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「男はつらいよ」#1

映画館に行かれない日がやってくるなんて想像だにしてこなかったわけだけれど、今それが現実に起こっている。

ミニシアターを救うプロジェクトが2億5千万以上お金を集め、配信サービスは短期間で大量に会員数を増やし、無料で提供される有名アーティストのライブ映像をYouTubeで見ながら自宅で酒を飲んでいる。なんだ?この特殊な時間は。

せっかくなのだから海外ドラマをまとめてみたり、観たかった、もしくは観るべき映画とかドラマみたいなやつを片っ端から片付けていくみたいなことが出来ている人を散見する。心から羨ましい。何故だかよくわからないが俺にはそういうことはうまく出来ないのだ。

噂のドラマ「ハリウッド」も「DARK」も「愛の不時着」も何もかにも、この機会に映画館での上映の機会を逃した数々の新作映画も、観ればいいではないか自宅やスマホで。いやー、なんか全然気分が乗らない。だったらわざわざ三茶まで出てそれ以外では用事のない世田谷線に乗って下高井戸に行って、階段上って下高井戸シネマで、好きかどうかわからないイタリア映画とかを大して居心地の良くない椅子で、でもでっかい画面と暗闇で観たい。ああ、観たい。

なんか、映画には「強制されたい」のだ。途中で止めたりさ、ザッピングするように選べたり、昨日のベスト10が何だとかいうことはさ、けっこう余計な情報だと思うんだよね。じゃなくて暗闇でよくわからないものに出会って帰るまでの2時間とかの体験を、積みたいだけなの。

ものすごく前置きが長くなった。とにかく俺は映画館で映画を観たい。

でも、それでもどうしても何か映画を観たくて選んだのは「男はつらいよ」でした。1作目。

もう喫煙とかビンタとか男女の扱いとか見合いとか、今だったら色々アウトなことたくさん(ほとんどの昔の映画は今はほとんどアウトだったりする)であるのだが、なんというか心が満たされた。ありがとう。

今はなき大切な何かを思い出させてくれるとか、あの頃は良かった(知らないけど)とか、そういう話は横に置いておいて。

言っていたでしょう?忌野清志郎も。
日本には「率直さが足りない」って。

自分の気持ちを素直に、率直に、バカにされても示すことの優しさみたいなものが、やっぱりこの映画にはあるなぁ。あと49本あるんだけど、これコロナ中にずっと観ることになるのかな。

倍賞千恵子と光本幸子、ほんとかわいい。

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