何もかも憂鬱な夜に / 中村文則
「遮光」を読んだ翌日、
僕は本屋に走り、これと「掏摸」を買った。
しばらくはこの人の世界に居たかった。
やはり僕は中段あたりから結末を意識し、
まるで中村さんの背後から眺めるように読み進めた。
真下が死に、ノートが届く。
この一文に僕はとても共鳴し、
僕もまたそうである・・・、という同調のようなものを感じていた。
いい結末だった。
文庫版には筆者のあとがきがあり、
それを読みながら、僕は余韻に浸った。
バッハの『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』が、
陰鬱だったこの本を「希望」が見えるような・・・
そんな結末へと導いてくれた。
今、僕は少し晴れやかである。
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