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後悔

冬の日のデート

私たちには、一緒に過ごした2年間の思い出があります。
その2年間で4つの季節が2回ずつ、巡りました。
その中でただひとつ、冬だけは、たった3回しか会うことが叶いませんでした。

何年も一緒に過ごしていれば、何度もやってくる春、夏、秋、冬。
当たり前のように過ごしている今この瞬間のこの空気も、それぞれの季節ならではの空気で。
1年前の冬と、今年の冬は違う。
2年前の春と今年の春だって違う。
当たり前じゃない。
すべての季節、時間が特別なのです。

幕を開けた最愛の人と過ごす日々

私と彼の時間は、2年前の秋に動き出しました。
出会ってすぐに恋に落ち、2日目には結婚の話が出、10日目に交際スタート。
そして、出会ってきっかり30日後。彼は地元へ帰ることになり、遠距離恋愛がスタートしました。

交際1年目。
彼は地元に戻り、新しい生活をスタートさせました。
そして、無事に転職に成功し働きはじめます。

はじめての冬の日デート

まだ新しい環境にも車の運転にも慣れていなかっただろうに、私に地元を案内してくれました。
私は一生懸命おめかしして、新幹線で2時間ほどかけて会いに行きました。
大雨・大雪だったけれど、時折晴れ間も見える飽きない日々。
彼の運転姿、素敵だったな。
慣れてないっていう割に上手だったな。
乗り物酔いしやすい私を常に気遣ってくれたな。
真冬の彼の地元はかなり寒かったけれど、心はポカポカ、手をつなげばさらにあったかい。幸せいっぱいのデートとなりました。

2回目の冬の日デート

年が明けてから数日後。彼は資格取得のための勉強を始めます。
やる気満々で毎日勉強に励んでいる彼の邪魔をしたくなかった私、
確実に合格してから私のと時間を楽しみたいと言ってくれた彼。
ふたりの思いは一致、試験終了までデートはがまん、がまんとなりました。
必ず合格するから大丈夫!と毎日心の中で願いながら、次に会える日を楽しみに妄想していました。

そんな中、私は職場で大きな問題を抱えてしまい、ストレスから眠れなくなってしまいました。睡眠をしっかり取らないと思考も安定しません。
どんどんネガティブになっていき、いつも通りの明るい私で彼とお話できない日々が続きました。
そんな私を心配した彼がとある提案をしてくれました。

「資格試験の勉強会で地元から離れた大きな街へ行くから、その時に少し会おうか…多分2、3時間くらいしか会えないけど…少しでも顔を見て触れ合って話したい。」

私は涙を流しながら即答しました。
会いたい、と。

彼の提案が嬉しくて。
当日、約束の時間の2時間以上前に彼の地元に到着していました。
あと2週間でバレンタイン、でもその日は会えないから、ちょっと早めのバレンタインスイーツも一緒に。
前日の夜遅くに何度か失敗しながらも、愛をたっぷり込めて作りました。

勉強会が終わるタイミングに会場に着くように電車に乗りました。
だって、少しでも早く会いたい、少しでも長く一緒にいたかったから。
会場前から出てくる彼を見つけた瞬間、「人生の灯」を見つけた気がしました。
会った瞬間から会話が弾み、止まりません。
一緒に電車に乗って、事前に調べたお店でごはん。
ちょっとしたトラブルも発生したけれど、それすら愛おしい時間で、
ずーっと笑っていました。
想定外のことが起きても、笑って対処し合えるって最高。
少し早めのバレンタインも渡せました。
感動して喜んでくれて本当に嬉しかったです。

帰りは途中まで一緒の新幹線で。
いつもの私なら絶対しないお願いも叶えてもらいました
彼の匂いをすぐそこに感じる時間。
本当に、幸せでした。

彼のおかげでメンタルも持ち直し、また次に会える日を妄想できる私にもどることができました。
こんな急遽でイレギュラーなデート、雪のちらつく夜に、大好きな人と過ごせる幸せ。

最後の冬の日デート

夜行バスで私の住む町まで来てくれた彼と、お気に入りの温泉施設でひたすらまったりデートでした。
早朝から開いているので、人の少ない時間に岩盤浴を楽しんで、贅沢個室サウナまで堪能しました。
夜~翌日彼が帰る時間までは、私のお家でお家デート。
朝ご飯を作って、一緒に食べて。
一緒にこたつに入りながら、アニメを観たり、漫画を読んだり。
お互い緒に住む妄想を話しながら、将来の夢を語り合いました。

後悔

これ以降、冬のデートはありませんでした。
2年目の冬、私はかねてからの体調不良をこじらせ、大病を疑われていました。
検査、検査で、何日も仕事を休まなければならない日々。
この年の夏から冬にかけて、心身ともに人生で一番つらく、けれどなかなか離れて暮らしている彼には伝わらなくて…もどかしい日々が続きました。

そして付き合って1年を過ぎた頃にあまりの理解のなさに爆発、自ら別れを選択してしまいました。
彼にとっては突然の出来事だったようで、受け入れられず怒りを露わにする彼。
また彼のそういった態度に心が離れていく私。
完全にすれ違った二人がそこにいました。

結局この後の春に寄りを戻し、以前にも増して信頼し合える関係にはなれたけれど。
いまだに後悔しています。
あの時、もっと自分の思いを彼に伝えていれば。
彼に私の感じていた思いをわかってもらえていたかもしれない。
そもそも、わからなくて当然だよね、と受け入れられていたかもしれない。
そうしていれば、2年目の冬だって、デートできたかもしれないのに。

まさかこんなカタチで最後を迎えるとは、当時は思いもよらず。
2人とも、一緒になる未来しか想像していませんでした。

できることならあの時に戻りたい。
冷静に話し合って、直接会って話して、目を見て伝えたかった。
冬にさしかかる頃の、肌寒さと孤独と恐怖でいっぱいだったあの日々を、一緒に温めることができたなら…。


何度も何度も通過していく春、夏、秋、冬は、
大好きな人とぜんぶ楽しみ味わいたいと思うのは、私だけでしょうか。

今はこの事実と理想のギャップを、受け入れることで精一杯。
いつか共に温め合った手のぬくもりを、幸せのかたちとして思い出せますように。

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