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「現状維持は後退である」理由

お肉を放置すれば腐る。
熱々のコーヒーはいずれ冷めてしまう。
それを防ぐために人間は肉を冷凍したり、コーヒーを保温容器に入れたりします。


当たり前ですがここに非常に重要な法則が隠されているのです。

この法則の名は「エントロピーの増加法則」と言います。



まず、これがどういう法則なのかというと、

世界のあらゆる物質(人間の細胞を含めて)は分子から構成されています。
そして元々、その分子は図1(左)のように綺麗に配列されています。

しかし、それは時間とともに図1(右)のようにバラバラに分裂します。

しかし、あらゆる個体はこれに抵抗することができます。

具体的には、お肉を冷凍すること、コーヒーを保温容器に入れることでこの分裂を「遅らせる」ことができます。

こうして世界のあらゆる物質は分裂し、こうした分裂を遅らせるという現象でなりたっているのです。



さてこの現象は人間を含む地球の「生命が生命であり続けられる」理由でもあります。

その理由は「なぜ生命は一生分の食事ができないか」から始まります。

例えば、食べ放題に行って、たらふく食べて、「今日は一生分食べた!!」という経験はないでしょうか。
食べ過ぎたらそう思うけど、明日になったらもうちょっと食べたらよかったー、、、。とちょっぴり後悔したりもします。


でも、その「一生分食べた!」というのは原理的に不可能なのです。
なぜなら、生命の分子は最初は整列されていますが(食後すぐ)、ある一定時間が経てば分裂します。(空腹)
だから、生命は生きている限り、ずっと食事をしなければなりません。


つまり、エントロピーが増大するこの地球において、人間は常にエネルギーを摂取し、細胞を入れ替えているのです。
そうして”結果として”変化していないように見えるのです。


ここでやっとタイトルの説明に入ります。(笑)

もう皆さんお分かりだと思います。
人間は短期間に一生分努力することはできません。蓄えた知識知恵を含むあらゆるエネルギーはやがて陳腐化します。
いくら賢明な方でも努力し、また自分の知識を循環させなければなりません。
つまり、大げさな話、生命(人間)は努力しないと死んでしまうのです。


以上、現状維持は原理的にありえないというお話でした。

【参考文献】

■高橋祥子『ビジネスと人生の「見え方」が一変する生命科学的思考』ニュースピックス、2021年

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