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デジタルセールスルーム(DSR)を考察する
※この記事は約8分で読めます
ここ数年、アメリカを中心とした欧米でのセールステックマーケットの調査をしていると「デジタルセールスルーム(DSR)こそが営業の未来だ」という論調のレポートをよく目にします。
ここでは、海外のいくつかの記事と、最新のDSRマーケットレポートを参考にしながらデジタルセールスルーム(DSR)がどのようなもので、それが私たち営業にどのようなインパクトをもたらすのかを書いていきたいと思います。
簡単に自己紹介
改めましてみなさんこんにちは。株式会社マツリカ BizDev(事業戦略/開発室)、Sales Science Lab, Inc.の中谷と申します。
これまで営業、営業マネージャー、営業組織コンサルタント、セールステックの導入~活用支援と、様々な角度から一貫して営業組織に携わってきました。
note, Twitter, LinkedIn等のソーシャルメディアでは主に営業・世界のセールステック事情について発信をしております。(フォローしてください!)
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営業およびセールステックの知見を極めたい気持ちもあり、昨年よりアメリカに移住をしました。
現在、社内新規事業責任者として本noteにまつわる新規セールステックプロダクトのプロダクトオーナーを務め事業立ち上げに奔走しております。
デジタルセールスルーム(DSR)とは
簡単に説明すると、営業パーソンが見込み顧客と情報や営業コンテンツを共同し、効率的な営業活動と購買活動を行うことを目的としたオンラインスペースのことです。
デジタルセールスルームでは、営業パーソンと購買者(買い手)がリアルタイムでチャットのやり取りをしたり、動画メッセージ、資料、タスク、メモの共有などによってオンデマンドでの交流を行うことができます。
下の画像のように、営業パーソンが提案先の顧客に対し提案/購買検討専用マイクロサイト(簡単なWebサイトのようなもの)を作成しURLベースで共有する形です。
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これにより、営業も購買者も「nヶ月前の商談でなに話したっけ?」、「あの資料どこいったかな」といった情報管理で困ることが減ったり、コミュニケーションスピードがアップしたり、購買プロセスにおいて社内合意が難しく上申が棄却されてしまうリスクを低減できるなど、効果は多岐に渡ります。町内会の回覧板のようなものです。
またこれにより、購買者側社内の関与者も商談の一次情報に触れられ検討が楽になり、営業側の上司やチームメンバーへも一次情報の展開が可能になります。(こうなると「SFAに記入が面倒」という問題は解消される可能性がありそうですね)
営業と購買者の関わりの変遷を考える
元々商習慣は大昔(縄文時代あたり?)に狩猟で獲得した肉と、稲作で得た米の物々交換などの等価交換から始まっていると思います。
それはGive & Takeの関係性でしたが、経済が発展し量産が可能になったりモノに付加価値が付き、貨幣価値が生まれました。そうすると双方交渉術を進化させることによってGiveをより大きく見せ、大きなTakeを取ろうとするようになりました。
売り手が強くなれば押し売り、騙し売りが横行する。一方で、顧客が強いパターンにおいては過剰要求に営業は疲弊することもある。つまり営業と購買者はいつの時代もWin-Winになることが難しく歪な関係性であると言えると思います。
それは近年の情報革命によってより複雑化し、「顧客の心理や組織力学をハックする」、「営業を信頼せず遠ざける」といった両者の距離をより遠ざけるようになりました。
そうなると、営業と購買における主役はモノ(製品の価値)ではなく「どう上手くやるか」になってしまいます。
本来、営業は顧客を成功させ、新たな価値を生み、両者が幸せになる。そんな尊い営みであるはずです。
この数十年では、セールステックやセールスノウハウは「売上が見込める投資」なのでどんどん資本が投下され進化してきた一方、購買者はそれを主務にする人材はほとんどいないのでノウハウが貯まらず、また「一円でも安く買いたい」特性からソリューションはなかなか生まれてきませんでした。
つまり情報・経験・武器の格差は広がる一方でした。
そんな時代に、コロナ禍で商談は大きくデジタルにシフトし営業と購買者の情報がデジタルに蓄積しやすい時代になりました。
このタイミングで両者のバランスを最適化し、Win-Winになるためのソリューションが生まれているのは当然の流れと言えると思います。
バイヤーイネーブルメントとDSR
バイヤーイネーブルメントとは、買い手(購買者)がより効果的かつ自信を持って購入プロセスを進めることができるよう、必要な情報やサポートを提供することを指します。
適切な情報を適切なタイミングで提供し、購入プロセスにおける摩擦を減らし、問題に対する解決策を提供することで、購入者がより購入しやすくなるようにすることです。
デジタルセールスルームがバイヤーイネーブルメントにおいて重要な役割を果たすのには、以下のような理由があります。
シームレスなバイヤージャーニー(購買体験)
DSRは、摩擦のないバイヤージャーニーを提供し、気持ちよい購買体験を実現することができます。
パーソナライズされた体験
DSRは、お客様一人ひとり(個社)のニーズに合わせてカスタマイズすることができます。営業担当者は、お客さまのご要望に応じた商品の提案やソリューションを提供することができ、購買体験を向上させることができます。
