「肚」は観えているかーー「一文字腰」と「馬歩・担石・搬石」
内田秀樹先生に「一文字腰」を教えていただいてから、なかなかできず苦戦していたが、ようやく「音を立てずに左膝を地面につける」ことができた^^
これで合格ラインなのかどうかはわからないが、とりあえず最初の条件はクリア。ちょっとうれしい😊
「一文字腰」は中国武術の「馬歩」とは似て異なる。
一文字腰も馬歩も「肚」…「腹」よりもさらにその下、地面との間の空間を練る意味では共通している。
ただし、馬歩は「坐」、尻・腿裏・膝裏・脹脛で構成される「座面」を観るのに対し、一文字腰はそれが全部股の下に集まってくる形になる。
この違いが異なる経験を生むため、馬歩に慣れている私も、一文字腰には苦戦した。
一文字腰に似る中国武術の練功法としては「担石」「搬石」がある。
「担石」は、肩幅に足を開き臍下に漬物石くらいの石を持つ形で、馬歩を経由して、そのまま手に持った「石」を地面に置き、ゆっくり元の姿勢に戻る。
「搬石」は担石を左右に振る形。
まず手に持った「石」を右に寄せていって右足の前に置き、ゆっくりと元の姿勢に戻り、次に「石」を左足の前に置き、また元の姿勢に戻る。
担石・搬石は、実際に石を持って行うのもよい練功法である。
ただいずれにせよ「坐」が要訣となり、一文字腰と似て異なる経験を生む。
一文字腰と馬歩・担石・搬石の間には、日本武術と中国武術の「肚」の扱いについての文化的相違があるように感じられ、大変興味深い。
ただどちらも「肚」に向かわなくてはならない点は共通している。
「肚」に向かうのだということがわからないと、単に腿や膝で突っ張って耐えるようなやり方をしかねない。
そうすると、身体がこわばってしまうか、悪くすると脚を壊してしまう。
ここは指導者が、相手は「肚というものがわからなくなっている現代人」だということを認識して指導しなければならない。
ところが、よもやよもやだ。
指導者のほうも「肚」がわからなくなってたら?
これは、現代では十分あり得る。
昨日この街に住み始めた人がこの街のガイドをするに似る。
「馬歩」や「一文字腰」のような本質的な練功法ほど、きちんと本質を理解する指導者に指導を受けなければ、身体を壊す危険がある。
昔はみんな「肚」が観えていたから、ただ「やれ」で事足りた。
現代では、その基礎的条件から紐解かなければならないということを認識しなければならない。
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