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ほら!ちゃんと巡り合う

 久しぶりに本屋に行きたくなりました。
少し遠いけど、品揃えが良くてジャンル別のレイアウトも、取り上げ方も大好きな本屋です。  遠いと言っても、今の私は徒歩圏内でいろんなことを完結するワールドをつくろうとしているので、たかが知れています。
徒歩、30分位です。
そこには、稀少なBLコーナーもあり、立ち寄って見ました。
そしたらなんと、BLコミックの片隅に、凪良ゆう先生の、久々のBLがありました。   新刊です。
かの『美しい彼』シリーズは10年前からはじまって『憎らしい彼』『悩ましい彼』『inter lude』で止まっていたのです。
不覚にも知らなかったのですが、2024年9月に刊行された『儘ならない彼』と出会ってしまいました。

 どうしたの?なにを興奮しているの?と思われる方も多いと思います。
このところ少し影を潜めていたのですが、私は無類のBL好きです。
私のBL好きはほぼ凪良先生の作品で、土台ができています。
文庫本で購入可能なものは、ほぼ持っています。
これはフリマにも出しません。
コミックではなくてBL小説から、BLの世界に入りました。
この『美しい彼』の平良一成と清居奏に関しては4巻の小説、2シーズンのドラマ、映画化を通してもはや、家族のようで、二人のその後を知りたい気持ちは尽きません。

 気持ち悪い攻が書きたかったと言う、凪良先生の嗜好が多分に入っています。   二人の出会いは高校生の時です。
攻めの平良は、育ちはいいのですが、吃音をもっているので、消極的でスクールカーストの最底辺でも、平和に過ごせたらいいと思っています。
一方受けの清居は、スクールカーストの最上位にいて、いつも人に囲まれているキングです。
そのきもうざの平良が、美しい清居に恋心を抱きます。
でも、とうてい自分に手が届くたぐいのものだとは思っていません。
平良は清居のことを神様の様に思っているので、それこそパラレルの異なるところを迷走する二人は中々相容れません。
『美しい彼』も最後のほうで、やっとふたりの気持ちが重なりますが、それでもその次元の違いは相変わらずです。

 清居は高校を卒業すると、芸能界に入り、役者として歩き出します。
平良は、自信がないのですが、清居の足枷にならないようにと、奮起して、野口という有名カメラマンのアシスタントという職を得ます。

 恋愛には依存がつきものですが、この二人は相手のことを思う気持ちが強いので、依存にはなりません。
愛してる自分を愛してるとかいう類の愛ではありません。
凪良先生のBLにはそういう人を思う深い愛が溢れていて、気持ちのいい涙が溢れ出てしまいます。

 前回は清居の20㎏増量という役作りをして挑む舞台のエピソードでした。   清居はキングでありながら乙女な所があって、そのファットな自分を平良に見せたくなくて、舞台が終わって、体重を戻すまで、平良と別居します。   SNSでチェックするのも禁止します。
平良はどんな清居でも、変わらず愛し、その身体を気遣っているのにです。
ちなみに、平良はファッションに興味がないだけで、ちゃんとしたものを着て、スタイリングしたら、背も高くて、イケてます。
清居の美しさとは、ちょっと違って、喋らなければ、影があってワイルドな感じです。     そんなイケてるバージョンの平良を清居は自慢したくて、パーティーとかに連れていくのですが、彼氏とは中々言えず、平良がもてれば面白くないのです。  
メンタルを病んで、太ったのではと、美しくなくなった清居はバッシングを受けるのですが、平良の援護もあって、無事舞台を成功させます。
その後の二人の不意打ちの再会が、素敵でした。   

 今回は、平良が師匠のススメで、個展を開くエピソードでした。
平良の無自覚な才能が開花していきます。
個展は師匠の野口の計らいもあって、大成功します。
でも、アシスタントは解雇され、立ち尽くす平良です。
稀少な運とか人脈とかを味方につけた成功を手に入れたのですが、芸術家として、世に出るということは、その後の心のありようだとか、欲との向き合い方とか、儘ならない壮大なものを、感じました。
師匠の野口が、芸術的な写真から、商業的なポートレートに移行した経緯もわかって、物語りに深さを添えています。
自分にできなかったことを、平良に託したんだなと、野口が平良を見込んでいたこともよくわかりました。
いろんな迷いが生じた平良でしたが、期待されながらもコンクールに落選します。       落選を機に、気持ちの落ち着いた平良は、新な意欲を持って山梨の廃墟に撮影旅行にいくのですが、豪雨にあって、帰る予定の日に連絡が途絶えてしまいます。
清居は詰まっていた仕事を前倒しにしてもらって、山梨に行きます。
師匠の野口も後を追いかけます。    平良をよく理解する二人によって救出されるのですが、その僅かな空間で、死に直面した時にストロボだけで撮った写真が、今後を動かす予感がしました。
今回は、特にBL要素は少ない気がしましたが、映像よりも小説のほうが、世界観が広がって、私は好きです。

 今、凪良先生は、BLはほとんど書いていらっしゃらないのですが、この美しい彼シリーズは3年に一度でもいいので、その先を書いて頂けたら幸せです。

 今回も寸暇を惜しんで読んで、1日で読み終えて、なんか余韻と、寂しさと半々です。   私の理屈抜きに好きなものですが、よかったら読んでみて下さい。


      おしまい!      ナカムラ・エム

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