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飛行船の日の夢

飛行船の日の夢

今日は飛行船の日。空を見上げると、ゆったりとした飛行船が浮かんでいる。まるで時間の流れが違う場所にいるかのように、穏やかに、優雅に。

「一度でいいから乗ってみたいな」

そうつぶやいた私の隣で、祖父が微笑んだ。

「昔、乗ったことがあるよ。動力はプロペラだ。飛行船はエンジンでゆっくり進むんだ。気球と違って自由に動けるから、遊覧飛行にもぴったりさ」

祖父の話を聞きながら、私は想像した。静かに風に乗り、街を見下ろす自分の姿を。海の上を漂い、遠くの島々を眺める旅を。

「お前が大人になったら、一緒に乗ろうか」

祖父がそう言ったのは、もう十年以上も前のことだった。

今、私は飛行船のチケットを握りしめている。今日は、ニニ日。二が並ぶニコニコの日。祖父との約束を果たすため、飛行船に乗る。

「おじいちゃん、見てる?」

雲の上で、私は空を見上げた。どこかで祖父が微笑んでいる気がした。


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