2022年10冊目『メタモルフォーゼ ~オートポイエーシスの核心』
松岡正剛さんの塾に通っているのですが課題図書です。
とてもとても難しかったです。
前半が難解で、中盤以降が事例で、何とか理解できました。
メモしたところを残しておきます。
・オートポイエーシスは、第3世代のシステム論
・創発しつづけることがシステムの本性であるというシステム論。
・創発はシステム論の最大のテーマ
・動的平衡を基本とする第1世代のシステム論では、創発は稀な偶然から生じる。
・不測の偶然から構造転換に至る場面を解明する課題が第2世代のシステムである自己組織化のテーマ。システム自体が持っている「ゆらぎ」
→自己組織システムとは、生成プロセスが次の生成プロセスの開始条件になるような連鎖。
・自己組織化の創発:生成プロセスが継続しながら、新たなパターンができる=システムが新たな変数を獲得している。
・オートポイエーシス:自己組織化の延長上に変数そのものを継続的に生み出し、自在に変貌していくシステムが出現する
→創発そのものがシステムの本性。
・オートポイエーシスは、システムではあるがシステム論ではない。
・オートポイエーシスの骨子は、システムの連続的な作動からシステム自己が継起的に形成さる機構
→二重作動(ダブル・オペレーション)として定型化
→質を異にする複数の者が作動の継続をつうじて連動する事
→二重作動の複合体としてオートポイエーシスを構想
・形成運動:自分自身を作り続け、時に応じて全身を組み替えていく運動
・メモタルフォーゼ:みずからを全面的に組み替える←植物や昆虫の変態
・ダイナミクス(動力学):構造単位じたいが別様になれるように小さな差異化を行い続けている
・植物は、葉(栄養機関)→花びら(生殖器官)に機能を組み替えて作動を継続する
1 生命に内在する活動は、種々の能力として言語化される
→植物は場所を移動する代わりに、自分自身を作り変える能力を最大限に活用
→動物の中でも、神経、免疫、筋肉などで恒常的に形成運動が行われる
2 活動への直感は、理念の直感である
→理念とは、それだけを分離して取り出すことができない直感の知
3 動きの基本形が、原型
→それじたい動きを継続しうる動きの基本形の典型例が、オートポイエーシス
4 原型に動きを直感するとき、形態と運動を二重作動しなくてはならない
→ダイナミクス(同種は反発し、対立するものは他を不可欠とする)ではない
→植物の形成運動では、拡散運動と収縮運動←これがダイナミクスの典型例
5 形成プロセスは、分類学的形態と垂直方向に作動する
→位相変換:座標軸の変換で投影の操作を行う事で異なる形態が出現する
→系統進化:生物の構造部材を変形する移行←メモタルフォーゼの要諦
・パラダイム転換:対象化された枠組みの切り替え
・知のメモタルフォーゼ:経験が新たな形成回路に入り、別様な経験を実行すること
本書の3つの課題
1ゲーテのメモタルフォーゼの構想を経験の全域にわたって拡張していくために現在活用可能なカテゴリーを整備する
→中心は二重作動、これを基本にして整備する
2二重作動からみたとき、オートポイエーシスと二重作動は裏表の関係になる
3こうした議論は、経験科学を主要な場面にする
二重作動
オートポイエーシスの外形
例 結晶化のプロセス
→マクロに見ると 結晶化は生成プロセスから決勝を作り出す産出過程
→ミクロに見ると 生成プロセスが次の生成プロセスに接続することに同時並行して生じる事態が、結晶の析出
オートポイエーシスの外形に含まれる
第一の機構:二重作動:プロセスの継続と異質な仮定が同時に出現し、進行している局面
第二の機構:フィードバック:プロセスの継続を通じて析出された物質が再度生成プロセスに関与する場面→自己触媒とそうならないものに区別される
第三の機構:円環的回路の形成:生成プロセスるの継続が、どこかで出発点付近にあるプロセスの開始条件になる
第四の機構:産出される物質間の新早生エイ、位置、配置によって疑似恒常的な関係を形成し、プロセスの継続を支える
第五の機構:産出された物質が、物質的な親和性によって外界の認知を行う
謎はどこから
オートポイエーシスの最新の定型化
・反復的に要素を産出するという産出(変形および破壊)過程のネットワークとして、有機的に構成(単位体として規定)されたシステムである
1反復的に産出された要素が返還と相互作用をつうじて、要素そのものを産出するプロセス(関係)にネットワークをさらに作動させたとき、この要素をシステムの構成素と言う。構成素はシステムをさらに作動させることによって、システムの構成素であり、システムの作動をつうじてシステムの要素の範囲(自己=sich)が定まる
