『Party Animals』は絶対ヒットすると思わされたプレイ感想記
2020年にティザー映像を見てすぐにウィッシュリストに登録していた『Party Animals』のプレイテストが開催された。可愛らしい動物が二足歩行で闊歩し、殴り、蹴り、頭突きでシバき合いをする動画を見て直感でヒットするだろうなと思ったからだ。自分のそういった直感は高確率で外れるのだが、インディーゲームにありがちな「発表直後の反響は大きかったのに開発が延びるに連れて忘れ去られていく」現象がこのタイトルには無かったので、今度こそこの直感は当たるはずだ。ちなみに過去にこの直感が当たったのは『Cuphead』(2017年発売) の時である。それからは一度も当たっていない。
開発は北京のゲームスタジオ「Recreate Games」という、まぁちょっと聞いたことのないメーカー。本作は今(悪い意味で)話題のUnityで作っているとのことで、もう完全に取り返しの付かないタイミングでのリリースということになる。大丈夫だろうか。たぶん大丈夫だと思う。大丈夫じゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。
で、そのプレイテストが9月の頭から始まり、申し込んだ人間の全員当選ではなかったことで公式のDiscordサーバーがちょっと荒れるという自体もありつつ、なぜか9月15日に当選通知が届いたので急遽遊んでみることにした。なんでこのタイミング? と思ったが、おそらくはサーバー負荷を少しずつ高めたいと思ったか、もしくは初期のプレイテストメンバーが飽きてアクティブが下がったかのどちらかだろう。ちなみに発売は9月20日なので、もう発売は始まっている。プレイ時間は2時間程度。ヘッダー画像を描いているあすまくんにも急遽の発注となった(すまんね)。
早速クイックマッチを選択するとプレイテストであるにも関わらずすぐにマッチングした。おそらく本国である中国人ユーザーが多いからだろう。asiaサーバーは夜でも賑やかだ。8人が集まると以下のようなマップ選択画面が出て投票によって遊ぶマップが選択される。
対戦モードは「LAST STAND」「TEAM SCORE」「ARCADE」の3種類なのだが、どうやらARCADEはまだリリースされていない(※プレイテスト時)。マップはそれぞれの対戦モード専用のマップとなっているため、マップ選択が終わったタイミングで対戦モードが確定することとなる。対戦モードの種類を決めてからマッチングするわけではない、というちょっと変わった仕様。「LAST STAND」はその名の通りラストスタンディングだが、2人1組・4チームのデュオ戦固定である。8人ソロだと勝利体験がなかなか得られずモチベが下がりがちなのでこの気配りは現代風である。「TEAM SCORE」は4人1組の紅白戦で、基本的には何かしらの点数を競う。いずれのマップも7〜15分程度で決着する。
投票なのでどうやら人気のあるマップが既に確立しつつあるようで、かつ、どうやら今後のアップデートで大量のマップが追加される匂わせもあったので、もしかしたら将来的には『Fall Guys』のようにマップの入れ替えが発生するかもしれない。その中で選ばれることの多かったマップを中心に感想を書いていく。
Blackhole Lab (LAST STAND)
体感値で最も人気があり、自分の中でも一番面白かったのがこれ。他プレイヤーを場外へ突き落として生き残るシンプルなラストスタンディング。マップ中央が円形に空いているのだが、このステージのギミックとしてマップ中央上部にブラックホールが発生し、これに引き込まれるとブラックホールが消えた瞬間、真下へ落ちるので失格になってしまう。それを防ぐためには重たい物や1本だけ設置されているチェーンに捕まらなければいけない。そしてブラックホールは登場の回数を重ねる度に吸引力が高まり、最終的にはチェーンに捕まる以外は全て死を意味するため、必然的に最後はこのチェーンの取り合いになる。BGMも混沌とした戦いにマッチした疾走感あるもので没入感を高めている。
そして「LAST STAND」では失格になった後は外部から物を投げ入れての介入ができる、懐かしの「みそボン」システムが搭載されている。残った仲間に加勢したり、ポイントで優勢になっているチームの妨害など、失格になった後もやることがあり飽きさせない。
Beast Hockey (TEAM SCORE)
おそらくTEAM SCOREで最も人気があるのがこれ。アイスホッケーの紅白戦なのだが、パックが巨大な氷でできており、これをダッシュパンチなどで殴って飛ばし、ゴールを決めて点数を競う。パックが勢い良く滑るのでこれを素手で止める術はなく、プレイヤーと激突するともれなく気絶する。要は直接プレイヤーを殴ってもいいのだが、パックをガンガン飛ばして相手チームのプレイヤーを気絶させ、そこでできた隙にゴールを狙うというのが理想的な戦術になる。が、そんな綺麗なプレイになるはずもなく、大概は大混戦を強いられる。
