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何もかも憂鬱な夜に / 中村文則

『本と音楽と珈琲と。』
ウェディングプランナーの中道亮です。
僕のスキの書き留めです。
スキなものに囲まれる豊かで贅沢な時間を。

「遮光」を読んだ翌日、
僕は本屋に走り、これと「掏摸」を買った。

しばらくはこの人の世界に居たかった。

やはり僕は中段あたりから結末を意識し、
まるで中村さんの背後から眺めるように読み進めた。

真下が死に、ノートが届く。

こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。善良で明るく、朗らかに生きている人が、いるんだろうか。たとえばこんなノートを読んで、なんだ汚い、暗い、気持ち悪い、とだけ、そういう風にだけ、思う人がいるのだろうか。僕は、そういう人になりたい。本当に、本当に、そういう人になりたい。これを読んで、馬鹿正直だとか、気持ち悪いとか思える人に・・・・僕は幸福になりたい。

この一文に僕はとても共鳴し、
僕もまたそうである・・・、という同調のようなものを感じていた。

いい結末だった。

文庫版には筆者のあとがきがあり、
それを読みながら、僕は余韻に浸った。

バッハの『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』が、
陰鬱だったこの本を「希望」が見えるような・・・
そんな結末へと導いてくれた。

今、僕は少し晴れやかである。

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