
2020年 65冊目『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』
先日ひょんなことから大分大学のイベントにオンラインで参加しました。
その際に原丈人さんが参加されていたのです。
原丈人さんは尊敬する人物の一人で、だいたい著書は読んでいたつもりだったのですが、チェックすると、この本を読んでいませんでした。
ということで手に取りました。
1996年の本です。
ご存じのように、原さんは公益資本主義を提唱されています。
会社は株主だけのものではない。
というのが主張です。
従業員や地域や社会のものでもあるという事です。
私もスーモカウンター時代、5S(従業員、株主、企業顧客、個人顧客、社会のSatisfaction:満足)の同時実現を提唱してマネジメントしていました。
ですので、とても納得感が高いです。
冒頭にIRRとROEを重視した経営が問題を大きくしているという話が載っています。
これ納得感高いです。
IRRは内部投資収益率で投資に対してのリターンが年率でどれだけあったのか?という数値の事ですね。
同じリターンを得るのであれば、10年よりも5年の方が良いという考え方ですね。
一見最もらしいのですが、過度にIRRを重視すると、研究開発に投資をして長年R&Dするリスクを負うよりも、短時間に儲かる方が良いということになるわけです。
一方経営側としてもROE、株主資本利益率が重視されるので短期間に株価を挙げないと評価されなくなります。
ところが、平均在籍期間が5年程度のCEOは、資産を圧縮することで短期的にROEを化粧することに走ることになるわけです。
これに拍車をかけたのが、アメリカでは優秀な人は稼ぐ人であるという尺度です。
この価値観により、優秀な人は金融で稼ぐ人であり、苦労するのは馬鹿のすることとい価値観が生まれるわけです。
また金融工学について、リスクヘッジととしては機能するが、完全競争、参入障壁はないなどを前提にして、これで判断するリスクを唱えています。
つまりリーマンショックを予測していたともいえるのです。
で、どうしたらよいのか?
が公益資本主義という事ですね。
余談ですが、最近、複数回、会社をどうすれば変えられるかという相談を頂きました。
管理会計と評価制度とその運用だという話をしました。
上述のように例えばIRRとROEで評価されるならば、本質的でなくてもそれを良くするのが人間です。
会社が変えたい方向に人事制度とそのベースとなる管理会計、そしてそれらの運用を設計すれば変わる可能性があるのです。
でも、それに対して、例えば、既得権益者が当然抵抗します。
その抵抗を丁寧にしかも速やかにひも解いて解決していかなければなりません。
進めるには、かなりの胆力と戦略が必要です。
そんなことできるのかな?
という話になりました。
私は昔から(松岡正剛さんの塾で原さんに学びました)原さんを信奉しています。
私の周りからだけでも、そちらの方向に向かうようにしたいです。