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【第5回】相性がもたらす化学反応
「合う合わない」や「好き嫌い」は、「相性」という言葉でくくることもできます。「相性がいい、悪い」など、日常的にもよく使われています。
ちなみに、二人の間における相性のことを、英語でケミストリー(chemistry)と言います。
外資系企業で仕事をしていると、「どうも、あの人とはケミストリーが合わないようだ」とか、「これは単にケミストリーの問題だから、どうしようもない」といった類の会話をよく耳にします。
実は、ケミストリーという言葉には、他にも「化学反応」という意味があり、『文明論之概略』という名著の中で、象徴的な表現として使われています。
「水酸化ナトリウムと塩酸は、個別にはどちらも激烈なもので、金属をも溶かす力があるが、これを化合すれば食塩となって、普段の台所で役に立つ。
一方、石炭と塩化アンモニウムは、ともに激烈な作用をもつわけではないが、このふたつを化合すると気体アンモニアとなり、人を卒倒させる」
(現代語訳『文明論之概略』福澤諭吉著、齋藤孝訳、ちくま文庫)
このように、「ケミストリー」という言葉には、日本語で単に「相性」という表現で片づけられないくらいの、強いメッセージが込められています。
良いほうに作用すれば問題ないのですが、逆に反応すると、強烈な副作用の洗礼を浴びることになります。
つまり、相性が悪い人と何かをするということは、とてつもなく「負の化学反応」を引き起こす可能性がある訳です。
会社であれば、場合によっては、左遷や降格、減給などにつながるかもしれません。最悪のケースは、リストラの憂き目に遭うこともあります。
私が以前在籍した会社が、やむを得ない事情で、リストラを実施した時のことです。
リストラの対象となった面々の中には、優秀な(と、周りでも思われている)社員も数多く含まれていました。
おそらくは、直属の上司(若しくは、その上にいる幹部)との間における、「相性の問題」だったのではないかと思われます(それ以外に、思い当たる節がありません)。
理不尽きまわりないことではありますが、これが現実でもあります。
そこで、改めて「相性」という言葉を調べると、「互いの性格・調子などの合い方」と解釈されます。
更に「性格」は、「人が生まれつきもっている感情や意志などの傾向」を意味します。「性格」が「生まれつき」であることは、容易に想像できます。
相性の悪い人を相手にするということは「生まれつき持っている」性質と相対する訳ですから、一筋縄ではいきません。
まして、相性の悪い相手を自分に合うよう、変えてしまうことなど、ます不可能でしょう。
普段、人は「相性が合いそうもない」と感じたら、無意識のうちに近づかないようにします。
しかし、仕事をしていると、そんな人と「お付き合いをしなければならない」ケースも、当然出てきます。
その場合、「適度な距離を保ちながら、無難に付き合う」以外の対処方法は、残念ながら見当たりません。
次回につづく
(本文は、弊著『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』<幻冬舎ルネッサンス新書>より一部抜粋編集し、
シリーズ化したものです)
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