【やらかし話】鍵のないバイク以外手元にない状況から生還した話
ランニングをするために外に出た。
スマホと財布は家に置いてきていた。
バイクの鍵も家の鍵も走るのには邪魔。
いつもみたいにバイクの座席に鍵を隠そうとした。
走るためには邪魔だから。
ゴールデンウィークで自宅の前の人通りは多く、自分の目の前を多くの人や車が通っていた。
用心しようと思い、座面を強く押した。
ロックがかかってしまった。
バイクの座席にバイクの鍵と家の鍵を入れてロックしてしまった。いわゆるインキーの状況。
当然、部屋の鍵もかけて出かけているので引き返すことはできない。
日付は5月4日祝日17時15分
インキーをした瞬間、寒気がした。
暖かい日だったのでランニングするには半袖短パンで十分だった。
状況が変わった瞬間、最悪の服装になった。
これから夜は冷える。
必死でロックのかかったバイクのシートをこじ開けて鍵を取り出そうとした。
なんとか指先は入ったけど、鍵には届かない。
アザができるくらいシートに手が挟まれていたので、届かないとわかるとすぐに手を引っ込めた。
耐えられない痛みだった。
バイクを逆さまにして重力で鍵が隙間から落ちてこないか試してみた。
バイクのミラーが折れただけだった。
バイクと格闘している自分の目の前を多くの人と車が通った。
その人に自分はどう映ったのだろうか。
通報されると困るので、こっちから警察に助けを求めようと思った。
コンビニで事情を説明して電話を貸してもらった。
電話の先からは「110番では対応しかねるので、近くの交番に相談に行ってほしい」と返事を受け、最寄りの交番の場所を教えてもらった。
近くの交番は坂道の向こうだった。
バイクは本当に重たかった。これまでの座席との格闘とバイクを押して歩くのでひどく喉が渇いていた。
体力を消耗すると余計に気分が落ち込んだ。
『家に帰れなかったらどうしよう』
『明日予定してくれている人にどうやって連絡しよう』
そんなことを考えながら交番に向かった。
交番は人がいなかった。
ノックをしても、インターホンを押しても反応がない。
中の電話を使って案内の番号に電話をしてみた。
どうやら怪我の伴う大きな事故の対応で留守にしているらしい。
その人が交番に戻るのは相当時間がかかると返事を受けた。
交番から見えたバイク屋はゴールデンウィークで休業していた。
とにかく電話を貸してもらいたかった。
水が飲みたいし、夜を明かしたい。
電話番号を覚えているのは実家の番号だけなので、実家に助けを呼ぼうと思った。
バイク屋の近くにガソリンスタンドがあった。
そのスタッフの方に電話を借りようと事情を説明した。
「座席、思いっきり引っ張ったらこじ開けられるはずやし、手伝おか?」
正直なところ、僕自身が一番求めている回答だった。
座席が壊れるリスクを背負わせる対応になるので、お願いは出来なかった。
ガソリンスタンドのスタッフの方は力強く座席を引っ張って、僕の腕が入るだけのスペースを開けてくれた。
鍵を取り出すことができた。
ガソリンスタンドのスタッフさんには感謝してもしきれなかった。今までで一番頭を下げた。
こうして無事にこの記事を書くことができている。
コンビニのスタッフさん、警察官の方、ガソリンスタンドのスタッフさんのおかげで日常に戻ることができた。
ゴールデンウィークに働いてくれている方のおかげさまで僕は平穏を取り戻せた。
スーパーヒーローって案外近くにいたんだな。
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