安全でプライベートな交流
DSRは、買い手と売り手が世界のどこでも連携して協力できるように、安全で保護されたバーチャルな空間を提供します。
使い勝手の良さ
DSRは売り手にとっては設定しやすく、買い手にとってはすぐに利用できる。(買い手はアカウント作成不要)
集約された実用的なインサイト
利用ログから、買い手と売り手の活動、買い手の好み、売り手の次善の行動に関する詳細なインサイトを得ることができます。
これらのようにデジタルセールスルームは、購買プロセスを合理化し、パーソナライズされたリアルタイムのサポートを提供することで、バイヤーイネーブルメントを促進する重要なツールとなっています。
バイヤーイネーブルメントについて詳しく学びたい方はこちらのレポートも参考にしてみてください。
加熱するDSR市場
デジタルセールスルームの利点から、このプラットフォームの市場が急速に拡大しているのは当然のことのように考えられます。
企業は、デジタルセールスルームが顧客エンゲージメントを向上させ、売上を伸ばし、顧客体験全体を向上させる可能性を認識し始めています。(特に欧米では)
その結果、GTM Partnersの調査では2022年度に約300%の市場拡大が報告されています。↓
「Gartner Future of Sales 2025」レポートによると、2025年までにサプライヤーとバイヤー間のB2Bセールスインタラクションの80%がデジタルチャネルで行われるようになり、購買嗜好の不可逆な変化を意味するとされています。↓
ベビーブーマー世代(アメリカで1950-1964年頃)が引退し、ミレニアル世代が意思決定の重要なポジションに成熟するにつれ、デジタルファーストの購買姿勢が主流になりつつあります。
顧客がデジタルで学習し、購入する機会が増えているため、販売組織はさまざまなデジタルプラットフォームで顧客と関わり、対話し、取引できるようにする必要があります。
このような変化により、従来の販売形態を再現するデジタルエンゲージメントツールの導入が必要となり、営業は顧客やその意思決定者と効果的に関わることができるようになりました。
DSRを使うメリット
営業担当者がデジタルセールスルームを利用すべき理由は数多くありますが、まず、顧客と直接関わることができるプラットフォームであるということが最重要だと言われております。
従来のオンライン上での情報収集や検討では、お客様が一人で購入プロセスを進めることが多かったのですが、デジタルセールスルームでは、リアルタイムでお客様と対話することができます。
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そのため、お客さまに購入プロセスを案内し、疑問や質問に答え、お客さまとの関係を構築することができます。
第二に、デジタルセールスルームは、パーソナライズされた購買体験を可能にします。
営業担当者は、お客さまの好みやニーズに応じて、一人ひとりに合ったアプローチをすることができます。このようなパーソナライゼーションは、信頼とロイヤリティの構築につながり、売上と顧客維持の向上につながります。
さらに、デジタルセールスルームでは、柔軟な対応が可能です。いつでも、どこからでもアクセスできるため、営業担当者にとっても、お客様にとっても便利な選択肢となります。
この柔軟性は、営業プロセスそのものにも及びます。
営業担当者は、お客様からのリアルなフィードバックに基づいたアプローチを容易に行うことができ、より効果的な営業プロセスを実現することができます。
このDSRの価値は「使ってみて初めて理解できるイノベーション」とForresterでは言われています。↓
なお、日本では「お客さんがアクセスしてくれない(嫌がられる)のでは」というセールスパーソンの声がしばしば聞かれますが、こういった事象こそが日本企業のDXの遅れを表わしているようにも見えます。
まとめ
デジタルセールスルームの台頭は、顧客行動の変化とテクノロジーの進歩によって、セールスプロセスが大きく変化していることを表しています。
顧客がより多くの情報を入手し、力を持つようになるにつれ、営業プロセスも彼らの変化するニーズに合わせて進化していく必要があります。
デジタルセールスルームは、お客様とのリアルタイムでパーソナライズ(個社・個人に最適化)されたエンゲージメントを実現するプラットフォームを提供することで、そのソリューションを提供します。オンラインショッピングの利便性と伝統的な販売手法の直接的な関与を組み合わせた、販売の進化における次のステップを象徴するものだとされています。
このようなプラットフォームの市場は今後数年で大きく成長すると予想されており(実際2022年に大きく市場成長したように)、今こそ営業組織はこの変化を受け入れ、デジタルセールスルームのパワーを活用する時と言えるのではないでしょうか。
セールスの新時代に突入した今、適応し、革新する者が成功するでしょうし、またこのようなDSRツールの利用ユーザーを見ていると「売れる人は売れ、売れない人はより売れなくなる」スキル格差が明確になってきているようにすら見えます。
さいごに
日本初のデジタルセールスルーム「DealPods」(ディールポッズ)にご興味を持たれた方はこちらからデモ予約/お問い合わせいただけましたら幸いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1725832552-NEtV6RfyTmixBz7aKo30AjGb.png?width=1200)
その他参考
https://www.g2.com/articles/digital-sales-room-software-trends-2023