愛情
青山ファーマーズマーケットに出店するときに原木しい茸がなっている榾木(ほだぎ)をディスプレーにしている。意外なことに、しい茸が木からできているという事を知らない方が多い事もあるからだ。さらに、いわゆるどんぐりのなる木を好んで生えてくると話すと驚かれることが多く、子供限定でしい茸を採ってもらったりしている。
その際に毎回余ってしまうのが原木の榾木だ。我が家は、東京の借りアパートで日当たりも風通しも良いため、これまでしい茸の発生には向いていないと諦めていた。
ところがある日、妻が
「ベランダの原木からしい茸が生えてきているよ!」
と言ってきた。子供達と見に行くと、確かに一つだけだが生えていた。妻になんで生えてきたんだろう?と聞くと、実は僕のいないときに原木が乾燥しすぎないように、バケツで浸水させていたんだという。
「木が軽いなぁって思って漬けたんだよね。可哀そうだからキッチンの洗い桶に水を張ってたまに水をあげていたんだよ」
なるほど、アパートのベランダという事で向いていないと思ってあきらめていたが、しっかりと愛情をかけてあげれば育って実るんだ。そして、しい茸菌の生命力の強さを改めて感じさせられる。
身近な事だが、何事も愛情をかけてあげれば、そのものの持っている底力を引き出せるんだと、改めて実感した出来事でした。