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走る、を分解する

自分の走りはどんな物から構成されているのか、走りに影響を与える要素は何だろうか?

「走る」という行為はシンプルだけど、深みがあります。

少し速く歩くとすると走るになる。通勤時に駅までの道を走る時も、気の向くままにジョギングしてても、ここ一番のレースで真剣勝負する時も、「走る」という事自体の本質は変わりません。

「走る」という一言で表現されますが、走れば走るほどに、走るという行為は複層的な要素で構成されているのだと思うようになりました。

それらの要素達がバチッとハマったときに、自分の思い通りの走りができます。一方で何かが欠けているときにはうまく走れません。

「走る」を分解して書き下し、それを構成する各要素を整理することは、「走る」という行為の本当の姿を、より多くの方々により理解してもらえるのではないかと思いました。

そしてそれは、ランニングと付き合っていく上で大事なことのような気がします。何が走りに影響するのかということを意識できれば、ランニングをより立体的に見ることにつながり、一見シンプルなランニングの奥深さに気づくかもしれません。

分解した全体像

走る、を分解するとこんな形になると思います。
走る=心技体+道具+環境

コメント 2020-06-27 152702

一つずつ説明します。

自分自身か自分自身以外か
自分のことか、それ以外にまず分かれます。自分の内面とそれ以外とも言えます。

自分自身-心技体
自分自身でも体だけでは走れません。心と技術が体とともに、走る行為を支えます。

1: 自分自身-心

メンタル・気持ちです。すべての中でこれが一番大きいと思います。

走りだそう・走り続けよう、今週も走ろう、という気持ちがなければ、走れません。

ダイエットのためのジョギングでも、ガチのレースでも気持ちがついてこなければ、足は前に出てくれません。逆に気持ちがあれば、足はギリギリまで動いてくれます。気持ちは前向きに強く、そしてコンスタントに保っていきましょう。気持ちもマイペースで。

走る気持ちを生み出してくれるのはモチベーションです。なんのために走っているのか、を言語化しておいて、気分が乗らないときには思い出しましょう。

2:自分自身-技

フォームや走り方です。

ランニングは自分の体しか使わないので、体の使い方次第で走りが変わります。走りの効率・ランニングエコノミー、等、より楽に長く走るための体の使い方、は大切です。

具体的な情報やコツは、多くのコーチやランナーの方がネットで発信しているので、探せばすぐみつかります。我流で闇雲に走っているのと比べると、フォームを意識して走ることで、大きな違いを感じられるはずです。より楽に走れることは、より継続しやすくなることにも繋がります。

3-1:自分自身-体-走力

走る力。
その定義は色々ありますが、私は「走力=持久力+脚力」だと考えています。

持久力は長い時間体を動かせること。心肺機能や体力・スタミナです。これらは繰り返し走ることで徐々に、しかし確実についていくので、継続がそのまま自信につながります。

3kmしか走れなかったのが5km走れるようになった、のは嬉しいですよね。持久力の向上が形になってすぐに実感できるのはランニングの特徴であり、それが新たなモチベーションを生んでくれます。

脚力は「脚の強さ」です。脚の筋力や強靭さといった意味です。
マラソンでは「脚が売り切れる」という言葉があります。これは、「(体は動くけど)脚はもう動かない」という状態です。限界近くまで追い込んで走ると、体と脚が別々に感じることがあります。体はまだ行けそうだけれど、脚の力が入らなくなるという状態です。

脚力は、長く走り続けることに加え筋トレでも上がっていきます。これも多くのコーチの方々がトレーニング方法を発信しているので、ネットや書籍を探してみて下さい。

持久力と脚力がバランスよく上がっていくと、良い走りが長くできます。

3-2:自分自身-体-調子

コンディションのことです。

人の体は自分が思う以上に調子の上下があります。普段生活しているだけだと実感はしにくいですが、走っているとそれがよりリアルにわかります。微妙な調子の上下が、走ると浮き出てくる感じです。

走り出すと「あ、今日は体が軽いな(重いな)」と感じることがありませんか。「体感的には頑張っているのにペースがいつもより遅い」とか「楽に走れているけど、いつもより速かった」等。

「自分の通常ペースとの差分」や「体感ペースと実ペースの差分」が大きな時は、コンディションが変調している時です。疲れが溜まっている、とか、意外と疲れてないとか。そこにはなにか原因があるはずなので、因果関係を探してみると今後に役立つかもしれません。例えば、睡眠が足りないと調子が極端に落ちる、とか、朝バナナを食べると調子が良い、とか。

