好きな事には叶わない
仲しい茸園のしい茸は、さっくりとした独特の歯ごたえと香りが良いのが特徴だと思っている。ずっと何か科学的な根拠が欲しいと思っていた。ご縁があり、大学時代の同級生の椙山女学園大学で講師をされている保田 倫子(やすだみちこ)先生に仲しい茸園のしい茸の成分について卒業論文のテーマとしてしらべてもらえることになった。そして今回、十二月に『仲しい茸園のしい茸の成分』について卒業論文のポスター発表を聞きに行ってきた。
朝学校に到着すると、卒業論文のポスター発表の準備ができた学生で会場は熱気に包まれていた。女子大という空気にもなじめずに受付に並んでいた所、
「おはようございます!」
と元気な声で後ろから声をかけてくれた。平賀里奈(ひらがりな)さんだ。彼女は、卒業論文のテーマで仲しい茸園の栄養成分の研究に取り組んでくれた学生さんだ。保田先生にしい茸の成分分析について相談させてもらった際に紹介してもらった。
「キノコのことが大好きでキノコのテーマで卒業論文の研究を行いたい学生がいるよ」
ということで、平賀さんが協力してくれることになった。昨日のぎりぎりの時間まで試験をしてデータをまとめてくれていたそう。
「今日は来てくれてありがとうございます!また後ほど!」
と少し緊張していながらも、明るい笑顔で会場へ入って行った。
会場では準備ができ、いよいよ平賀さんのポスター発表の時間となった。
卒業発表のテーマは『仲しい茸園の原木しい茸の成分』。彼女は、この卒論をまとめるにあたり仲しい茸園にも足を運んでくれて、原木しい茸の事や里山の事、原木の事も調べてくれた。猪名川上流の里山としい茸が深いつながりがあり、里山景観を維持していくことに一役買っていることや、日本一と言われる里山の原木を使ったしい茸の成分が、他のしい茸(今回は愛知県産の菌床しいたけと原木しい茸)とどう違うのかという切り口も含めてくれていた。
さて、肝心の調べてくれた成分は、βグルカンとグアニル酸、グルタミン酸、エリタデニン、エルゴチオネインの五つだ。
今回行った実験条件下での結果では愛知県産の菌床しい茸と原木しい茸と比較して仲しい茸園のしい茸には、1.5倍のβグルカンが含まれているとのことだった。βグルカンは、多糖類の一種で、中でも「レンチナン」と呼ばれるβグルカンがしい茸には多く含まれ、レンチナンは抗腫瘍効果や抗炎症効果について学術的にも報告されているそうだ。
正直、どんなデータがでてくるのか不安な部分もあったが、これが歯ごたえや機能性にどう影響するかなどはまだまだ詳しく調べないと何も言えないことではあるが、 仲しい茸園のしい茸にはβグルカンが多く含まれるということがわかったのは意味があると思う。ほっとすると同時にとても嬉しかった。
こんな機会を与えてくれた保田先生および、短い間に本当にたくさんの実験をしてくれてぎりぎりまでデータをまとめてくれた平賀さん、本当に感謝いたします。
発表が終わった後日、彼女になぜキノコのことを卒業テーマで扱いたいと思ったのか、気になったので質問してみた。彼女は
「きのこが可愛いから!」
そう答えてくれた。
やっぱり好きなことには叶わない。