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中妻式心意六合拳教伝(3) 「龍」とは何か?

なぜ、蛇は前進できるのか?

この動画はすごい。
物理演算エンジンを使って、蛇の動きをシミュレート。

単にうねるだけでは前進しない。
身体の曲がっているところを宙に浮かせることで前進している。

つまり「人間と同じ」なのだ。
人間も、両足を地につけていたら前進できない。

心意六合拳の「十大形」は、鶏、鷹、鷂、燕、龍、蛇、虎、馬、猴、熊。

このうち「二足歩行」は、鶏、鷹、鷂、燕。
「四足歩行」は、虎、馬、猴、熊。
「どちらでもない」のが、龍、蛇。

「龍」と「蛇」は、手足を使わず、「背骨」だけで進む。

「蛇」はまだ理解できるが、「龍」とはなんだろうか。
架空の動物を拳に入れてどうするつもりか?

これは「鶏」から「恐竜」を観るのと同じで、「龍」から別の動物を観る必要がある。

蛇は地上のみを這うが、龍は中空を自在に泳ぐ。
龍は蛇と異なり、手足が一応あるが、推進には使っていない。

そういう動物は実在する。
ただし、空中ではなく、水中に。

一番「龍」っぽいリュウグウノツカイを紹介したが、大半の魚類はこれと同様に、「背骨のうねり」だけで進む。
また魚類のみならず、爬虫類では魚竜やモササウルス・ティロサウルス、哺乳類ではクジラ類も同様だ。

(なお、水生哺乳類は魚類と異なり、背骨を横方向ではなく縦方向にうねらせる。このへんは哺乳類の特性かもしれない。
人間の背骨も、横方向よりは縦方向のほうが動きやすい。横方向にバサロして推進できる人は、私はちょっと見たことがない😅)

動物の歴史の中でも、非常に大きな分化が「無脊椎動物」と「脊椎動物」の分化だ。
「背骨」は我々脊椎動物の存在の根幹に関わり、最も原初的なものである。
故に、背骨に潜在するエネルギーはものすごい。

蛇は驚くほど進むのが速い。
リュウグウノツカイも、前掲の動画で動きがかなり速いのがわかる。

魚類の中で最も速いのはバショウカジキだと言われており、時速100kmにもなるとのこと。

これほど速いのはなぜか。
それは「背骨のうねり」が「水」を捉えているからである。
自力だけで進もうとせず、周囲の「水」を捉えている。
蛇も同様。背骨のうねりで「地面」を捉えている。

つまり、背骨は自分を支えるとともに、「周囲」をどう捉えるかの鍵になる。
武術的に言えば「気」を捉えることと関係してくる。

背骨により深く観を入れていけば、まだまだ多くの発見があるだろう、という予感がある。

ただ、一点注意しなければならないのは、魚のような「背骨のうねり」を物理的に行おうとすると、ちょっと間違った方向に行きかねないという点である。
魚は水中だから、うねるだけで進める。
陸上二足歩行の人間が、背骨を物理的にうねらせても進めるわけではない^^;

これも実は「足裏」と関係がある。
物理的にうねらせるのではなく、「背骨のうねりの気配」を「足裏」で捉えるような感性が大事になってくる。

古い身体にアクセスした後、現代日本人の身体に戻ってきたときに何が起こるか、ということをよく観る必要がある。

天龍武術会の石井敏先生が著した心意六合拳の解説書によると、

「龍には捜骨の法がある。龍形の精義は“善變”(善く変ずる)にあり、一身が三翻九転する。勁法は“裹”(か、つつむ)であり、勁は体を捩じり脊柱を通過し、鍛錬により内勁を得る。斂勁入骨の修練方法は“洗髄易筋、捜骨之法”といわれる」

とある。

「髄を洗い、易筋を行い、骨を捜す」。
まさにこの通りだろうと思う。

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