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パラレル 9

明日実    15才


 パパとママが離婚した時は中3でした。
パパは、基本優しいんだけど、すぐ怒るから、大事な相談はしにくい。
怒ると「ふざけろ!」っていうんだけど、ふざけていいってことかなって、いつもちょっと不思議だった。
私がやらかした事も、パパには内緒にしてってママに頼んでる。
離婚のことは、あんまりびっくりしなかったけど、どっちについてくか、自分で決めなきゃいけないのが、いやだった。
だってパパは私に残って欲しかったみたいだから、言いづらかったし、ちょっと残酷な感じがしたから・・・。
ママは「パパとママは離婚するけど、パパはあなたたちのパパであることは変わらないから、いつでも行き来していいからね」というので、パパが心配で、しばらくはパパの所に行ってたけど、女の人いるようになってからは、あんまり行ってない。

私は勉強が嫌いだ。  あんな歴史とか方程式とか暗記して将来なんの役に立つんだろうと思うから・・・。
だから成績は体育と音楽以外は、やばい・・・。
この成績じゃあ私立の誰でも入れるところに行くしかなかった。
私はなんならそれで良かった。  
ギャルみたいなかっこしたかったし。

中3の秋になって、ママは私が持久走、凄く早いのに気づいて、高校入試に生かそうって言いだした。
時期的にスカウトとかは終わってたから、直近のタイムを持って、ママと駅伝の強豪校に売り込みに行った。
そしたら、全国でも有名な今の高校で、私たちと面談してくれたコーチが、同中の卒業生だった。
そんなラッキーもあって、授業料だけ免除で、入学できることになった。

 入学してから一か月は死ぬかと思った。
筋肉痛で、朝起きられない、足は浮腫んで、その上顔は日焼けで真っ黒なんだもん・・・。   休みなんてないし。
大変なところにきてしまったと、ちょっと後悔した。
でも、この間、実業団のスカウトの人がきてて、ランニングフォーム凄く褒められた。    こんなんで、3年間頑張れるかなあ?
全国大会出てみたいな。
今、私はいっぱいいっぱいだから、感じ悪いかもしれないけど、ママには感謝してる。 
朝練あるから、お弁当大変だけど、よろしく頼む。


遥人    14才


 オレは自分がなにに向いているのかも、よくわかんない。
明日実と違って、体育と音楽は全然だめで、ちょっといいのは数学と英語だけど、テストよくてもあんまり成績は上がらない。
明日実はいつも人に囲まれてるけど、オレはすぐ絡まれる。
引っ越ししてすぐの頃、学校の帰りにカツアゲされそうになった時、明日実に助けられた。  
ダサい!キョロキョロしてるからだよって明日実は言うけど、キョロキョロしてるつもりはない。
お母さんとお父さんが離婚してから、たまにお父さんの所に行ってた。
お父さんと昔の写真整理しながら、いろいろ思い出して笑った。
カラオケでお父さんは『涙そうそう』歌って泣いてた。
「お父さんの所行ったら、若い女がいた。あんなに若い女の人が・・・・」
とお母さんを驚かせようと大げさに言ってみたけど、お母さんはホッとしたみたいだった。
今、お母さんは、明日実のことで大変だけど、オレもいるんだから、忘れないで欲しい。
来年はオレも受験なんだから・・・。

    つづく       ナカムラ・エム

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