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十三代目團十郎白猿の「勧進帳」を見てきた

團十郎白猿襲名披露公演の昼の部を見てきた。
一番気になっていた「勧進帳」がとても良くて、嬉しい。

海老蔵時代、彼の弁慶はどんどん自己流になっていって、初演の時に感じた喜びが毎回色褪せていくようで悲しい思いをしていた。それだけに今回の公演は本当に嬉しい。

花道の第一声から良い弁慶になる予感はした。
初めの祝詞は弁慶が荒法師であったことを思い出させてくれたし、洗練されすぎた弁慶ではなくて、この演目の根にある荒事の魂が感じられるのも私の好みに合う。なんといってもこれは歌舞伎十八番なのだから。

延年の舞の無骨さを批判する人もいるらしいが、そういう人たちは六代目菊五郎の「弁慶は踊りを知らねぇよ」という十七代目羽左衛門に与えた言葉を知らないのだろうか。

今回の團十郎は大きく構えて、あるべき弁慶の理想像に近い姿を示したと、私は思う。

山伏問答がやや落ち着きすぎなのは物足りなかったけれど、これまでの紆余曲折を思えば今は正道に帰ってきてくれたことを喜びたい。

幸四郎の富樫はゆったりと落ち着いた雰囲気と、情の色が濃い。ただ、あまりにセリフに情感を出しすぎにも思えた。まぁこれは贅沢な感想で、基本的には満足したのだけれど。

猿之助の義経が絶品で、私は七代目芝翫の義経を思い出した。ただ庇護されるか弱い人ではなく、八艘飛びの伝説を残した武人の面影がある。弁慶と四天王を従える強さがあった。
弁慶をねぎらう『弓矢正八幡の加護と思えばありがたく思うぞよ』のセリフにも、改めて義経の武人としての性格が感じられたのも新鮮。

市川宗家に連なる幸四郎、猿之助と新・團十郎の顔合わせというのも、考えた人はなかなか気がきくなぁと思う。

大幹部との共演も良いけれど、私はそれよりこれからの歌舞伎を背負っていく第一線の三人で勧進帳を出したことに喜びを感じた。

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