頭からつま先まで、ことばで満ち満ちる
すっかり遅くなってしまったけれど、7月16日に訪れた「ことばの赤い糸展」で感じたことを書いてみる。
そのときの感情を大切にしたいから、そっくりそのまま、吐き出してみる。
ー電車の中で
絵とか、動物とか、歴史とか、イルミネーションとか。
これまでも、お金を払って時間をかけて、見たいものを見に行くことはあった。
でもその対象が、ことばだったことは今まであったろうか。
なんなら街中にはすでに、いろんな言葉が溢れている。
求めなくても降り注いてくるはずのことばに、電車を乗り継いで、肌を焼くような日差しが突き刺す中、会いに行ったことはあったかな。
どんなことばが待っているんだろう。
ー入り口にて
なんだかんだ一人で来てしまった。
Twitterで誰か一緒に行かないか呼びかけたけど、リアクションもなくて。
浮くかな、みんな複数人のグループで見に来ているのだろうか。
でも、私、読むの遅いし。
どんなことばが待っているかわからないから、一人で味わうのも、いいかも。
足元から会場の中の冷気を感じる。
早く入ろう。
ーストーリー展示にて
なんでこんなに緊張するのだろう。
あとで別の結果を読みに戻れるのに、この選択がものすごく重大なもののように感じる。
2000字ほどのショートストーリーを読んで、期待感は最高潮に高まっている。
最高の状態で選ぶこの選択のチャンスは、もう二度とは訪れない。
この素晴らしいドラマをどう締めくくるか、私の手にかかっている。
正直、4つほど読んだうちの1つは「うわ、失敗した」と思った。
なんかしっくりこなくて。
もう片方のものを読んで心底悔しくなった。
もう一度読み返せるのに。
なんか必死になっている私。
いいね、こういうの。
初めてだ。
最後にもらったしおりの言葉。
目に飛び込んできた瞬間、「ふふっ」右の口角が思わずきゅっと上がった。
「わたしは素敵」と、三つ唱えて。
今の私を見透かされたような気がした。
係の人、少し不思議そうな顔してたな。
ーBAR MUSUBUにて
3分で自分のことを話す。
見ず知らずのこの女性に。
何を話そう。
この人は、私が結婚していて、子どもがいて、隣県に住んでいて、ライターをしていて。
そんな事前情報を、何も持っていない。
私が何者なのか、何も知らない。
あれ、私も自分が何者なのか、知らないじゃん。
気づいたらテーブルに置かれた砂時計はすべて流れ落ちていて、びっくりだけど私の話もまるで台本でも用意していたかのようにスムーズに始まり、砂つぶの流れとともに着地した。
どんなことばをプレゼントしてくれるんだろう。
「自信を持って」系かな、「大丈夫だよ」系かな。
ひねくれた私が腹の奥から顔をだす。
うーんうーんと頭を抱えながらその女性が私に差し出したことばに息を呑んだ。
「そんなあなただから、疑いなき信頼がおける。」
こんなに力強い言葉を、両肩をガシッと掴まれたようにハッとする言葉を、今まで受け取ったことはなかった。
この初めて会う女性から、そしてその向こうにいる顔も見たことのないタイムラインのどこかで今もことばを紡いでいる誰かから贈られることばに、こんなにも心を動かされるとは。
驚きの後に込み上げてきたのは、涙だった。
止まらない。
心から、これでいいんだと思えた。
私は私、それでいい。
ーゲストエピソードにて
「うまくやらない」
何度そう決意しても、怖がりな私は飾りたがる。
怪我をしないような前置きが欲しくなる。
真っ白だった自分のことばが美しく聞こえるように、色を付け足しすぎてモノトーンに変えていく。
ほら、今も。
飾りたがる、でいいじゃん。
この場所に寄稿することばとして、のびのび作者の言葉としてぶつけられているその様が潔くて。
そしてビビリの飾りたがりの私には、何度も読んで聞かせたい内容でしかなくて。
ことばで私の何倍も、何十倍も活躍している方がこう思っているんだもん。
私なんか、余計失敗していいじゃん。
のびのびやろうって、思った。
ー展示の終わりに
イベントを企画された(リーダーなのかな?)、藤田さんの言葉が最後にまたものすごくいい余韻を残してくれた。
「言葉は、心に追いつかない」
写真は撮らずにメモを取ることも忘れてしまったのでママではないかもしれないけれど。
ことばは、人がいてこそのことばなんだと思い知らされた。
ことばが人をつくる部分もあるかもしれないけれど、人を輝かせ、その生の軌跡を残したカタチがことばなんだ。
そして、だから私は書くのが好きなんだ。
触れるのが好きだし、聴くのが好きだし、話していたいし、聞いていたいんだ。
私が好きなことば、あった。
ずっと前に出会っていたけれど、今になってようやくその指し示すことがわかって、大切にしたいことば。
私でいいし、君でいい。
このことばのままに生きれば、きっと世界がもう少しだけ優しくなる。
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