そこから自分の調子を上げるスイッチを見つけられるとランニング以外でも役立ちます。例えば、仕事で大事な週には、そのスイッチを意識して押すと調子が整います。

私の場合、走り始めはいつも重いので、2-3km走ってからの体感でコンディションを把握しています。2-3km走れば体が動きだし、通常それ以降は楽に走れるのですが、全然上がらないときもあります。そんなときは、寝不足か食べ過ぎなことが多いので、反省しながら残りの距離を走っています。逆に、仕事等で大事な週にはそれを(寝不足と食べ過ぎ)避けるようにしています。そうすることで調子が上がり、仕事面にも良い影響があります。

調子(コンディション)は、走るとよくわかります。自分の調子を上げるスイッチも理解しておきましょう。

4:自分自身以外-道具

何を身につけて走るかです。

シューズ・ウェア・アクセサリなど。多くの優れたランニンググッズが販売されています。ランニング専用に作られているものは、ランニングをより楽に快適にしてくれます。ランニングを今後も続けていきたい、という方は購入することで、更に続けやすくなると思います。

一方でランニングの良さは「特別な道具が必要ない気軽さ」もあると思うので、最初から道具を揃えるよりも、まずは少し走ってみてから、自分の走りに合う道具を探す、というほうが良いと思います。

一番悲しいのは「道具は揃えたけど継続できなかった」というパターンです。シューズを始めとした良い道具の価値は、ある程度走ってから購入することでその良さが強く実感できます。

寿司を食べたことない人がいきなり特上寿司(良いシューズ)を食べてもその価値(美味しさ)がわかりにくいように、まずは並寿司(いつものシューズ)を食べてみてから、ステップアップで上寿司・特上寿司と進んだほうが、その価値や違いも具体的にわかりますし、より長く楽しめると思います。

ランニング道具の世界も奥が深いです。いきなり特上寿司を食べるのではなく、まずは自分の走りをある程度理解して、並寿司から食べていったほうが、その世界をより長く楽しめると思います。

道具は良いものですが、まずは今あるもをうまく使ってみて「自分の走り」がなんとなく分かってきてから、道具の世界に飛び込みましょう。

5-1:自分自身以外-環境-気候

天気・気温・風向・風速、等の気象条件です。気候がランニングに与える影響はとても大きいです。冬のマラソンと夏のマラソンは別のスポーツ、と言われているくらい。暑くて向かい風だと走りにくく、涼しく追い風だと走りやすい。

長距離ランニングは屋外スポーツなので気候の影響を大きく受けます。降っている雨を止ませることはできせんが、その影響を軽減する工夫はあります。


気候は自分ではどうしようもできませんが、それに対する備えや工夫はすることができます。様々な気候の中で走ることも、気分が変わって面白いときもあります。気候とうまく付き合いながら走ってきましょう。

5-2:自分自身以外-環境-コース

どんなコースを走るか、もランニング体験に大きく影響します。やはり景色が良い・自然が多いコースは走っていても楽しいし疲れも感じにくいです。

一方で、普段のジョギングは自宅が起点となるので、なかなか風光明媚なコース取りが難しい方が多いと思います(私もです)。そんな中でも少しでも走りやすいコースを見つけることはできると思います。信号が少ない・交通量が少ない・歩道が幅広い、など。

交通量や信号は走る上で意識せざるを得ないので、これらが少ないコースだとストレスが少なく走れます。僅かな違いでも走りやすく感じることがあります。

いつも走っているコースから一本奥に入るだけで、良いコースが見つかることもあります。もしまだ1パターンのコースしか試してないなら、より走りやすいコースを求めて、いつもと違う道を走ってみるのも良いかもしれません。1ブロックだけ違う道でも、交通量や道の作り(歩道や信号有無)が違うことはよくあります。

また同じコースでも時間帯によって交通量や走りやすさも違います。より良いコース☓時間を見つけましょう。

「走る」の5つの要素

「走る」を5つの要素に分解して説明しました。

走る=心技体+道具+環境

改めてですが、この中で一番支配的なのは「心」だと思います。走ろう・走り続けようとする気持ちが、ジョギングでもレースでもとても大事です。それが脚を一番動かしてくれます。

皆さんご自身が走るときはもちろんですが、マラソンや駅伝中継でトップ選手の走りを観るときにも、この5つの要素で観てみると、ランニングの違った一面が見えるかもしれません。

ご参考になれば幸いです。

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小池 中人/Nakato Koike
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