2021年 92冊目『情報の歴史 21』
1995年までの情報の歴史画の載っている「情報の歴史」に2020年までの情報を加えて再編集したカラー、500pを超える大作です。
旧版は電電公社がNTTになるときに情報の歴史をまとめるという壮大なテーマを松岡正剛さんに依頼して作った本。
幸いなことに手元にあります。
そして新しいこの本。
ペラペラめくるだけでも楽しいです。
松岡さんの前書きに検索御無用、解説御免とあるので、それに従います。
※松岡さんは私の師匠の1人なので、師匠の言葉には従わなきゃです。
解説ではなく、なるほどなって思ったことをメモ書きしておきます。
便利で経済的な日々を送る事や、技術に基づいた仕事をしたり、技術の恩恵に浴した生活をしたりすることを「進歩的である」と思うようになった。
その直後、資本主義は欲望と競争を連続的に起爆させていった。
こうした地球は、あたかもあらたな地質年代を迎えたかのような様相を呈しはじめたのである。
最近はこの状況を「人新世」と呼ぶようになっている。
人新世の地球は各地に近代国家が軒並み出現するにれ、環境の変異を見せるようになった。
文明が地球環境を大きく変質させるようになったのだ。
あげくが地球温暖化、オゾンホール、海洋プラスチックごみ問題などである。
もはや個人の手元にあるスマホでつながったセカイとはいったい何なのか、何がリアルで何がヴァーチャルなのか、何がデータで何が現象なのか、これまでの哲学や社会学では説明がつかなくなっている。
「見えない情報現象」が見える化をおこしていた。
うつやいじめ、あるいはPTSDやLGBTQといったそれまで内面にどっぷり沈んでいた微妙な経緯が次々に見える化にむかって浮上してきた。そういう四半世紀だった。
いったい何がおこったのか。技術が究極の領域での「場」と「席」と「禍」の動向を見えるようにさせ(ヒッグス粒子や環境汚染や遺伝子操作)、長らく鬱屈させられてきた「心」と「負」と「性」が勝たれれるようになったのである(精神疾患の進行やジェンダーの多様性)
しかし他方では、あまりにマネーゲーム寄りのグローバリズムが社会と市場に駆動して、ほとんど組織が(企業から大学まで)成長神話とコンプライアンスにがんじがらめになっていた四半世紀でもあった。
金融工学がもたらしたリーマンショックに代表されるできごとは、アントロポセンのもうひとつの過剰を物語っていたと言わざるを得ない。
大量の難民が大移動することになったのも、過剰と欠乏が極端に非対称になっていたからだった。
情報の歴史全般を通して眺めてみると、いったい情報文化というのものが何によってどのように編集されてきたのか、そこにいくつか画期があったことに気づく。
1 文字と記号の出現。
2 物語(ストーリー、プロット+キャラクター、ナレータ) 有効な情報保存様式
3 活版印刷、写真、録音→Copy (DNAの自己複製)
4 情報の記録媒体としての四角形(ノート、絵画、写真、スクリーン、テレビ、コンピュータ、スマホ)
5 計算における十進法と電子処理での二進法
1990年以降(新版で新たに取り上げられた内容)
分断・統合・再分断
・1989年ベルリンの壁が崩れ、91年にソ連が崩壊し、南アフリカのアパルトヘイト政策は終結し、ECからEUへの統合を迎える。
・融合の時代は新たな分断の時代の幕開けであった。
・91年の湾岸戦争のイラク空爆のCNN中継は世界が互いに新たな敵を見つけようとしていることを予告した。
・タリバンはバーミヤンの石仏を破壊し、アルカイダは911を起こした。
・拡大するインターネットが分断を晒すことにも一役をかう。
・各地のテロ情報やイスラム国建国宣言とまもなくの処刑映像を拡散された。
・2000年からの中国はWTO加盟により経済拡張路線を進めてった。
・アメリカとの新しい冷戦が形を変えて始まった。
・中国内部では、チベット、ウイグルへの圧力が進み、97年に返還された香港の雨傘運動に象徴される民主化運動は20年の香港国家安全法で内部断裂を決定的なものにした。
・各地でポピュリズム政党、右派の躍進により自国の内圧を高めていった。
・アメリカ・ファーストを臆面もなく標榜するトランプの保守主義はウチソト断裂の危機を煽った。
・火種はブラックライブズマター運動に展開されて燃え盛っている。
・日本は失われた10年の後も閉塞した情報が継続している。いじめ、少年犯罪、ニート、うつ病、格差といった問題が、オウム、サカキバラ、児童虐待や老々介護、ストーカやネカフェ難民、ブラック企業といった形で噴出する。
・果たして、働き方改革やベーシックインカムで間に合うのかは問い直されていない。
液状化する社会
・91年WWWがインターネット時代の幕開けを告げた。
・分断された個人がネット回線を通じて、いつでも、どこでも誰ともつながれるユビキタスな未来に対して、支配者はすぐにその本性を現した。
・GAFAMが瞬く間に世界を覆っていく。
・同時的、同期的、同質的に世界中がサプライチェーンでつながると、グローバリゼーション論に注目が集まった。
・文章、言語、画像、映像、音楽の電子情報は標準化し、市場ではコモディティ化と低価格競争一辺倒になる。
・SNSが提供するいいねやリツイートが評判の世論を形成し、ウイキペディアに代表される知のシェアリングに虚実が混ざる。
・情報が移動すると情報は感染していく。
・オンラインではコンピュータウイルスの脅威に晒され、オフラインでもウイルスがグローバリゼーションの負を突き付けている。
地球環境と宇宙開発
・アントロポセンの時代は産業革命から始まっていた。
・人が地球環境にも影響を与え、変化させていく時代の危機感は、地球温暖化の警鐘とともにエネルギー政策の転換を余儀なくされた。
・地球環境の異変は各地で頻発している。
・対処療法は、地球サミット、京都議定書・・・、はたしてこれらはアントロポセンのイノベーションなのか、資本主義社会延命のための応急処置なのか。
・スペースXは民間から宇宙開発に参入した。
・宇宙は学問から実用、ビジネスへと舞台を移しつつある。
ライフ・エンジニアリング
・45年に人類はシンギュラリティを迎える。
・IPS細胞とアンドロイドは人類の不老長寿や節が絵空事ではないことを告げる。
・情報生命のエンジニアリングが可能なLIFE3.0の時代に突入した。
・われわれは便利と引き換えに生活生体情報を国家や企業に差し出し、その行動や判断履歴は消費促進や管理社会の材となる。
・目に見えない信用もデジタル数値として評価される。
・ヨーロッパでは個人情報搾取への危機感からGDPRが施行された。
・人類の2つのライフ(リアルとバーチャル)エンジニアリングは、見えない情報と見える化された情報に翻弄されながらコロナ禍の2021年を通過する