パックに対する唯一の対抗策として、両陣営のゴール前に落ちているシールドを持つとパックをブロックすることができる。攻撃ボタンでシールドを振れるが、これが飛んできたパックにジャストパリィするとパックを大きく弾くこともできる。なんか見たことあるモーションでシールド振ってるなと思ったが、偶然発生したパリィで納得した。
Lollipop Factory (TEAM SCORE)
マップ中央に配置されたグミを自陣へ運び、レバーを引いて出荷することで得点が入るゲーム。このゲームでも当然、武器を振り回して相手を妨害することができる。グミの中にはクマの形をした高得点が得られる大型グミがあり、この大型グミの取り合いが一つの肝となる。
自分がプレイしたときはこの大型グミの引っ張り合いになった時に、味方プレイヤーである紫色の猫が武器を持って助太刀に来てくれた。相手チームのプレイヤーが気絶した隙に自陣へ運び込み、レバーを引いて出荷させることに成功したが、その際、誤ってその味方も一緒に落としてしまった。その大型グミが落ちた瞬間にゲームセットで勝つことができたのでいいのだが、負けている時にこれをやったら恩を仇で返すそこそこのトロールプレイではある。が、これも込みのパーティーゲームなので笑って許してもらえるだろう。
Buzz Ball (TEAM SCORE)
一言で言うとラグビーのようなゲームで、ボールを持ってゴールへ放り入れると得点が得られるゲーム。味方がボールを持ったら他のプレイヤーはそれを助けるために、相手プレイヤーをダッシュパンチやドロップキックでブロックしにいかないといけない。ラグビーっていうかむしろアメフト。
そしてこのボールがどういう理屈なのか分からないが、複数名が一定時間同時にボールに触れると爆発を起こす仕組みになっている。相手がゴールしそうになっていると思ったらボールを掴みにいって爆発を起こすことで阻止するといったことも可能だ。
Wind Tunnel (LAST STAND)
一定時間毎に強烈な風が発生し、これに巻き込まれると吹き飛ばされて即失格となるラストスタンディング。ギミックとしてレバーが3本あり、これを引くと風除けになる壁が出現するため、風が吹いた瞬間にレバーの争奪戦が始まる。が、レバーを引いている間は必然的に無防備になるため、殴られて風除けの外側に飛ばされることもあるので駆け引きが求められる。
この他にも様々なマップがあるが、ここまで。
総評
控えめに言って神ゲー。『Fall Guys』がリリースされた時と同等の感動が得られた。
クロスプラットフォーム対応な上に、 Xbox Game Pass でも遊べるためパブリッシャーからも期待の高さがうかがえる。前述した通りラストスタンディングをデュオにしたところは慧眼で、これが著しくゲーム体験を向上させている。対戦モードもマッチング後に投票で決まるため、あえて自由に遊ばせないことでアクティブが集中するようにしているなど、これまでにリリースされて人気が落ちていったタイトルの失敗したところを倣わないように工夫されている。その代わりアバターはお察しの通り、ポイント交換、課金要素、ガチャなどで増えていくあたりは従来のタイトルが来た道をなぞっている。おそらくはシーズンパスなども出るんだろう。コラボとかもすぐやりそう。
操作感もこなれていて、難し過ぎない。基本的には常にダッシュして、ダッシュパンチかドロップキックを多様するのがメタになりそう。頭突きもあるがダッシュしながらは出せないので混戦や近接戦で多用する。普段からゲームをしている人であれば操作はすぐに慣れてすんなり遊べるようになっていると思う。
一番最初にティザー映像を見たときは『Gang Beasts』の上位互換を意識して作ったのかなと思ったが、良い意味で別物でした。『Gang Beasts』は若干、操作が難しいのと(そのため上級者だけが使えるテクニックなどが存在した)、ゲームバランスにやや難があり、初心者同士だとなかなか決着しないという短所があった。独特の世界観と珍プレーの発生でカバーしてあまりある魅力が『Gang Beasts』にはあったが、やはりプレイしていてフラストレーションが溜まる場面もあった。
それらの欠点を解消するようなゲームだったらまあまあヒットするんじゃないかなーと思っていたら、多彩なゲーム性と動物という強い魅力を配置して完成度の高いゲームが完成していたので驚きました。また、どのマップを遊んでいても一度は自分が活躍する場面に恵まれるようになっているのは、そういう設計が上手くいっているからだと思います。チーム戦は「これは貢献できた」と実感できる場面があり、ラストスタンディングは失格後のアイテム投入でミラクルが時偶、起きたりする。
なので、これはそれこそ『Fall Guys』を遊んでいたユーザーを根こそぎ持っていく可能性があり、買って損のないタイトルです。発売が始まったけど、今度こそ僕の直感は当たるはず。たぶん当たると思う。当たるんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。
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illustration:あすま(@asu5m843B)