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スマホゲーム「天華百剣 -斬-」のサーバーが完全に停止して思うこと(+告知)

はじめに

自己紹介

はじめまして。ナカムラケンタロウと申します。
今はDeNAに所属していまして、スマホゲームのプランナー、プロデューサー、マーケ担当などをやっています。

2021年8月にサービス終了した「天華百剣 -斬-」というスマホゲームの2代目プロデューサーを担当させてもらい、さまざまな経験に加え、さまざまな気づきや考えを得ることができました。

これらの経験で得られたものをシェアすることで、自分が大好きなキャラクターコンテンツ界隈への恩返しというか、少しでも何かしらのお役に立てたらいいなと思いnoteをはじめることにしました。

このタイミングでnoteをはじめた理由

「ちょうど節目となるタイミングだったから」という理由になります。

本日、2022年2月28日15:00に「天華百剣 -斬-」のゲームのサーバーを完全にストップしました。
サービス終了後もサーバーを止めるまではアプリを起動するとキャラクターのタイトルコールが聞けたり、お知らせを見たりすることができる状態でした。

それがサーバーを完全にストップすることで、アプリを起動することが一切できない状態になってしまいました。

実はサービス終了後も、何か連絡すべきことが発生するとゲーム内の「お知らせ」を更新したりとプロデューサーとしての何かしらの役割が残っていたのですが、今日サーバーを止めたことで「アプリがあることで発生する責任」のようなものがひとまず全て完了しました。

そういった節目のタイミングを迎えたことがきっかけで、兼ねてから思っていた「何か恩返し的なことができないか」ということからnoteを始めてみようと思いました。

注意いただきたい点

このnoteの内容は個人としての考えや思いが100%のものになります。

プロデューサーとしてタイトルやIPを代表した公式発言(を意図したもの)は一切ありません。またこの後の記述に「ゲームに関する新情報」もありません。

そういったことを期待して開いてくださった方には申し訳ないのですが、ご了承いただけると幸いです。

(前提)「天華百剣 -斬-」とは

「電撃G'sマガジン」の誌面企画から始まったIP

最初に「天華百剣 -斬-」がどのようなスマホゲームだったのかを少し説明させてください。

もともとは「天華百剣」という原作があり、その原作がゲーム化されたものが「天華百剣 -斬-」になります。
その原作「天華百剣」は「電撃G'sマガジン」というKADOKAWAさんの月刊誌で連載中の誌面企画から始まりました。

「電撃G'sマガジン」の誌面企画は「ラブライブ」シリーズ等が有名なのですが、読者の方とのコミュニケーションを通してIPを育てていくスタイルが特徴です。

「天華百剣」も最初はキャラクターのイラストから始まり、そこから世界観やストーリーを紐解くような連載やさまざまなグッズ展開が続いていくプロジェクトです。

美少女剣撃アクションゲーム「天華百剣 -斬-」

そんな誌面企画のプロジェクトの一環として「スマホゲーム化」の企画が「天華百剣 -斬-」になります。

キャラクターのイラストをかわいくデフォルメしたミニキャラを操作して敵を倒していくアクションゲームとして2017年4月20日にリリースしました。

いわゆる「ベルトアクション」というジャンルで、キャラクターのかわいさもさることながら、本格的なアクションゲームが手軽に楽しめ、さらにキャラごとに詳細に作り込まれたアクションや演出が非常に高い評価をいただいていました。

キャラクターコンテンツとしてさまざまな展開

2017年4月にリリースしてから2021年8月のサービス終了まで、スマホゲームとしてだけでなく「キャラクターコンテンツ」としてさまざまな展開をしていったのも大きな特徴の1つになると思います。

「電撃G'sマガジン」との連動はもちろん、毎月の情報番組を生配信し、毎週webラジオも展開し、キャラクターソングを毎月1曲リリースてライブハウスでライブイベントを行なったり「庖丁三姉妹」という声優ユニットの活動やさまざまなグッズをつくりコミケ等のイベントで販売を行ったりと、本当にさまざまな展開をしていました。

こうしてゲームだけでなくさまざまな形で多くの方に楽しんでいただけたことが、4年以上サービスを継続できたことにつながったと思っています。

ナカムラと「天華百剣 -斬-」との関わり

DeNAの子会社の1社員=1プレイヤーとしての出会い

「天華百剣 -斬-」がリリースされた2017年4月時点で、自分はDeNA Games OsakaというDeNAの子会社にいました。

もともとその前は広告の制作をやっていたのですが「もっと自分が好きなエンタメコンテンツの仕事がしたい!」と転職し数年が経ったタイミングで「やっぱり自分が一番やりたいキャラクターコンテンツの中心部分の仕事をするには東京に行くしかないのでは?」と思いはじめていたタイミングでした。

