人間ーー道具を持った動物
たまたま「カルノタウルスに羽毛はなかった」という記事を見かけた。
カルノタウルスの前足は特徴的で、ティラノサウルスよりもさらに退化(あるいは「洗練」)し、肘もなくなりほとんど残滓だけになっていて、何の役割も果たしてないと思われる。
二足歩行のひとつの方向性と考えられる。
上野の国立科学博物館には「しゃがんだティラノサウルス」という、世界的にも珍しいポーズの復元骨格があるのでぜひ見ていただきたい。
実にいいしゃがみ方をしている^^
ここではティラノサウルスの前足の使い方として「しゃがみ状態から立ち上がるときに軽く地面に触れて使った」と考察されている。
「新恐竜」という空想図鑑がある。
「もし恐竜が絶滅しなかったらどのような進化をしたか」を考察したものだ。
この中には「グルマン」や「マウンテンリーパー」といった、前足が完全に消失した種がいくつか提示されており、なるほどと思わされる。
こうした二足歩行恐竜を見ると、二足歩行は、前足が退化するというより、「前足と後足が融着する」方向性のように感じられる。
もちろん物理的にではない。
後足が、前足の能力をどんどん巻き取っているような感じだ。
しかし、人間は「道具」を手に持つことで、前足に別の役割を与えた。
「道具」を得た人間は、これまでのいかなる生物とも異なる方向、前足=手の能力を高める方向に進化した。
後足は歩くのに必要なためなくなりはしないが、人間の自己認識としてはこの「ペンフィールドのホムンクルス」のように、かなり優先度が下がってしまっている。
さらに、人間存在の前提となった「道具」も、どんどんレイヤーが増え、現実との接点が希薄になっている。
6600万年前の巨大隕石激突のような大カタストロフィが来て人類文明が大幅に後退するようなことがあったら、スマホのフリック入力を行う能力が何の役にも立たなくなることは疑いない😅
武術が問題にするのは常に「現実」だ。
現実と向き合うためにあるのが武術だ。
現在光岡英稔先生は「道具と人間の関係」をテーマにしているが、ちょうどこの折、全長3.7mの大杆子を入手できたのは僥倖だった。
このプリミティブな重量、まさに「現実」。
形意拳や八極拳の名士が「大杆子をやるべし」というのも頷ける。
昨日の板橋武研でも、大杆子はまあ体験版として^^;、「棍術」「槍術」の基本を見直す方向でやってみた。
皆様、それぞれに掴んだものがあったようだった。
板橋武研ではしばらく「棍術」「槍術」をやってみようと思いますので、ご興味ある方はお問い合わせください^^