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駆出しの気候学者、英国で大学教員初任となる:その2(採用試験・初任編)【読み出し無料】~「伝える」をいうことを僕に教えてくれたイギリスと21人の生徒たち」(現代ビジネス )~

(『仲見満月の研究室』からの出張版)


3.前回までのお話

上記リンク記事の前回は、現在、立命館大学の中川毅教授が、ご著書『人類と気候の10万年史』』の講談社科学賞の受賞を記念して、2013年まで約10年半赴任していたイギリス北部のニューカッスル大学で過ごしたうち、新米時代を中心に体験談の寄稿記事:

「伝える」をいうことを僕に教えてくれたイギリスと21人の生徒たち(中川 穀) (現代ビジネス | 講談社(1/3)、2017/10/07)

をもとに、研究者の生き方を考える目的で、書きました。

シリーズの始まりの前回は、日本で学位取得後、有期雇用の職を転々としていた中川さんに英国での大学ポストに挑戦する話が舞い込むものの、日本でアカポス求人に20回も落ちたことに加え、未知の欧州に行って研究指導と教育を行う不安がった英国渡航前後の話をしました。表現を読んでいると、魯迅の「故郷」と彷彿とさせるものが私には感じられました。

今回は、いよいよ、採用試験、そして初めて持った授業に関するお話です。まずは、受からないと働けない、ニューカッスル大学での採用試験のお話です。果たして、一発で合格できるのか。そして、初任の授業はどのようなものだったのか。日英の大学教員の養成システムの違いにもコメントしつつ、掲載元の『現代ビジネス』のオンライン記事を読んでいきたいと思います。



4.駆出しの気候学者、ニューカッスル大学で教員の採用試験を受ける

日本の大学教員の採用試験について、書類選考後に課される選考プロセスは、あまり一般には知られていません。今回は、中川さんが英国のニューカッスル大学で受験した、教員の採用試験をもとに、詳しくその内容を見ていきましょう。

 4-1.様々な不安

■僕と面接官との間の「深い溝」
イギリスで直面した最初の大きな壁は、英語で講義をすることだった。当然のことだが、大学の教員である以上は学生を相手に講義をしなくてはならない。だが私はそれまで、イギリスはおろか英語圏ですら教育を受けたことがなく、授業のスタイルも採点の仕方も、学生との接し方も、イギリス流がどのようなものかまったく理解していなかった。 

そもそも私は、英語に対して明確な苦手意識を持っていた。国際学会などで英語の発表をしたことはあったが、それらはせいぜい15分程度の短いトークであり、2時間に及ぶこともある大学の講義は、私にとってまったく別次元の挑戦だった。
(「伝える」をいうことを僕に教えてくれたイギリスと21人の生徒たち(中川 穀) | 現代ビジネス | 講談社(2/3))

まず、海外から採用試験を受けに来た挑戦者にとって、第一関門は言語を操って授業ができるか、否か。ということが言われます。加えて、大学のカルチャーは国や地域、土地柄と密接な関係にあるようで、中川さんと同じような立場だった東洋建築学研究者の元専業非常勤講師の先生は、台湾の大学で採用試験を受けた時、「模擬授業に加えて、学術講演会のリハーサルみたいな面接試験があって、非常に緊張した」と仰ってました。その後、その先生は台湾のその大学で助教の職をゲットなさいましたが。


 4-2.ニューカッスル大学の大学教員採用試験の最終選考それでは、ニューカッスル大学の採用試験は、どのようなものだったのでしょうか。

”最初の忘れがたい洗礼は、着任の4ヵ月ほど前におこなわれた採用面接にまでさかのぼる。 

6月下旬のよく晴れたある日、私は最終選考に残った3人の候補者の一人として、初夏のニューカッスルに降り立った。選考は午前の部と午後の部とに分けておこなわれた。午前の部は、3人の候補者による研究発表会だった。持ち時間は1人20分、発表は地理学教室の教員と学生であれば誰でも聞くことができ、50人程度を収容できる教室は、じっさいほぼ満席になっていた。 

続いて午後の部は、選考委員だけによる1人30分の面接だった。選考委員は5人、その内訳は、近い分野の研究者が2人、遠い分野の研究者が1人、事務の代表が1人、教育部門の責任者が1人だった。
「伝える」をいうことを僕に教えてくれたイギリスと21人の生徒たち(中川 穀) | 現代ビジネス | 講談社(2/3))”

気候学は、地理学とも非常に近い分野なようで、中川さんは地理学教室で、

 ・6月下旬のある日、午前の部と午後の部に分けて実施された最終選考を受験
 ・午前の部は、3人の候補者による研究発表会だった。持ち時間は1人20分、発表は地理学教室の教員と学生であれば誰でも聞くことができた
 ・地理学教室の会場は、50人程度を収容できる教室は満席になった
 ・午後の部は、選考委員だけによる1人30分の面接だった

というプロセスや状況のもと、進みました。先の台湾の大学で採用試験を受けた先生の話の学術講演会の部分が、中川さんの受けた最終選考では午前の部の研究発表会だったのでしょう。日本の昨今の大学では、模擬授業がこれに当たる模様です。

さて、午後の部の面接で、中川さんは強く印象に残る質問を面接官から受けました。

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