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当たり前を当たり前にできた日のこと

2日ほどiPhoneのない生活をした。
正確に言うとWi-Fi接続しないと使えないiPhone6は持っていたけれど、普段使っているiPhone11は持っていなかった、という生活。

年末年始にかけて通院や彼が実家に帰ることなどもあり、ねこと一緒に実家に帰っていた。
そしてそのままiPhoneを忘れて同棲している家に帰って来てしまった。

私の家にはテレビがないから、iPhoneがないと何も見れないしなんの情報も入ってこない。
しかも「あれ?iPhoneないかも!」と言って探し始めた途端に結構大きめの地震があり、さらに不安になった。

iPhoneがないから震源も調べられないし、津波の情報もわからない、震度もわからない、これもし明日彼がいない状態で地震が来て避難することになったらどうしようと色々考えてしまった。

普段iPhone6はカメラのみ使っているので、なにもアプリはインストールしていなかったけれど一旦インスタだけログインして友達たちにLINEが使えないことを報告した。
休職中なので普段ならマストの連絡は入ってこないのだけれど、前日たまたま代表とやりとりをしていたので、突然音信不通になった人になってしまっていることが心配だった。

スーパー優しいともだちであり同僚ののんちゃんに「iPhone実家に忘れて連絡取れないって伝えて!」とDMをすると、すぐ対応してくれたので滞りなく問題は解決した。
ありがとう、伝書鳩のんちゃん。


意外にも連絡やSNSの情報が入ってこない生活は楽しくて、読書が捗った。
次の日、天気が良かったのもあって「よし!ひとりで歩いてみよう!」と苦手なことに挑戦する気にもなった。

外に出たかった理由はタメンタイギャラリーという鶴見町にあるギャラリーで見たい作品があったからだった。 
〝ni・zi・no・ma〟という橋本莉歩さんの展示で、その日が最終日だったからどうしても行きたかった。

ただ行ったことのない場所なのに、googleの地図が使えないことが気がかりだった。
電車やバスに乗って発作が出るのも不安だったから、行く方法は徒歩一択。
地図をしっかり見てなんとなくの場所を覚えて、片道30分かけて歩くことに決めた。

9月から休職しはじめて、片道30分も1人で歩いたことはない。
せいぜい往復15分圏内の世界で生きてきた。
どうしても出るのが怖くてずっと誰かと一緒でしか行動をしていなかったのに、なぜかこの日は行ける気がした。
薬の量が増えて不安感が消えてきたからなのか、iPhoneがなくてあまりに暇だったからか、なんでだろう。

寒いだろうなと思ってダウンを着て外に出た。
引きこもっている間に世間はこんなに寒くなっていたのか...と感傷に浸るのも束の間、天気が良かったので日差しがすごい。
すぐに暑くなってダウンのチャックを下げた。

なんとなくこっちかなと勘を頼りに歩くのは楽しい。
知らない路地裏に面白い看板を見つけたり、ここの道を抜けるとこの道に出るんだ!と気付けたり。
いぬに出会ったり、ねこに出会ったり。
大通りはうるさくてまだ怖いから、路地裏の細い道をうろうろした分新しい発見があった。


せっかくカメラを持って出発したのに、結局地図も見れやしないiPhone6でパシャパシャ写真を撮ってしまった。
なんていうか、ひとりでカメラを構えることにまだ照れがある。
あと路地裏でカメラを構えていたら盗撮を疑われるのが怖かった。
iPhone 6のぼちぼち死んでる画質が嫌いじゃないので、ヨシとします。


キョロキョロしながら歩いていたら思っていたよりもずっとスムーズに、迷うことなくギャラリーに到着した。

大人になってこんなことを言うのは情けないのだけれど、私は本当に人見知りだ。
仕事の時はスイッチが入ってペラペラ話せるのだけれど、オフモードの時は全く話せない。

飲食店で「お手洗いどこですか?」が言えない(ので一緒に行っているひとに聞いてもらう)、アパレルショップで話しかけられるのが苦手すぎて視線を感じたら退店、試着したら買わないといけないプレッシャーがすごすぎて(勝手に感じているだけ)こわくてできない。

そんな自分が行ったことのない場所にひとりで入って、オーナーさんとお話をするのはとてもハードルの高いこと。
とりあえず挨拶は元気にしたほうがいいよな、と思って「こんにちはー!」だけ言って入室。
優しそうな男性が迎えてくれてほっとした。

