人事管理も攻めれば心が楽になる【攻めの人事-第1話】
今回から複数回に渡って、「攻めの人事」というテーマで記事をお送りさせて頂きます。
ICONIC INDONESIAでは人材のご紹介だけでなく、人事マネジメントに関するコンサルティングサービスもご提供しています。
その中でも特に弊社は、「攻めの人事」に主眼を置いております。
インドネシアは元々ハイリスクな労働法、毎年の激しい賃金上昇、
また今年はオムニバス法が施行されたとは言えども実際の運用がどうなるかは不明瞭、それに加えて収束しない新型コロナの影響。
こういった外部要因の対策に追われ、管理者は心の休まる暇がありません。
一方「攻めの人事」は、自社で主体的に構築するもの。
ひとたび会社の事業計画に基づいて構築すれば、外部要因によってその根幹まで崩されることは基本的にはありません。
コロナやオムニバス法の施行で先行きが見えにくい時だからこそ、ブレない攻めの人事マネジメントで、心の余計な不安を取り除きましょう。
今回の第1話ではまず、「攻めの人事」の基本的な考え方についてお話し致します。
攻めの人事とは?
日ごろの良好な労使関係維持、労働市場や法令のリスク対策の為に備えることを守りの人事というのであれば、
「攻めの人事」とは正に、会社の中期経営計画実現に向けた組織作りの為の、戦略的人事マネジメントと言えます。
それは組織にとって必要な人材を確保し、業務を遂行するのに最適な状態を管理する事です。
もう少し具体的に言うと、
(1) 中経実現の為に必要な人員数、人員構成、配置、適性なコストが現段階及び将来に渡っても維持される構造を作る事⇒”量の視点”
(2)社員の良好なコンディションを保ち、配置した人材がより高い成果・業績を上げられる状態を目指す事⇒”質の視点”
といった、大きくはこの二つを考える事が攻めの人事マネジメントです。
はっきりと期待水準を示す
まずは中期経営計画を実現する為の組織図を、前述の(1)・(2)の両面から描きます。その組織図の中にいるそれぞれの社員に求められる役割であったり、その役割を遂行するにあたって必要な能力・経験が人材要件です。「はっきりと期待水準を示す」とは、この人材要件を言語化し、社員が納得するまで伝えることです。
具体的には、役職ごとの役割定義、等級定義とそれらに基づいた評価の視点等に落とし込まれて行きますが、
詳細の事例は後々の号でお話していきます。
ここで重要なのは、期待水準をはっきりと言語化して社員に示すことが、人が育つ組織作りのスタートラインとなるという事です。
そうは言っても、インドネシア人とは文化も仕事に対する考え方も違う訳だから、
こちらの価値観や意図をなかなか理解してもらえない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、その考えは少し間違っています。
価値観や考え方の違いがあるのは当たり前。それは日本人同士の場合であっても同じです。
国や国籍の違いは度合いの差でしかありません。
そもそも雇用する側と社員の間で何かしらのギャップは起きるものです。
ギャップを少しでも解消して、Win-winな労使関係に近づける為の人事マネジメントであり、
手段の一つとしての人事制度で社員に対する期待値をできる限り言語化します。
それは会社から社員に対するメッセージです。
自分の仕事に期待をされて嫌がる人はそうはいません。
人は期待をかけられることで、出来るだけそれに応えようとします。
ハーズバーグという心理学者の研究で、仕事の動機づけに強く影響するのは自分の仕事を通じて得られる達成感や承認等であり、
給与は不満の要因にはなり得ても、仕事のモチベーションにはそれほど強い相関が無いことがわかっています。
つまり会社の期待値に対してどれだけ出来たのかを適切に評価し、フィードバックする事が最も社員の動機づけと成長に繋がります。
期待値を言語化しないまま、あれやこれやと出来なかった事ばかりを指摘しても、社員のやる気は下がる一方。まして大きな成長など期待できません。
こんなマネジメントでは、インドネシア人でなくたって嫌になります。
なお期待値を言語化する為に、職務記述書(いわゆるジョブ・ディスクリプション)を具備すれば良いかというと、
私は一概にそうでは無いと思っています。
この考えについても、いずれお話していきたいと思います。
ここはインドネシアだから・・・という固定観念から一旦逃れる
9年ほどインドネシアで仕事をさせて頂いた私の結論は、「ここはインドネシアだから」という事をあまり意識しすぎない方が良い、という事です。
文化がこうだから、性格の傾向がこうだから、労働法がこうだから・・・、というのに生真面目に合わせようとし過ぎると、全てが本末転倒になります。
誤解の無いように言いますと、決してインドネシア人をリスペクトしないという事ではありません。
法令や宗教の戒律を無視するような事は当然してはいけませんし、こちらの人々により受け入れられ易い仕組みや手法を取り入れる必要はあります。
ただこういった事は、事業の目的という大局から見れば、枝葉の話です。
そもそも勝手に色眼鏡でこの国と人々を見て、何か特別な事をしなければと考える事自体が失礼です。
ちなみにインドネシア向けにローカライズする為の、これら枝葉のカスタマイズテクニックについても、後々の号で取り上げてみたいと思います。
話を戻しますと、まずは余計な先入観を捨て、純粋に社員に求める期待水準をはっきり言語化しましょう。
前の節でお話したように、期待をかけられて嫌がる人はそうそういませんし、
もし嫌だと感じる人がいるなら、いつか自分から会社を辞めてもらえばいいのです。
極論すれば、会社からのメッセージに共感し、共に頑張ろうと思ってくれる人だけが残れば良いわけですから。
そう割り切って考えれば、人事マネジメントにおけるブレがなくなり、心も楽になります。
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