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やとうはるかさんのアトリエビジット

昨日はペインターで陶芸家のやとうはるかさんに会いに、神奈川県南足柄市に向かった。

やとうさんの作品の多くには女の子が登場する。やとうさんは作品の中で、女の子が森や林や、どこか異世界へ進んでいくような、非日常の世界観があるが、一方で、5歳と7歳のお子さんを子育しながらお米や麦などの農業を営む日常をお持ちだ。その暮らしぶりも気になって今回アトリエ訪問をお願いすることとなった。

足柄市のコンビニで合流すると、早速彼女の畑へ向かった。

やとうさんとこどもたちと麦畑

やとうさんの畑は、今は麦を栽培しているが、夏は田んぼになってお米を栽培する二毛作。お子さんが通う幼稚園の親と共同で運営しているという。うちの子が、畑に生えたまだ青くて小さい麦の葉っぱの上を歩こうとするので、「あ、踏んじゃだめだよ」と声をかけると、「どんどん踏んでください。逆に踏んで地面を固めて欲しいので」とやとうさんは言った。途端、子どもらは解き放たれた犬のように広々とした麦畑を駆け出し、端まで行くとまた走って折り返す。やとうさんのお子さんはよく畑で遊んでいるという。

おうちも作っているというやとうさん。畑がある町よりもずっとずっと奥まで山道を登り、ようやく辿りついたのは、山の途中に突然現れた開けた平地だった。だいぶ人里離れたその場所は元農地だったという。コンクリートを敷いて鉄骨を組んだ家の基礎が見えた。ここから躯体を組むとろこまでは大工さんに頼み、内装はキャンプみたいに住みながら自分たちで作っていく予定とのこと。木材は、ご自身も作家でありながら林業を営む旦那さん(別府雅史さん、通称マーシー)が伐採した木を使うとのことで、製材済みの木材が積まれた山も見えた。

どれくらいで完成させる予定なんですか?と聞くと「7年くらいで作れたらいいかなと」とやとうさんはニコニコして言う。ずいぶん先だなと思いつつ、住みながら作り続けるという感覚は、やとうさんとは全然レベルは違うが、DIYでギャラリーを作り続けながら住んでいた2年間の自分らの暮らしを思い出し、想像されるものがあった。

その後、現在のアトリエがあるご自宅へと向かう。ご自宅の前にはどこまで田んぼが広がり、その先に山が見えた。
2階のアトリエにお邪魔すると、広い正方形の部屋に大きなキャンバスや手で持てるくらいの大きさの陶芸作品が並び、天井には切り絵やモビールの作品が吊り下げられいた。絵の具や本が整列されていて、なんだか今すぐはじめらる感があり、子どもらは入ってすぐに絵を描き始めた。大人たちはやとうさんの作家活動についてお話を伺った。

やとうさんに女の子を描く理由を伺うと、昔から描いていて、他のも試したけどやっぱり女の子に戻ってきたという返事。女の子を描くと自動的に世界が見えてきて、はじめの一歩になるとのこと。目を塗りつぶされた女の子が世界を異化する装置で、そこには変なものや恐怖、絶望が現れている。

ただし「日常も入れないと嘘なのでは?」というマーシーの助言もあるらしい。パーマカルチャーへの憧れの中で農業も営んでいるが、ポテチ片手にビールを飲む自分もいる。周りには女の子だけではなく、おじさんおばさんもいる日常も踏まえて、作品世界にもその日常性が入ってくるようになったとのこと。

「自分の中の中2病を消さないように」という梅津庸一(画家で陶芸家でパープルームも主催)の言葉を引用しながらも、日常と非日常をどう行き来するか、やとうさんの今度の作品を見守りたい。

やとうさんは今年の冬に OpenLetter で展示することになりそう。梁や上の階の床板の裏側が見える OpenLetter の天井をみて、東北の祭りに登場する神社に吊るされた切り絵を想像したとのこと。どんな展示になるか楽しみだ。

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