2020年 21冊目『下流志向 学ばないこどもたち 働かない若者たち』
内田樹さんが書かれたベストセラーです。
ケーキを切れない話を読み、周辺知識を習得しようと手に取りました。
こんな表現をすると失礼かもしれませんが、内田さんはやはり賢いですね。
同じ物事や情報を見ても、それの背景にある理由や仮説を見つける能力が半端ないです。
1章は学びから逃走です。
かつては、分からないことがあれば自分で調べました。
そして調べてことで自分の知識が増えてきました。
しかし、現在は情報がたくさんあり過ぎて、分からないこと(=穴)があっても気にならないのです。
つまり世界そのものが穴だらけなのです。
これで学ばない子供の出来上がります。
現在は生徒が教育サービスの買い手となっていると言います。
授業を受けたら、対価として何をくれるのか?
と質問します。
なぜ、そうなったのかの考察が思いつかない理由でした。
私は、自分が思いつかない事を考え付く人が好きなのです(笑)
家庭への家電の進出で子供がお手伝いできる家庭内労働が消滅しました。
お手伝い→お小遣いという労働→対価→消費という流れが、何もせずに消費できる子供が生まれたのです。
子供たちは、学校では40分我慢する苦役を教師に対して支払っていると感じているのです。
苦痛や忍耐という貨幣を教師に対して支払っているわけです。
で、先生はその見返りとして何をくれるのか?
という質問なのです。
これに答えなどないのです。
そもそも子供は将来のために教育を受ける権利があるのです。
義務教育は親や国が子供に教育をする義務があるという意味です。
子供側が、権利を行使しないかもなどという前提はないわけです。
なるほど、面白い枠組みで捉えるんだなって思いました。
2章はリスク社会の弱者たちです。
自己決定・自己責任で、必ず正しいことを選択すべきである。
弱者は、周囲ではなく国が守るべきである。
リスクヘッジを考えず(日本が太平洋戦争に突入したように)、自分の選んだ方法は必ず成功すると盲目的に信じる。
など、極端な考えを正しいと考える人が増えてきて、結果、若者がリスクにさらされているわけです。
3章は労働からの逃走です。
100万人はいると言われているニートをとりあげています。
ヨーロッパのニート は階級社会の結果で、学ぶ機会もない人たちがなっています。
日本のそれは、学ぶ機会はあったのに、それを放棄している点が根が深いのです。
また上述の(家庭内)労働→消費という順番を経ていると、何かをしないと報酬が貰えないという習慣がつきます。
しかし、消費から始まれば、すぐに欲しいものが手に入ります。
そもそも労働は、先に成果を出すことで、報酬を手に入れるわけです。
あるいは先に成果を出すことで評価をされるわけです。
しかし、現在の一部の若者は、何もしない状態で報酬を得たいし、評価されたいのです。
それは、屁理屈ではなく、そのような環境で生きてきたからなのです。
子供のころの家庭内労働の有無が、様々なところに影響しているというのは、考えた事もないです。
そして、考え付かないです。
内田さんは賢いですね。