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公演のチケットの売れ行きががあまりにも悪いので、血パンダの作品を、どの程度の力加減で考えてもらえればいいのか……。手っ取り早く本や音楽と絡める試み。

まもなくの公演『追走する円環』が、かなりストレートに不入りなので、ちょっと主題に沿ったスポイラー的な話でも書いて見られればと思いながら、何を書いたものか困っているところです。

今回の台本は、言葉が詩的になっていくのを止めないで一気に駆け抜けており、作中ではとにかくずっと、そうは思えなくても同じことを言っています。だから、わかるもわからないも、感じ取れるものはあろうから、きっと大丈夫。

「君が君なのはどうしてだい?」

『追走する円環』なんてタイトルが、そもそも『ゲーデル・エッシャー・バッハ』ですよ。ドッペルゲンガーの話ですが、つまりはグスタフ・マイリンクの『ゴーレム』のイメージから脱線して私が捻り出したものかもしれない。
例えば君はなにでできている?って神沢利子の『くまの子ウーフ』ですよ。小学校の低学年の頃に教科書で読んだことのある人も多いと思います。
そういえば、年明けに、埴谷雄高の『死霊』をラノベとして読めるのではあるまいかという読書会を企てて、地震やらなにやらがあって、頓挫したままですが、自同律の不快なんて、そもそも考えることなのかと、そんな風にも思えるのでした。

1990年代関西で擬装機械王子って劇団を作って演劇をやっていた頃には「静かな演劇」の真っ只中に居たんですが、どうやらあれはすっかりロストテクノロジーになっていると、最近、大阪からそんな言葉が飛んできました。
演劇シーンの趨勢とかそんなこととは無関係に富山県で好き放題、演劇が発生する瞬間を模索し続けているので、どうやら演劇を見慣れた人にも「なんじゃこりゃ?」と思ってもらえる様で、それはもう近隣の、演劇を見たことのない皆さんには、余計になんじゃこりゃです。
でも、もう目の前の光景を見ておくしかない体験というやつに必要なポイントはほぼ言語化できたのではあるまいかと見ています。ここ数年、かなり精度をあげる感じのアップデートが続いていましたが、もうほぼ思いつかないので、今回の公演は、完全になんらかの地点です。

そんなわけで、公演を見てもらう時には、概ね「目を閉じておいでよ」と思っています。
演劇の観劇体験としては、ちょっと変わっている筈なので、演劇を見たことのある人も、無い人も「目を閉じておいでよ」BERBEE BOYSですね。

もしくは、「その火を越えてこい」正しくは、「その火を飛び越して来い」。三島由紀夫の『潮騒』ですね。山口百恵といきたいところですが、世代的には堀ちえみです。
などと言いつつ、『潮騒』自体は読んでも見てもいないので、本当にここだけのつまみ食いで、とにかく覚悟してこいというところで思い浮かぶ言葉です。

こうして考えると、誰かの言葉に形作られている自分というのは、なんとなくあるわけで、三島由紀夫ならよっぽど「世界は単純な記号と決定だけで出来上がっている」とか、『午後の曳航』ですね。そっちが結構長い間心に染み付いていた様に思います。
流石に初老ともなると、景気良く単純とは言い切れないなとは思うものの、下地は残っています。
世代的にという話であればこれも。三代目魚武の、「君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ」これは不変の真理ですね。キスの回数なんてそもそも基本的に越えるものです。

基本といえば、いろんな翻訳がありますが、プラーテンの『トリスタン』は、なんだかそうだなと、心に強く刻まれた瞬間を自覚しています。

目の当たり美を見し人は
すでに死の手に委ねられ
この世の役にたちがたし
されど美を見ておののかん
目の当たり美を見し人は
……続く

これは、暗記しているのですが、集英社から新書サイズで出ていた古い詩集に掲載されていた翻訳で、今、ぱっと誰の訳なのか確認できないや。
多分、『午後の曳航』の「世界は単純な記号と決定……」というのが、どんどん複雑になっていくのに比べて、本当に良くも悪くも自分のかなり深いところにあります。
深いところにといえば、「死守せよ、だが軽やかに手放せ」というピーターブルックの言葉からずっと、手持ちのものを組み合わせて乗り切る稽古場ではなく、できないことも含めて諸々クリアして作品を作る稽古場をやっています。

あと、最近なにげなく聞いて、あまりのことに笑ってしまったんですが、私、間違いなく高校生の頃からThe Willardのファンで、本当に間違いなくずっと影響下にあります。『追走する円環』がかなり『The End』やった。普段はノイズとかフレンチポップやニューウェイブを聞いて暮らしているんですが、The Willardはいつまでも色褪せずかっこええです。

『追走する円環』
2024年10月26日(土)/27日(日)
開演:15時/18時 (30分前開場)
場所:内川Studio(富山県射水市本町3丁目4−13
料金:2,500円(前売りのみ)リピート1,000円
チケットはPeatixにてお買い求めください。
https://blood-panda.peatix.com/

そういえば、先日、地元のFM局の番組にお招きいただいて、血パンダ結成の頃の話や、どんな風に演劇を作っているかの話をする機会があったので、こちらもぜひ。


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