棒読みの再定義
結構長い間、セリフの言い方ではなにも考えない習慣に慣れていたせいで、そもそも何が棒読みなのか、それ自体がよくわからくなっていた。
劇団血パンダのYoutubeチャンネルでやっていたパイセンのラジオでも棒読みについて扱っていたけれど、なにかが明確になったわけでもなかった。
最近、客演出をしていて、久しぶりに血パンダでないみなさんと演劇を作っていて、改めて戯曲が演劇に立ち上がる経路の取り方について考えている。
皆さんがセリフを上手く言うことで、あれこれ可能性が狭まっている形跡が見られるので、棒読みで確認することで、いろいろなことが明確にできるのではあるまいかということで、棒読みが再定義できた。
棒読みの読み合わせ
戯曲を 読むに当たって、黙読、音読で生じた先入観を、可能な限りリセットするために、棒読みによる読み合わせをします。
会話の中にある選択肢を明確にするため、抑揚を付けずにセリフを読みます。
棒読みによって、セリフの意図しているところ、幅の可能性を明確にします。
読み合わせの進め方
なんの話題かを明確に把握しておく。
話題のキーになる言葉をきちんと拾う。
誰に向かって喋っているのかを明確にする。
あくまで登場人物間の会話として話すこと。観客を意識してはいけない。
誰の言葉を聞いているのか明確にする。
言葉の言い出しから、言い終わりまでの音量を一定に保つ。
言葉が口の前で音になっているか気をつける。
言葉の切れ目、意味の切れ目を明確に意識する。
戯曲に書かれているセリフの順序ではなく、会話のテンポの中で、言葉を発さなければと思い至るタイミングの方に忠実になること。
厳格に棒読みを試みる場合、最初は誰に向かって喋っているのかを明確にする必要はありません。
聞いている先、話している先を示すサインを決めておきます。
サイン
言う相手を指差す。
複数の相手に話している場合も、ゆっくり順番に指せば良いので、指差す。
場にいる全員に等しく話ている場合は、手のひらを上向きにして前に出す。
皆に注目して欲しくて話している場合は平手を頭上に挙げる。
聞こえよがしに誰にも言っていない独り言を言う場合は、指を一本立てて頭上に挙げる。
自分だけに言う場合は胸に手を当てる。
最初からセリフのニュアンスを当てこんで運びを決めていると、見えてこないことがあります。
確認できること
セリフがどんな文脈の中で交わされているか。
セリフごとにきれ切れにリセットされるのではなく、セリフはもっと長い会話の文脈の中にある。
ニュアンスの可能性。
距離、位置関係の可能性。
セリフ、立ち振る舞いのニュアンスにどんな幅がありそうか、どれだけのバリエーションを役者と演出家が共有できているかで、いろいろと作業がスムーズになればいいなぁと期待している。