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「スイマーズ」ジュリー・オオツカ


2年前に母親を見送った身にとって、「十年に一冊」の作家、ジュリー・オオツカの最新作はなんとも心揺さぶられる一冊でありました……

《読み終えると、決まったコースをひたすら泳ぐスイマーたちの日常とそれを壊してしまうひびの出現を描く二章が最初に置かれていることの意味が腑に落ちる気がする。どこまでも客観的に、淡々とした口調で、ときにユーモアをも交えて(ユーモアと悲しみはコインの両面だ、とオオツカは言う)語られている本書は、芯のところではひりひりする傷口をむきだしにした母と娘の物語でもある。》(訳者あとがき)

《コロナ禍下におけるアジア人ヘイトには強いショックを受けた、戦争中に日系人として辛い経験をした母がこんな光景を目にしないですんでよかった、とオオツカはあるインタビューで語っている。また、二〇二三年六月、ウィスコンシン州のマスケゴ=ノルウェー教育委員会が、アメリカの視点が欠けているとの理由で『あのころ、天皇は神だった』の授業での使用を禁止したことについて、八十年まえの日系人強制収容の際にはアメリカ社会は無関心だったのに、今回は多くの住民が抗議の声をあげたことに希望を見いだしつつ、日系移民たちの物語を語り続けねばならないという思いをいっそう強くしたと述べている。》(訳者あとがき)

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