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思い出のトマトスパゲッティ

思い出の味は何ですかと聞かれるといくつか頭に思い浮かべるのだが、その中でも思い出の強い食べものがある。
僕の幼いときの思い出の味、トマトスパゲッティである。

僕が小学校の頃、両親は共働きであった。仕事で家に帰るのが遅いときがしばしあった。
帰りが遅くなるときは、母方の爺ちゃんの家によく泊まっていた。

爺ちゃんは、戸締り厳しい人だった。
家の全ての鍵を指差し確認をしながら漏れがないようにしていた。
そんな姿を僕と弟はよくモノマネをして、指差し確認ごっこをしていた。

爺ちゃんの食事スタイルは独特であった。
キムチ納豆ご飯を食べ終わったお茶碗に牛乳を入れ飲んでいたのを覚えている。
スーパーで売っているカップのかき氷の真ん中をほじってその中に牛乳を注いで食べるという
今の僕のスタンダードなスタイルを教えてくれたのも爺ちゃんである。

爺ちゃんの家に泊まった日の夜ご飯は決まってトマトスパゲッティだった。

婆ちゃんの作るトマトスパゲッティは、ミートソースとパスタがこれでもかというぐらいに絡み合って何とも言えない美味しさだった。

トマトの甘酸っぱさとひき肉のゴロゴロ感は子供ながら大満足だった。
けれども、泊まりに来るたびにトマトスパゲッティで正直あきあきしていた。

月日は流れて僕と弟が小学校を卒業する頃には、爺ちゃん家に泊まりに行くことも無くなった。

僕が、社会人4年目の頃、爺ちゃんは病気で亡くなった。婆ちゃんや母さんはとても悲しんでいた。
僕も、爺ちゃんが亡くなってからトマトスパゲッティを見ると、爺ちゃんを思い出してしまう為どこかトマトスパゲッティを食べるのを避けていた。

今もまだトマトスパゲッティは食べれていない

コロナが起きて、生きることのありがたみを感じる日々を送る中でふっと思い出のトマトスパゲッティを食べたいと思うことがある。

今度、婆ちゃん家に行ったときは思い出のトマトスパゲッティを食べたいと思う。

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