部活がつぶれた後の思い出
今回のかきあつめのテーマは「部活の思い出」。
前々から編集会議でやりたい!と言っていたテーマだったのだが、私の正式な部活経験はたった1年半しかない。
十数年前、中高一貫校に入学した私は水泳部に入部した。
それまで唯一習ったことがあるスポーツが水泳だけだったし、当時は泳ぐのが好きだった。それに「運動部に所属している自分になりたい」という変な憧れもあった。
入る前から分かっていたのだが、学校にはプールがなかった。そのため、週3で近くの区営体育館のプールまで通い、残りの週2は校内ひたすら筋トレをするというなかなかハードな部活であった。
外部施設への引率が必要だったため、顧問教師の負担がハンパなかったのだろう。人が集まらないこともあり、中2の夏に水泳部は廃部になった。
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廃部の可能性が出てきた当時は、無理やり新しい部員を入れて廃部を防ごうとしたり、顧問を恨んだりしてみた。
私が思うに、水泳というのは非常にストイックなスポーツで、ひたすら自分との闘いである。小学校のときに通っていたスイミングスクールで一通り泳ぎ方は習得しているのだから、あとは少しでも早く泳げるように練習するのみ。それに水中にいるだけで、必要以上に体力が削られる。
楽しいのは新記録を更新できたときくらいで、私はいつも泳ぎながら「あと何本(25mの往復が1本)で帰れる」ということばかり考えていた。「なんで泳いでいるんだろう」といつも思っていた。
関東大会に出場しているレベルに泳ぎが速い同級生にそう打ち明けると、「水泳ってそういうもんだから」と銀シャリの漫才のような言葉が返ってきた。
その時にわかったのだが、その友達は水泳に向いていて、私は水泳に向いていなかったのだ。
そんなことだから中高6年間も続けられるとは思っておらず、廃部が決まったときは少しホッとした。
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しかし、中2の2学期になり、いざ部活がなくなってみると、想像以上に寂しかった。
授業が終わって掃除して。……「え?私もう帰るの?」みたいな。
周りのみんなが部活ぎに着替えていそいそと部活に向かう中、トボトボと一人で駅に向かって歩く日々。まるで、たった1時間でお開きになる飲み会に参加したときみたいに消化不良の毎日を送っていた。
一方、同じ水泳部の仲間はというと、早々に別の部活に入り直していた。大人になった今考えれば、まだ中2なんだしすぐに違う部活に入ることもできたと思う。
でも当時は、部活ごとに固まっている仲良しグループに入れる気はしなかった。それに、何かが得意なワケでも運動神経が良いワケでもない自分が、途中から新しいことを始めてうまくやれる自信がない。当時仲が良かった友達は、剣道部とバトン部と理科部で、どれもやっていける気がしなかった。
(そんなことだから今でも学生時代の友達が少ないし、同窓会に行っても人を選んで話すのだ。……まぁ、その話はやめておこう。)
結局、家に帰っても「あらもう帰ってきたの?」的なことを母に言われるのが嫌で、池袋のロフトやCDショップで時間をつぶしていた(家に居場所がないサラリーマンのおっさんのよう)。
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そんな暗い青春時代に光が差したのが、お笑いだった。
ほとんどバラエティ番組を見せてもらえないまま中学生になったので、当時やっていた「はねるのトびら」「エンタの神様」などのお笑い番組がすごく新鮮だった。世の中にはこんなに楽しいものがあるんだって。別に掃除が終わった後、すぐに帰ってもいいじゃないかって。
本格的にお笑いにはまってからは、家でアンタッチャブルさんの漫才ネタを一言一句書き起こして、なんなら暗記。そして、深夜になればフリートークの勉強と題して、くりぃむしちゅーさんや爆笑問題さんのラジオを熱心に聴いていた。「関西の芸人さんのネタはツッコミの言い回しが参考にならない」とかぶつぶつ言いながら。非常に暗いが、これがいわゆる一人お笑い研究部の始まりである。
その後、高校生になるとネットの掲示板で芸人の相方を探し、放課後はネタ作りと漫才練習、お笑いライブ出演に勤しんだ。
人とは少し違うが、なかなか充実してた部活の思い出になった。廃部になって寂しい思いもしたが、結果的にやりたいことができた。
そもそも、中1の4月に自分が向いている部活を選ぶことは難しい。自分の場合は廃部という形で強制終了となったが、部活は合わなかったらやめてもいいはずだと思う。
今はどうかは知らないが、さわやかにスポーツの部活を続けることが正義で、「○○部サイコー!」みたいな風潮ってなんだったんだろう。途中でやめることは、そんなに根性無しだろうか。
そういった「合わなくても途中でやめることは悪」という風潮が、ブラック企業から逃げ出せない社会人を形成してはいないでしょうか(知らんけど)。
ただ、どこか普通の青春に憧れていたのか、大学に入ってからテニスサークルに大事な4年間を捧げたのは内緒である。
編集:彩音さん
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