2023年 52冊目『ルポ 雇用なしで生きる スペイン発 もうひとつの生き方への挑戦』
2023年 49冊目に読んだ『21世紀の楕円幻想論』で推薦していたので手に取りました。
積読(つんどく)の本がたくさんあるのですが、一気に手に取りました。
面白かったです。
この本は、資本主義以降の世界の人々のルポです。
もう1つの経済、もう1つの社会、もう1つの政治を実現しています。
ささやかで、静かなのですが、確実な革命が起きているのです。
これは2011年5月15日(なんと私の誕生日)に資本主義の矛盾が一番起きているスペインで始まりました。
失業率の悪化や住宅バブルの崩壊による、強制立ち退きに抗議して立ち上がったデモがスペイン各都市に広がったのです。
その始まりの日にちなんで15M(キンセ・エメ)運動は、市民参加型の政治を目指す政党「ポデモス:私たちはできる」に発展します。
そして、彼らは欧州議会に議員を送り、地方議会選挙でも奇跡を起こすのです。
私が一番関心を持っているのは、労働時間を補完通貨のように流通させる
「時間銀行」
これがあるとお金が無くても時間があればやっていけるのです。
家事労働やボランティア、介護、育児などが他の役務と交換できるのです。
また食料品リサイクルのための連帯冷蔵庫も素晴らしい取り組みです。
さらに市民Wifiや社会福祉活動を担う労働者協同組合など、ホントに目からうろこだらけなのです。
そして参加している人たちがつながっていて、相互扶助と創意工夫があちこちにみられるのです
この革命というか運動を支えるのは、雇用なしで生きる社会を作ろうとたちあがった人たちの本気です。
この中の時間銀行は、実は日本発だそうです。
日本では、外国に比して当時はセーフティネットがあったので、
あまり盛り上がらなかったそうです。
例えば、信頼関係で有機栽培の市が催されます。
国の認証には大きなお金が必要です。
それは小規模農家では負担できません。
一方で有機野菜を買いたいけれど、専門店では高すぎて買えない人がいます。
両者をマッチングするオルタナティブマーケットがたくさんあるのです。
彼らが雇用なしを考えたのは
スペインが、欧州中央銀行から低利で資金調達できるようになり、建設業界が住宅をどんどん建設しました。
そして銀行は長期分割でどんどんお金を貸したのです。
その結果、皆が必要以上に借金をし、必要以上の住宅が建ったのです。
同時に移民も500万人増加しました。
2007年には、スペインは独仏伊3国よりも住宅を建設し、そこに金融危機が起き100万件近くが売れ残ったのです。
住宅がたくさん建ったのは、融資に加えて規制緩和がありました。
中道右派政権が、保護地区以外は建設できるようにしたのです。
政権交代が起きた後も社会労働党は、保証金を払うのを嫌って、建設許可を取り消しませんでした。
バブル崩壊後、政府は企業の支援を強化しながら、労働者の権利をはく奪し、(解雇しやすくなり、補償を減らす)、教育(学費が倍になった上に、講師を解雇)や社会保障(診察代が有料になり、医師や看護婦が解雇。介護の人数も減)がグレードダウンした。
そりゃ怒りますよね。
時間銀行
時間を交換単位として、時間銀行に参加するメンバー間でサービスのやり取りをする仕組み
メンバーは自分が提供できるサービスを登録し、誰から依頼を受けて、サービス提供すると、時間預金ができるのです。
同じ時間がサービスを受けた人の口座から減らされます。
AさんがBさんのパソコンを修理し1時間貯金が増え、Bさんの1時間が減り、Aさんは1時間Cさんからマッサージをしてもらう。
※世界で最初に立ち上げたのは、1973年大阪で水島照子さんのボランティア労力銀行が最初
これをすると、
どんなこと(労働、サービス、知識)でも同じ価値をもつことに気づくことができる
皆で協力し助け合うことで、お金で買えないものが手に入る
自分には何のとりえもないと思っている人も、できることがあると知り、自信を持てる
連帯冷蔵庫は
フードバンクの冷蔵庫版。そこに不要な食べ物を入れ、必要な人が持っていくという仕組み
事務局は、賞味期限などだけチェックしている。
いろいろな弱者が元気に生きていける仕組みが学べます。
時間銀行、もっと学びたいですね。
▼前回のブックレビューです。よかったらどうぞ。