、同じ恩師の元で演技を学んでいる。私はもう女優は引退したので、あくまで心のリハビリとしてだ。(恩師については「私の恩師」参照)

先輩は「私はダメ出しばっかりされるんだ…」と言って、ほんのり目を赤くした。私は思い返してみる、先輩が指導を受ける姿を。確かに、厳しい言葉を言われている印象が強かった。反対に、私は優しい笑顔で頷かれることが多いことにも思い至る。

あれ、おかしいな、嬉しくないぞ。
なにかが心に引っかかっている。頭に浮かぶ恩師の穏やかな眼差しに違和感を覚えて、ハッとした。

「私、先生に“子供”として褒められてません!?」

私は、恩師にとっては可愛い子供なのでは?よちよち立ったり歩いたりするだけで、両手を叩いて喜べるような、そんな存在なのでは?褒められて喜ぶ私を横目に、微笑ましげに頷く先生。私は庇護され、成長を見守られてきたのだ。

反対に、先輩はどうだ?厳しい言葉をかけられ、叩き上げられている。もちろん、指導ばかりをされるのは、精神的にかなりつらいだろう。

でも、“子供扱い”されてない。一人の女優として、人間として、接されている。

褒められて喜んで、ただ教えを乞うだけの今までの私では、到底気がつかなかっただろう。一人前の大人として、褒められるのではなく隣に立ちたい。自分の足で踏ん張り始めたからこそ、見えた真実だ。

先生、私はもう褒められても喜びません。少しは照れちゃうけど、でも昔みたいに手放しには浮かれませんよ。

あなたに教えを乞うのではなく、あなたと意見を交わしたいから。

#エッセイ #褒められる #喜んでいいのか #子供扱い #生まれて9682日目 #先生と生徒 #とは



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