2022年 43冊目『真実の瞬間』
スカンジナビア航空の復活劇の話です。
一緒にビジネスをしているMさんの紹介でした。
とても参考になる本でした。
ヤン・カールソンは、瀕死の状態にあったスウェーデンのスカンジナビア航空をV字回復させた立役者です。
36歳で当時世界最年少で国内航空会社リンネフリュ社の社長として、短期間で目覚ましい成果を挙げます。
その実績を買われ、2年連続大赤字を出したスカンジナビア航空の社長になりました。
現場は、更に厳しいコストカットと(彼がリンネフリュ社で成功した)料金値下げを予想していました。
当然士気はダダ下がりです。
ところが、彼はビジネス客にフォーカスを当て、エコノミークラス料金でファーストクラスのサービスを受けられるユーロクラスを新設したのです。
そして、ビジネス客にとって最も重要なのは値段ではなく、時間であることを見抜き、ヨーロッパでもっとも正確に時間を守る航空会社になり、顧客の評価を集め、一年で大幅黒字に復活させたのです。
しかも、ビジネス客にターゲットを絞った彼らは、購入直後の最新機を使わずに(他社にリースした)、小回りが利く、小型機にシフトしたのです。
更に、赤字が解消されていない時に、50億ドルを投じて147ものサービス改善プロジェクトを立ち上げたのです。
とはいえ並行して、ビジネス顧客に役立たない支出や組織は解体したのです。
つまり、メリハリをつけたのです。
現場に伝えたメッセージは、最前線の従業員に「彼らが以前から望んでいたサービス」を顧客に行うように指示したのです。
制服をスマートにし、現場に裁量権を移し、現場の従業員が顧客に対して、できる限りノーと言わないようにしたのです。
ビジネス客のユーロクラス専用のカウンターも作りました。(これは日本では簡単そうですが、スウェーデンは平等主義なので管轄官庁がOKしないと、周囲が大反対したそうです)
そしてビジネスリーダーには、明確で簡潔なビジョンと人間味のある優れたコミュニケーション能力を求めました。
ビジョンの細かい実施内容ではなく、ビジョンそのもの忠実であることが新しいリーダの条件だというのです。
現場の従業員は、いい仕事を期待されれればされるほど、素晴らしい能力を発揮するとカールソンは信じています。
ピラミッド型の組織を思い切って平らにし、情報を開示し、現場が顧客満足度を高められるようにもしました。
では、リーダは何をするのか。
啓発された独裁者になるというのです。
学び続け、決めることはする。そんなリーダ像なのです。
序文に(私が大好きな)トム・ピータースが書いています。
かつてのスカンジナビア航空の悪いエピソードです。
機材の一部にストッキングをひっかけたと顧客がCAに伝えます。
しかし、適当な工具が無いのでCAは修理することができません。
CAができることは事故を報告することだけです。
しかし、それを受けた事務部門にも工具は無い。
そこでCAは、更に上部に報告して、仕事が終わったと思うのです。
顧客の問題は何も解決していないのにです。
その報告が技術部門に回るが、担当者は、自分が修理できるか分からないのです。
しかし、飛行機は飛行中だ。
急ぐ必要はない。と納得します。
そして、担当者は、「要修理」と指示を書き込みます。
やがて修理されるでしょう。
しかし、その間にストッキングを10足破るかもしれない。
顧客はどう思うのでしょう?
カールソンならどうするか。
コミュニケーションを阻む横の障害を排除するのです。
(リクルートではこれを横ぐると呼ぶ)
つまり、仕組みを変えるのです。
マネジャーを顧客と市場にじかに接する最前線のリーダー、支援者に変化させるのです。
最前線の従業員の15秒の対応が、その会社の印象を決めてしまいます。
その15秒をカールソンは真実の瞬間と呼んでいるのです。
この真実の瞬間を磨き続けるのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?