2構成素の系列が、産出的茶道と構成素間の運動や物性を通じて閉域をなしたとき、そのことによってネットワーク(システム)は具体的単位体となり、固有領域を形成する。この時連続的に形成される閉域(自己=selbst)によって張り出された空間が、システムの位相空間であり、システムにとっての空間である
→悪文である
第一の謎:ヘーゲルの運動と物質間の相互外在性は、少なくとも否定できそうにない。
第二の謎:巻き込み運動とともに自己が形成されるのだから、自己の形成はつねにプロセスを経たあとに行われる
第三の謎:観察者が認識している枠組みと実際に起きていることが別である
第四の謎:システムの作動をどの空間で捉えれば、捉えたことになるのか。オタマジャクシがカエルになる途中
第五の謎:オートポイエーシスの外形が、内外の関係にあるのかどうか
ダブルアスペクト
・二重作動は、観察者から見た時、必然的に2つの側面をもってしまうというダブルアスペクトではない
・オートポイエーシス/二重作動で問題となっているのは、運動とその剰余との「内的関連」
→いかなる必然性もないが密接に連動するような事態
2オートポイエーシスの系譜
マトゥラーナ
・最初は鳩の神経系→これに答えずに循環→だからいろいろな解釈が出てきた
・さらに対象を広げていった
→オートポイエーシスの普遍化
ヴァレラ
・システム的経験科学
→オートポイエーシスの領域限定:細胞、神経、免疫
→作動、行為、運動、形成プロセスではなく、認知機能の自己認知
→入力も出力もないといしなとは、やりすぎ
→作動的閉鎖性
→認知とは環境と認知的システムのカップリングによる作動
→進化を構造的カップリングの推移として考察する
ルーマン
・システム―環境
→本来共通尺度のないところに成立する関係
→視点の異動(観察者とシステム)
→経験の次元
・心的システム―社会システム
・経済システムでは、支払いを通じてネットワークが作動する。
・一対の売買の時間差などを利用するデリバティブを通じてシステムは作動する。
河本英男:好意的存在論的システム
3過程
産出的因果=プロセス(飛躍的生成が伴う過程)
・木を衝突させて火が付いた時、衝突から火が生じたのか、それ以外の理由で火が付いたのかを決定することはできない。
→摩擦により熱の蓄積が進むと、分子は振動するだけではなく、新たな化学的結合可能状態になる。運動は継続しながら、別の作動を開始していく=二重作動
自己組織化とカオス
・結晶化、自己組織化の開始条件をギリギリにつめても偶然性が残る
→自己組織化は偶然性がある。カオスは初期条件の微妙な差異に敏感に反応する。
→自己組織化は無秩序から秩序になる。カオスは秩序が成立しても、また再度無秩序状態になる。
産物が生産過程を作動させるーメモタルフォーゼの第一段階
・生成プロセスが物質を生み出し、その物質が生成プロセスに巻き込まれる。そして自己を形成し、自己と環境を連続的に区分する。
4制作
包むことと触覚 シェリングとベーコンの絵画
・触角は、感覚のなかでも運動と感知の二重性が、分離しないままになっている唯一のもの
・自閉症のグランディンが作成した牛や羊の囲い桶
・包むの重要性
アリストテレスの質量 ドゥルーズ ガダリの二重文節
・運動の連続性と物質の離散性を接続する回路がある
→ポイエーシスの原理
道具と作品のポイエーシス
・道具は取り巻く環境や行為のネットワークとともに存在する
5浸透
6感受
ホワイトヘッドの有機体論
・物事はつねに生成過程にある
・意識の認識に対して、生成の結末こそ意識そのものであるという選択肢が成立する
・経験自体生成するものであれば、経験についての見解に任意性が含まれる
・現実は複数の可能性をつねに含む
・現存の条件が必要
・生成するものは、それ自体で多様化する
7測定
・確率的には物体を別様に変えていく可能性が小数ながら含まれている
・この可能性が「ゆらぎ」
・経験間断のない観測から成立つ。その観測は経験世界の内部からのみ生じて来る。
・測定は、官需、感知、調整を含む
8相即:コヒーレンス
例 ブラウン運動:ミオシンは移動とエネルギー創出を同時に起こしているが、別のことをやっている
・行為に相即する知覚を見出したことは、アフォーダンス理論の功績
・アフォーダンス理論からは多様性は導き出されない
9分岐
・カフカの変身
・生命の分岐の例
・RNA→DNAとタンパク質連合ネットワーク→細胞の分化→運動機能
・ハイパーサイクル:独立の機能体がそれぞれの機能を実行し、他の触媒となる
・性があることのメリット:異形交配のたびに遺伝子の修復がなされる
10立上げ マティスの選択
・生物が環境内に存在することは、物が環境内に存在することとはまるで異なった事である。