2019年 97冊目『紛争の心理学 融合の炎のワーク』
なぜ選んだのか失念したのですが、とても良い本でした。
学びがいっぱいでした。
最初、読みにくくてどうしようかと思ったのですが、途中から引き込まれて、最後は、終わらないでって思いました。
タイトルからは戦争の話のように思うかもしれません。
人と人が対立する理由は何なのか、それを統合するにはどうしたら良いのか、それを深く洞察しています。
信念対立を、あえて浮かび上がらせて、それを解決します。
なるほどって思う反面、とても高度なスキルが必要だと思います。
素人がすると「融合」できないです。
しかし、この方法にとても可能性を感じました。
ランクとダブルシグナルという考え方があります。
ランクは、個人の持つ力の事です。
すべての人はランクが違うという前提に立っています。
人は平等ではなく、ランクがあるというのです。
そして、自分のランクが高くなると、それが他者に否定的に影響するかに気づきにくくなるという前提に立っています。
例えば、経営者は自分の権力を忘れ、(ここまでやっているにもかかわらず)、部下が不平をいう理由が分かりません。
例えば、高学歴者は、低学歴者が、(冷静さを忘れ)感情的に話をするのか理由が分かりません。
例えば、強い国家は、自らの力が、より小さな発展途上国に与える影響を忘れています。
ダブルシグナルとは、表に出ている言葉と、その裏に隠れている(本人が自覚していないケースが多い)シグナルです。
例えば、ミーティングで黒人が感情的に自分の状況を伝えました。
それに対して、白人女性が感情的に意見をいうのではなく、論理的に話をするようにアドバイスします。
これが1つのシグナルです。
一見、正しく聞こえます。
ところが、この白人女性自身が気づいていないダブルシグナルが隠されています。
それは、「私が正しいので、私の意見に従いなさい」というものです。
ランクが高い白人女性がランクの低い黒人に対して無自覚な行動を取っているわけです。
これを、ランクなどないと表面的な解釈をしても仕方がないのです。
ランクにより、主流派ではなく、周辺部に追いやられている人たちがいます。
居住地など分かりやすいケースもあります。
しかし、心の中で周辺部に追いやらられている人がいます。
彼らが感情的にならないと、主流派にいるランクの高い人は、周辺部にいる人の存在する無視してしまうのです。
ランクは振り払う事はできないとあります。
ランクが犠牲者を生み、加害者を作るのです。
そして、すべての人は両面を持っているのです。
どうしたら良いのか?
ランクを意識して、更に高度な「霊的ランク」にまで上がることを勧めています。
主流派の異性愛カップルは多くの力を持っています。
シングルであれば、それ(主流派のランクやその力)に気づいているでしょう。
異性愛カップルは、無自覚にシングルを楽しんでいる人に対して何か問題があると考えがちです。
世界中の社会が異性愛のカップルにランクを与え、シングルにランクを与えていないからです。
同性愛者は、莫大な社会的非難に堪えないといけません。
ゲイは、ゲイたたきの標的になり、パートナーがAIDSで死ぬとみられることに苦悩しなければなりません。
主流派の一部人は、AIDSがゲイという悪しき行為の罰だと考えているからです。
レズビアンは、同性愛差別と性差別の二重の負荷に耐え忍ばなければならないのです。
彼女たちは、子供を産むことや伝統的な家族価値に従うように圧力を受けるのです。
これは恋愛観だけではありません、仕事の場面、国と国の関係、様々な人と人との関係でランクとダブルシグナルが起きているのです。
無自覚な主流派の発言と、(他に方法が無いにしても)感情的、ある場合暴力的な周辺部の発言。
そして、会話が成立しないという事です。
テロリズムはこれで説明ができます。
この本では、この感情的な対立を「ホットスポット」と呼んでいます。
怒りや驚きや、その場が凍りつく瞬間「ホットスポット」は、ランクのダブルシグナルと本質的に結びついています。
有能なファシリテータは、そのホットスポットに気づき、ダブルシグナルや脅しの背景にあるものを探究します。
何かを言うのではなく、相手を理解しようとする姿勢が重要だとあります。
「あなたの(復讐の)欲求は、相手から見下されるような感情から引き起こされましたか」
「あなたが、道徳を引き合いに出されたのは、過去の苦しみが生み出していますか?」
比喩として「長老」になることを求めています。
すべての側面に対して繊細で、ランクやダブルシグナルをコントロールできる人材です。
なかなか道は遠いです。
最後に世界を変えるための具体的な10ステップがあります
1 誰が自由を望んでいるか問う
2 自分たちについて自覚し、受け入れる
3 隠れたランクとダブルシグナルを自覚する
4 復讐のダイナミックスを思い出す
5 自分の声や「霊」を知る
6 歴史とその課題を知る
7 技術を身につける
8 メタスキルを身につける
9 混乱を大切にして、火を消さない
10 始める
とても学びが多い本でした。