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「大人ってなっがいよ〜」って、安藤サクラも言ってたし
5年前、まだ10代。
当時は成人年齢が18歳に引き下げられる前だったので、19歳の私はまだ、「子ども」だった。
そんな「子ども」の私は、あるCMがわけもなくすきだった。
「大人ってなっがいよ〜」
爽やかに、だけど意味深に、そう言って笑う安藤サクラの姿が印象的だった。
大人って長いんだ。
大人になることがそれまでの人生のひとつのゴールのように思えていた私にとって、大人が長いというのは「まだ私の人生はたくさん残っている」というある種の期待を覚えさせもした。
だから総じてこのCMと「大人ってなっがいよ〜」というセリフにはポジティブな印象を抱いていた。
ただ、当時から安藤サクラの表情には寂しさも感じられた。このCMが持つほろ苦さを、当時の私もなんとなく受け取っていた。
19歳の私にはわからない大人の感情があるんだろう、ともどこかで思っていた。
そして5年経った今、24歳。社会人2年目になった。
訳あって新卒1年目に転職した私は、今2社目にいる。
転職してから半年が過ぎて、有給も付与された。
恥ずかしながら1社目は半年ちょうどで退職してしまったので、私は同じ会社で半年以上働いたことがなかった。
学生時代のアルバイトは同じところで4年以上も働いていたけれど、週2、3日のアルバイトと、週5で8時間以上働くのは、やっぱり訳が違う。
転職して半年というキリのいい時間が経って、改めて気づいた。
「社会人って、長いな」
「終わり、見えないな」
学生時代から覚悟はしてた気がするけど、実際に体験してみてより感じる。
毎日毎日、毎週毎週、同じようなことの繰り返し。
まるでJR山手線に乗ってぐるぐるぐるぐる回っているような感じ。停車駅はあるけれど、ゴールは見えない。どこで降りるのか、わからない。というか、65歳になるまで降りられないのかも。
毎週、月から金まで毎日8時間以上机に向かう生活っていつまで続くんだろう。
それが半永久的に思えて仕方がない。
節目がないから、なにを起点に、なにを目標にしていけばいいか、わからなくなってくる。
そんなことを考えていたら、安藤サクラのCMをふと思い出したのだ。
そして5年ぶりに、今はもう放送されていないそのCMを観た。
そうすると当時とはまた違う感じで、そのCMに惹きつけられた。
当時は感じなかったはずの、キャッチコピーの重さが私の上にのしかかった。
甘くない。引きずらない、もう、青くない。
もう、青くない。
そうだ、もう青くないんだ、私。
なんだかせつなさと、覚悟を感じるコピー。
これが大人なんだ、と今の自分の状況とCMのキャッチコピーがようやく重なった。
安藤サクラは、どんな思いでこのCMに臨んだんだろう。
せつない表情の中にも少し笑顔を見せているのは、希望なのか。あきらめなのか。
答えはわからない。
でもやっぱり、大人になっても、私はこのCMがすきだ。
いや、大人になったからこそ、かもしれない。
大人って、ほんとに長い。
長いから節目を見失う。
だけどみんなと同じ進み方じゃなくなるからこそ、自由でもある。
自分の節目は自分でつくればいい。
そんなことを考えていたら、こんなコピーもあったと気づく。
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おとなには、卒業がない。
いつ始めても、いつまでやっててもいいってことだ。
自分だけの大人の人生を。
長い長い、大人の道のりを。
長いからつらいし、長いから、きっと楽しい。
大人ってなっがいよ〜。
安藤サクラも、そう笑ってたし。