最後の戸締り
今日はいつもの映画感想文とはちょっと違う。
今日は人生で初めて、映画館で同じ作品の2回目を鑑賞した。
先に言っておくと、私は決して同じ映画を2回以上見たことがない、というわけではない。
例えば私はジブリ作品が大好きなのだけど、どの作品もほとんど二回以上見たことがある。
映画館で観た後もDVDを借りてみたり、金曜ロードショーがある時は、ほぼ間違い無く視聴していた。
特に私が好きな作品である「千と千尋の神隠し」は(なつめはくという名前のはくという部分は、この作品に出てくるハク様が好きで、そこからとっている)好きすぎて、もう過去に何度繰り返し見たかわからない。
ジブリ以外にも、「シン・ゴジラ」とか「帝一の國」はDVDを買うほど好きで家で何度も見てる。
他にも妹から勧められて、私も気に入った作品である「リトルフォレスト」シリーズは、心癒されたい時に配信サイトでよく見ている。
つまり私は同じ映画を何度も見ることができる人間なわけで、同じ映画を何度も見ることに意義や価値を見出してるわけだけど、でも、映画館で同じ作品を2回以上みるということは、今までなかった。
何本か「もう一度みたいなー」と思う作品があっても、「すぐ配信サイトで配信されるでしょ」と思って、だったら他の見たことない映画を見た方がいい、とそちらに足を運んだ。
だって映画って一回1900円じゃん?
まぁ、私はお得な日にしか行かないのだけど、それにしたって1200円、1300円かかる。
過去に何度その作品を見ていようと、それは変わらない。
だから、わざわざ映画館にいって過去に見たことある作品をもう一度見るって、なんだか勿体無い気がしてなかなか出来なかった。
でも、それが今日覆された。
前置きが長くなったけど、本日私は「すずめの戸締り」の終演記念上映を見てきた。
終演記念と題してるけど、入場時にポストカードが配られるくらいで、映画の内容に変更はない。
じゃあなぜに頑なに行こうとしなかった2回目の鑑賞をしたのかと言えば、それは実際のところなんとなくだ。
「映画館で二回以上みた初めての作品はなんですか?」
「それは、松村北斗の映画です」
と、自分の中でしておきたかったから。
拍子抜けしてしまうくらい単純かつ、オタク心丸出しの理由なわけだけど、これ以外に思いつかない。
もちろん「すずめの戸締り」自体が2回以上見たいと思える魅力がある映画であることに間違いはないし、前提条件ではあるのだけど。
それで早起きしてまで映画館に行ってきたわけ。
ただ、私はこの選択が自分が思ってる以上に意味があるものだったと、映画館からの帰り道で感じている。
何度見てもハラハラする展開に、主人公たちとダイジンのコミカルでテンポのいいやりとり、人の温かさを感じる演出、映像の綺麗さ、感動的なラスト──。
一度見たことがある物語なのに、どこか新鮮で、でもホッとするような気持ちに包まれたのは2回目ならでは。
というより、私初回では後半ほぼ号泣してたから、ところどころスクリーンを見れてなかったり、ちゃんとセリフが聞き取れてなかった部分があった。
自分でもビックリしたのだけど、これは初回ほど映画本編中に感情が大きく乱れることはなく、穏やかに冷静に鑑賞できた2回目だからこその気づきだ。
1回目の鑑賞時、私は新海誠監督の心の優しさと、反する揺るがない意志に確かに触れた。
でも、それは2回目でより輪郭線を強め、温かい血の通ったものとなった。
それに、ラストのすずめが草太に「おかえり」と言って、エンドロールに入るシーンではやっぱり泣いた。
号泣とまでは言わないけど、静かに涙が頬を伝うような静かな感動。
同じ映画なのに、違う感動を味わうことが出来た。
しかもこの感動はおそらくだけど、映画館じゃないと味わえない。
まだ他の媒体でこの作品を見たことがないから分からないけど、多分これは間違いないと思う。
私はこのことを、今日初めて知った。
なんとも不純な動機で見た映画館での2回目の鑑賞が、自分にとってここまで大きな感動と経験をくれたことに私は驚きつつも、新たな発見ができた喜びを肌で感じた。
映画館で同じ作品を繰り返し見るのも、たまには悪くない。