美術館はよく行くけれど、ギャラリーで展示を見たことがないからどのテンションで振る舞えばいいかわからず、若干ソワついていた。

だけど作品がほんとうに好みで、気づいたらしゃがんでじーーっと見てしまった。
靴を脱いで部屋に入ったから、足の裏がほんのちょっと冷たい気がして気持ちよかった。

同じ時間におそらく常連であろう方もいてオーナーさんとお話しされていたので「写真撮ってもいいですか?」を聞くタイミングをずっと待っていた。


この現象はライブハウスでも起きがちだ。
バーカンの周りで身内っぽいひととか、昔からのファンの子がバンドマンと話していて、話しかけたい気持ちを抑えて気配を消して待つしかないあれ。
下北のサーキットとか、小さい箱であればあるほどこの現象はよく起きる。
そしてバンドマンと目が合った瞬間、さも今気づきましたよ〜みたいな顔をして「こんにちは〜!」と手を振るのだ。
謎の緊張感がほんとうに嫌なので、会った瞬間向こうから話しかけてくれるバンドマンは本当にありがたいと思っている。
話しかけるための待ち時間でどんどん溶けていくハイボールの氷とか、手に付く水滴とか、薄まったハイボールをちまちま時間稼ぎに飲むのとか、飲み切っちゃってみんながたむろしているバーカンにいそいそ近づいていくのも、一挙手一投足全てが緊張するのだ。


そんなことを考えながら作品を見て待っていた。(絶対頭に入ってなかったと思う)
そうすると「はじめてですか?」と声をかけてくれた。
オーウ❗️まさかのありがたいバンドマン側の人❗️
心の中で全力ガッツポーズをした。


お話をさせてもらう中で写真を撮っていいかの確認もできたし、聞きたかったことも聞けた。
葛藤と緊張を経て、無事撮れた写真を見てください!

🔘🔘🔘
🧽
📜
🪟
🕯️


窓から川が見えるのも、すごく気持ちよかった。
ちゃんと見に来ることができてよかったです。


嬉しいな〜と思いながらまた30分かけて帰りはじめたときに、だいすきなキャロットケーキのことを思い出した。
帰り道にだいすきなカフェがある。
せっかくだし寄っていくことにした。
この時はもう西日が眩しい時間になっていたから、どんなに歩いても寒かった。

到着してケニアミルクティーとキャロットケーキを注文。
この日の夜にiPhoneを届けてくれる約束をしていた母にお礼として渡すために、ホワイトチョコといちごのマフィンもひとつテイクアウトした。

彼と来る時は絶対に土日だから、すっごく混んでいて入れないこともあるイメージだったけれど、平日だったので私のほかに女の子の2人組しかおらず、とってもゆったり過ごすことができた。

普段カフェで本を読みたいなと思っても「回転率下げるし、そのせいで単価が...」と売り上げについて色々考えてしまってなかなか実行に移せない。
だけど途中からお店が私の貸切状態になったので、ありがたく読ませていただいた。

今読んでいるのはrn pressから出ているUSOシリーズ。
去年の夏に東京に行った時に、奥渋の本屋さんで出会って1冊だけ買ったのだけれど面白すぎて全シリーズ集めてしまった。

この日読んだのは特集YES
嘘にまつわることをまとめている本なので、嘘を正直に書くひとも嘘の特集だけど本当のことを書く人も、嘘と本当を混ぜて書く人もいたりと様々でおもしろい。
エッセイ、漫画、写真と色々なジャンルが一気に楽しめるところがお気に入りだ。

ブックカバーがかわいい
「映画の半券、栞にするタイプですか?」


全部読み切っちゃおうかなと思ったけれど、もったいなくてほんの少しのページだけ残してやめた。

この日は〝ひとりで外に出てやりたいことをやる〟という当たり前のことが当たり前にできてほんとうに嬉しかった。
ちょっとずつ良くなっているんだと実感できたし、変われていることが結果として現れて安心した。

家に帰ると久しぶりに動いたから全身筋肉痛になっていて、もうへとへとだった。
「すぐ筋肉痛が来るってことはまだ若い証拠か?」と考えながら目を閉じた。
彼が帰ってくるまでまたホットカーペットに溶けてしまった。

こんな気持ちのいい疲労感は久しぶりだった。
すごくいい日!


その日の夜無事iPhoneが戻ってきたので、嬉しかったことをnoteまとめることができました。
よかったよかった〜


おしまい。

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