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その既成概念を外してみて

 図書館はよくいきますか。
私は2週間に1回くらいのペースで図書館に行きます。
大体3冊程セレクトします。
まずは、今ハマってる作家さんの作品を1冊、今は金原ひとみさんです。
芥川賞を受賞された『蛇にピアス』はいつも貸出中です。
2冊目ははじめての作家さんの作品を選びます。
ほぼインスピレーションで選びます。
3冊目は古典的なもの、カミュとか、カフカとか、谷崎潤一郎とかです。
図書館は、無料で借りられるので、冒険ができます。
勉強などという崇高なものではなくて、楽しく読書したいので、興味がもてないと途中でやめるのもけっこうあります。

宮沢章夫さんは私は今まで存じ上げなかったので、今回なぜ選んだのか自分でもよくわからないのですが、チョイスしていました。
劇作家、小説家、放送作家、など多岐にわたって活躍された方で、2022年のコロナ渦に心不全で、65才で亡くなっていました。
ごくふつうの日常をこんなふうに切り取るんだと、読んでいて、声に出して笑ってしまうこともしばしばでした。
たとえばタイトルの『今日はそういう感じじゃない』ですが、筆者はその言いぐさに不満をもちながらも、使い道を発見します。
原稿の締切が迫っているのに、書けない時、書けない理由をあれこれ説明するより「今日は原稿を書く感じじゃない」なら一言ですむし、直球じゃないから、かども立たないそうです。  

またもの悲しさについてでは、荒川遊園のもの悲しさを語っています。
古びた遊園地です。   そこにあきらかに訳ありの父子を見つけてもの悲しくなる気持ちもわかるのですが、そこに一人で行って、観覧車に乗っている筆者も充分もの悲しいのです。   そして一度あなたも行ってみるといい。 あなた自身ももの悲しい存在になる。  って行ってみようかなと思いました。

深夜のファミレスで、筆者はファミレスでは迷わず、すぐオーダーを決めるのだそうですが、近くの若いカップルが、なかなか決めないでメニューを見ては笑いあっているのを見て、いらいらするのです。
「メニューのなにが面白い? ここはファミレスだ!さっさと決めろ」とオレが言ってやったほうがいいのかと、思っています。
そこへ男の店員が「ご注文はおきまりですか」というと「もう少し待って下さい」と男が笑いながら言うんです。  店員は端末のようなものをバタッと閉じて「24時間営業ですので、ごゆっくりお考えください」と立ち去ります。   なんだその粋なセリフはと筆者は感じ入ります。
ここはテキサスのバーかよと無性に腹立たしくなって、テーブルをひっくり返そうかと思ったが作り付けのテーブルは動かなかった。
これバカバカしいんですけど、想像できるだけに可笑しくて笑いがとまりませんでした。

それから通りがかりの人の会話の断片を聞いて、その前後と、背景を想像しまくるのも、劇作家ならではでしょうか、楽しくて発想の自由を見せつけられた気がしました。

日々こんな妄想をしていたら、楽しくてしょうがないですね。
そして極めつけは「意味もなく頼まれてもいないレポートを書く」のくだりです。   でもこれは私のnoteのことみたいで、ちょっと笑ってていいのかなとも思いました。
ヘンリーダガーというアウトサイダーアートを代表する画家がいて、彼はまったく発表するつもりのない誰かに見せるつもりすらない大量の作品を残しました。  彼はその生涯の大半を病院の掃除人として従事し、身寄りもなく孤独のまま亡くなって、その死後一躍注目されたのだそうです。
その彼の、情熱の正体を知る為に頼まれてもいないレポートを書いてみるというその考え方大好きです。
ことごとく変幻自在な発想に、心の目が開いた気がしました。
この本を引き寄せられてよかったです。
作品というのはその死後も息づいて、人の心を動かす力を宿しているのですね。

そして最後に、筆者の人生観が記されています。
先のことを考えない、やりたいことをやる。
こういう結果が欲しいんじゃなくて、やりたいことをやった結果がこうなったということ・・・。
仕事を全部やめてマダガスカルで、生活したことがあって、その時に抱えた状況下でどう生きるか考えるそうです。
バカが「その根拠のない自身はなんですか」と聞くが、その時点で考え方がまったく違う。  自信云々じゃなくて、こうでなければいけないと言う生き方もない。  
宮沢章夫氏が師と仰ぐ太田省吾氏は沈黙劇というジャンルをつくられた劇作家であり演出家です。   やはりもう亡くなられていますが、太田氏が
おっしゃっていたのが「人は概念化しようとする。 理解したいから・・。
創造には概念化せずに見ることが必要で、つねに新しさを求め続ける創造とは、執着しない」ということでした。
確かに一度構築された概念を外して見るって意外に難しいことだと思います。  でも今回こういう機会をせっかくいただいたので、既成概念をはずしてフラットなところから、物事をとらえて見ようと思います。
また世界が違って見えるかも知れないですね。   

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