その後、一人のプレイヤーとして「天華百剣 -斬-」を続けていたのですが、2017年の夏〜秋にかけて「DeNAの本社に転属できるかも」というチャンスがあり、そのチャンスが実って「天華百剣 -斬-」の運営チームに入ることができました。

DeNA本体への転属〜プロデューサーに

運営チームに入ったのが2017年11月だったのですが、実はそのタイミングで「天華百剣 -斬-」はサービス終了の危機に瀕していました。

その時にまず思ったことが
「大阪にあった持ち家もう売りに出してるよ」
でした。

ただ、自分としてはまだまだ可能性はあると思っていたので、すぐに取り掛かったことが「この後どうやって運営をしていくべきか」の提案資料をつくることでした。

初代プロデューサーにプレゼンをし、その提案がきっかけとなり2代目プロデューサーを任せてもらうことになり、なんとかサービス終了の危機を脱することができたのですが、その時のあれこれは以下にまとまっています。

CEDEC2019講演「サービス終了寸前だったタイトルが、CMを使わずにDAUを増やして九死に一生を得たSNSプロモーション術

↑のレポート記事「サービス終了寸前だったタイトルが、Twitterの特色を最大限に活かして危機を乗り越えた、その術を紹介!【CEDEC 2019】

そのような形で2018年4月にプロデューサー交代してから、2021年8月までサービスを続けることができました。

サービス終了から半年、サーバーが完全に停止。プロデューサーとして思うこと

本当にありがたい限りです

今日、2022年2月28日にゲームのサーバーを完全にストップしたことで、本当の本当にゲームが終わってしまいました。
改めて本当にたくさんの方々に支えられ、愛されたゲームだったなと思います。

もともとプレイヤーとして大好きだったゲームが、運営になってからもますます好きになり、何とか1日でも長くサービスを続けたいと思ってがんばってきました。特に2019年の後半くらいから、世の中的に様々な変化もあって運営の難易度が跳ね上がったように感じています。諦めること以外は全て困難な状況で、でも諦めるのが一番難しくて、たくさんの悔しい思いもしてきましたし、半年経っても諦めきれない思いもあります。

でも、それ以上に嬉しいことやいい思い出がたくさんあって、本当に素晴らしいゲームに関わらせてもらったなと感謝の気持ちでいっぱいです。

そんな感謝の気持ちを形にしたいと思ってこのnoteをはじめたのですが、それ以外にも形にできたものがありますので、最後に紹介させてください。

最後にできることを

スマホゲームはサービス終了すると、基本的には何も後に残りません。
最近は「オフライン版」といって、サービス終了後も遊び続けられるようにするアップデートを最後に行うタイトルも多いのですが、諸々の都合で「天華百剣 -斬-」はそれができませんでした。

何とかオフライン版が実現できないかと手を尽くしたのですが不可能なことが確定。でもその後も「プレイヤーやファンの方の手元に何か残せるものを…」という気持ちが抑えきれず「データとして残せないなら紙で残せばいいのでは?!」ということで「バトル用キャラクターのイラスト資料集」を作ることにしました。

そんな思いで作ったイラスト資料集が2022年3月26日に発売されます!

「天華百剣 -斬-」のバトル部分は15〜25個くらいのポーズをイラスト化し、それらを組み合わせてモーションデータとして動かしているのですが、そのほぼ全てのイラストを紹介する内容で、総イラスト点数は4000点以上。

当初はDeNAで出版しようと思っていたのですが、何とか集めた予算は最小部数の印刷代のみ… デザインや編集費用までは用意できませんでした。
そこで取った方法が「デザインも編集も自分で全部やる」というもの。

幸い、前職時代に100ページを超える大学のパンフレットをほぼ3人のチームで作った経験があったので「本をつくる」ということの基本的な部分はある程度できました。

とはいえ4000点を超えるイラストデータをレイアウトして、その他にも背景イラストや情報番組の最終回で使った年表も含め合計280ページの特大ボリュームをほぼ一人で作業するのは初めての経験で、さらに作業を行った2021年の8月後半〜10月初旬はすでに別チームに所属していたので、作業時間は深夜と休日のプライベートタイムを削りに削って何とか形にすることができました。

データの完成後、そのイラスト資料集をKADOKAWAさんから出していただけることになり、さらに当初予定していたよりも大きく展開していただけることになりました。
ありがたいことに好評をいただいているとのことで、現在は第二次の予約受付中です。

IPが本当の最後を迎える時は、誰の記憶からも消えてしまう時だと思います。「何とかその時が来ないようにしたい!」という思いが形になって本当に良かったです。
またIPにとって「二次創作」はすごく大きな可能性です。そういった方向でも資料集がお役に立てれば非常に嬉しいです。

といった形で、長くなってしまいましたが初回のお話でした。

次回は「天華百剣 -斬-」の音楽の紹介をさせてもらって、その後の回から「ここ数年のキャラクターコンテンツの状況の変化」といった内容をお届けできればと思っています。

これからどうぞよろしくお願いいたします。

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