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バンクシーって誰?展

福岡アジア美術館で開催されている「バンクシーって誰?」展に行ってきた。

正体不明の覆面アーティスト「BANKSY」。
彼は、今や子供から大人まで世界中の誰もが注目しているアーティストではあるが、その実情は多く明かされていない。

バンクシー作品で最も有名な絵の一つ「風船と少女」
サザビースのオークションで落札直後に
シュレッダーにかけられたのは有名な話

謎のベールに包またバンクシーは、今までどのような活動を行い、どんなメッセージを私たちに問いかけているのか、そして、彼は一体何者なのかーー。
本展覧会では、その謎に迫っている。

こちらの展覧会、実は先月行こうと思ったのだけれど、その日は水曜日。ちょうど休館日。
だから泣く泣く諦めたあの日から1ヶ月ぶりのリベンジ。

中村倫也氏の音声ガイドとともにスタートする。

命儚いグラフィティ

バンクシーは所謂グラフィティアーティストだ。

おや、ではグラフィティアートとはなんだろう?

イタリア語で落書きを意味する「グラフィト graffito」の複数形で、壁面に落書きされた字やイメージを指すグラフィティを、表現手段として選択した美術。
現代美術用語辞典より引用

そう、つまりグラフィティとは壁に描いた“落書き“である。
美術館やお金持ちの倉庫で綺麗に保管されている絵画とは違い、単なる落書きであるグラフィティは、清掃されたり、壁を取り壊されてしまえば無くなってしまう。

実際にバンクシーが電車内に描いたマスクのネズミの絵は、清掃員の手によって綺麗に消されている。

ああ、なんと命儚いグラフィティ。

ただ、そんなグラフィティにしか出来ないことがある。
それは、誰の目にも入る、ということ。

ほとんどの有名な作品は、ちゃんと美術館にいって、入館料を払って、とちゃんとした手続きを踏んだ人しか見ることが出来ない。

それに対して、ほとんどのグラフィティアートは屋外で誰の目にも入りやすいような壁や建物の側面に描かれており、バンクシーの作品も例に漏れない。
親しみやすいアートだからこそ、彼の強烈なメッセージは、多くの人々の記憶に焼き付く。

犯罪者か、英雄か

さっきも言ったように、グラフィティアートというのは壁に描いた落書きだ。
この壁は、もちろん自分が所有している壁ではなく他人の私有地、ひいては公共の施設の壁であり、それらに許可なく落書きをするこの行為は器物破損に当たる。

言っちゃえば、犯罪行為だ。

また、彼の作品には容赦ない国家や政府に向けての皮肉や、世界情勢の風刺が描かれていて、国によってはこちらも犯罪行為である。

バンクシー自身も、このことは分かっているようで、その証拠に彼はいつも顔を隠し、アート活動もゲリラ的に行なっている。

顔を隠して写真に映るバンクシー

「彼を捕まえろ!」
そうサイレンを鳴らし追い回す者がいれば、
「彼こそが英雄よ!」
と、彼のアートに賛辞を送る者も少なくない。

バンクシーは犯罪者か?それとも英雄か?

これは難しい問題だ。
多くの者を救うための犯罪は、許されるべきなのか。

犯罪は犯してはいけないという正義感の裏で、彼には捕まってほしくないと思う自分がいた。

ポップな絵柄の裏に秘められたもの

バンクシーの絵はすごくわかりやすい。
それに、絵柄が可愛くてポップだ。

「LOVE Rat」
バンクシーがよくモチーフにするドブネズミ。きゃわ。

ただ、その絵柄のポップさに似合わず、彼が我々に訴えているメッセージはかなり痛烈なものが多い。

例えばこれ↓

レ・ミゼラブルの表紙のオマージュ
左下のQRコードにアクセスしてみて。


フランス政府が、難民に対して催眠ガスやゴム弾で襲撃したという報道を聞いたバンクシーが描いたとされる作品。
コゼットが涙を流しながら、催眠ガスに包まれている姿は、襲撃された難民の姿に重なる。

続いてこれ↓

「Have a nice day」
ニコちゃんマークが逆に怖い


なにが「Have a nice day」だ。怖すぎる。
悲惨な現実や、目を背けたくなるような事実についてバンクシーはいつもポップに伝えてくる。

気をつけて。
バンクシーだ!と思って興味本位で彼の作品を覗くと、忽ちこの世界のグロテスクさが貴方を飲み込んでくる。

彼の作品を真剣に見るには、それ相応の覚悟が必要だ。

最後に

“Imagine a city where graffiti wasn’t illegal, a city where everybody could draw whatever they liked. Where every street was awash with a million colours and little phrases. Where standing at a bus stop was never boring. A city that felt like a party where everyone was invited, not just the estate agents and barons of big business. Imagine a city like that and stop leaning against the wall – it’s wet.”

ーーグラフィティが違法になっていない都市を想像してごらん。誰でも好きなものを描く事ができる都市なんだ。街角のどこもかしこもカラフルな色や素敵な言葉で溢れかえっている。バス停でバスを待っている事すら退屈ではないだろう。誰もがパーティに招待されているように感じる都市だ。そんな都市を想像して。おっと、壁にもたれかかるなよ?まだ、そこは乾いてないんだ。

この記事の最初の方に貼ってある風船と少女の絵のオリジナルは、ロンドンのウォータールー橋のたもとの階段に描かれていた。
その絵に誰かが「THERE IS ALWAYS HOPE(いつだって希望はある)」と書き加えたことで、より人々の心に深く印象に残り、世界中の人々の心に焼き付けられたという。

バンクシーは、人々の不満や恐怖、絶望などのネガティブな感情、希望や夢や願いなどのポジティブな感情、全てを世界中に発信するための土台だ。

彼の作品を完成させるのは、鑑賞者の私たち。
1人1人が自由に表現することが出来る平和な世界のために、バンクシーは暗躍し続ける。

そんな彼の活躍が身を結び、これ以上罪を重ねることがないよう、1日でも早く世界中の人々の平和が約束され、たくさんの笑顔が溢れる世の中になりますように。

流さなくていい涙が溢れないことを願ってやまない。

福岡アジア美術館で3月26日まで開催中

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